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進化し人類の名はヴァンパイア  作者: 夏月コウ
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第九話 日常の朝

 暦・新暦二千三十七年

 月日・四月二十九日

 曜日・水曜日

 現在地・自宅の庭

 現在時刻・時刻五時三十分


 冬が過ぎ去ったが肌を撫でる風は冷たく、刺すような所もあった。


 日が昇り始め次第に周囲が日に照らされいく中、俺は【九頭竜院流剣術】の鍛錬の為、自宅の庭にジャージ姿で存在していた。



 【九頭竜院流剣術】とは、九頭竜院源次郎が確立させた()()使()()()()()の一つだ。基本動作は剣術のそれであるが、一つ一つに技に魔力を用いた【型】と呼ばれる剣術がある。


 そして、秀一はこの【九頭竜院流剣術】を()()()()している。その為、彼が日課として行っている鍛錬は、【型】を洗練されたものにする為に精進をしているのだ。



 軽いストレッチを済ませると、竹刀を使用して素振りを開始する。俺は素振りの種類を変更しながら十分程度、基礎練習に励むのだった。


 ウォーミングアップの効果か身体が温まる。その熱は普段より強く感じられたので、今日は調子が良いみたいだ。


 俺は、普段は余りやらない【型】の試し打ちをする事にした。そこで、【型】の練習に必要な物を準備する為、庭に設置されている物置に向かった。


 そして、物置から自分の腰くらいまである角材を取り出した。その角材の先端が鋭利になっていた。


 すると、その角材を庭端付近の地面に突き刺すのだった。因みにその部分の庭の塀だけ()()で覆われていた。


 その鉄板には()()()()()()()()()()()()()()()()()


 角材を定位置に突き刺すと二メートル位後方に下がり、中段の構えで静止する。


 俺は両目を静かに閉じた。すると、靡く心地よい風が自分の火照った体を撫でる。


 まだ、朝も早い為か外で活動している人間の数も少ない。その為、風が草木を揺らす音を両耳が捉える。


 俺は体の中心に体の火照りとは()()()。魔力を身中から呼び出す。


 そして、自分が持つ魔力の総量のほんの一部を出力させると、魔力を竹刀の刀身に纏わり付かせた。


 魔力を持たない人間がこの光景を見た時、ただじっと構えている様にしか見えないだろう。しかし、ある程度魔力を保有した人物がその光景を見て取るとそこには薄い膜のような物が形成されているのだ。


 そして、魔力の制御は難しい。今回の場合は対象以外は破壊してはならないからだ。


 「〈九頭竜院流剣術一ノ型・烈風〉」


 それは、次の風がやんだ時だった。


 俺は、()()()()()()()()()。そして、風を斬った様な音がうまれる。


 横薙ぎされた竹刀から鎌鼬の様な鋭い風が生み出される。そして、それは真っ直ぐ直進し二メートル先にある角材を切断した。


 角材はスッパリと切り落とされ、後方にある鉄板には新たな傷を生み出した。自分は状況を確認すると蹲踞してから竹刀を納めると、一礼した。


 そこまでの動作を終えた後、後方から乾いた音を聞いたのだった。


 俺は、その音源の方に顔をやった。


 すると、そこには白衣を着た女性がいた。


 貧血気味なのか青白い肌をしているもののその容姿は確かなものがあった。健康的な血色の良い顔をしていれば、男が寄ってきても可笑しくない程の美女である。


 彼女は、如月(きさらぎ) 美香佐(みかさ)という。


 【ヴァンパイアウイルス】研究の第一人者である。現在はディアスパーティーの軍部とも繋がりがあるそうだ。


 そして、俺と佳純にとっては義母である。


 美香佐の紫水晶色の瞳が自分捉えながら朝の挨拶するのだった。


 「やあ、おはよう。今朝も鍛錬ご苦労だね」


 すると、彼女は自分の方にタオルを渡しに近づき差し出してくる。それを受け取ると汗を拭きながら自分もまた、挨拶を返すのだった。


 「おはようございます。美香佐さん。今朝は早いんだな」


 「まあな。昨日は()()()()()()()()()


 俺はそんな美香佐の言葉に引っかかるものがあった。そこで、それを追求してみるのだった。


 「寝られたって。何時間寝れたので?」


 「うん? ()()()()()?」


 「『三時間だが?』 じゃあないよ……。最寝て。倒れるよ?」


 美香佐がウイルス研究が多忙で無理をしている事を知っている。だからこそ、毎日早く寝る様に促しているのだが、どうも寝たフリをして自分達が就寝した後に徹夜で研究をしているみたいだ。


 何回いっても直らないので最近は()()()()()()()()()()()()()()もある。


 「フフフ。心配してくれるのかい?」


 美香佐はそういうと、両腕を豊満な豊乳の下で組むのだった。まあ、他の人物がその豊乳を目にすれば内心揺らぐのだろうが、自分は義母に欲情などしない。


 俺を年頃のガキと見て煽っているのだろうが、敢えて冷静に言葉を返すのだった。


 「そりゃあ、まあ。義母(母親)何ですから」


 「そ、そうか。……ありがとう」


 「また、強制で寝かしつけますよ。それが、嫌なら睡眠を取ってくれ」


 美香佐は若干、表情を引き攣らせた。それは親が子供を寝かしつけるのならまだしも、親を子供が寝かしつけるのでは彼女のメンツも丸潰れだろう。まあ、何回かはあるのだが。


 「ぜ、善処するよ」


 「善処じゃなくて、基本」


 「……はい」


 美香佐が落胆していると俺は彼女に次の様に聞いてみるだった。それは、昨日学校終了後にガイドショートでメンテナンスを終えた武器類を取りに行った際に一緒に受け取った()()()に付いてだった。


 「それで、美香佐さん。昨日持ち帰った武器に関して何か分かった事ある?」


 「ああ、それについてだが。佳純ちゃんも揃ったら伝えるよ。それまでは、朝食の準備でもしているよ」


 「分かった」


 会話終了後鍛錬でかいた汗を洗い流す為、風呂場に向かうのだった。


 そんな息子(秀一)を見送る美香佐はふと昨夜彼等から拝見した手紙の内容について思い抱くのだった。


 「しかし、()()()()()()()()()()()()()()……」


 ふと吹く風に灰色の髪を靡かせながら、美香佐は呟くのだった。



 * * *



 鍛錬でかいた汗を風呂場で洗い流す。そして、あらかじめ準備してあった替え着に着替えると、一度自室に戻る事にした。今日も学校がある為、佳純を起こす前に制服に着替える為だ。


 脱衣所を出て階段を上り自室に向かった。


 自室に到着し部屋に進入すると、ハンガーラックに掛けてあった制服に着替える。そして、通学鞄を担ぐと敢えて着なかった深紅のブレザーをハンガーから取ると腕に掛けた。


 その後、準備を終了させた俺は自室を後にした。


 佳純の部屋の前まで移動すると、ドアをノックした。また、俺は起床しているか問いかけるのだった。


 「お~い。佳純? もう起きてるか?」


 「え? シュウ? ちょ、ちょっと待って。……う、うわ!」


 すると、佳純から返答があったものの部屋の中からドスンといった音が聞こえてきた。


 俺は吃驚し、咄嗟にドアノブを掴みその施錠を解くと、佳純の部屋に進入してしまった。


 「おい。佳純。だいじょうぶか……?」


 「へえ? シュウ?」


 二人の視線が合致した。


 そこには、制服に着替えている途中の佳純がいた。


 今の佳純の姿は、シャツのボタンが全開で膨らんだ胸をピンク色のブラジャーが露出している。


 そして、紺色のプリーツスカートから刺繍が施されているピンクの下着が拝見出来た。


 まあ。なんだ。俗に言うラッキースケベという奴だ。


 黒ストッキングを途中まで履いている時に俺が部屋に進入して来た為、焦って転んでしまったのだろう。


 そんな感じで、お互いが状況を把握するのに数秒要したうえで佳純が表情を真っ赤にしながら言葉にするのだった。


 「出、出、出て行け―――!」


 そう叫びながら周辺に置いてあった物を自分目掛けて投げつけてくる。


 「佳純。ま、待て。俺が、悪かった。だから、物を投げるな」


 俺は謝罪と佳純から投擲してくる物体をはたき落しながら言葉にするのだが、彼女の()()()()()()()が無意識のうち発揮されたのか、運悪くその内の一つが俺の頭部に命中するのだった。


 「グヘっ!」


 俺は素っ頓狂な声音を上げた。そして、ヨロヨロと後退試用とした際に足を縺れさせてしまい後方の壁に頭部を強打するのだった。


 「え! シュウ! 大丈夫。ねえ!」


 佳純は素早く身嗜みを整えると、俺に接近してきた事が分かった。


 意識が遠のく中俺は一言口にするのだった。


 「今度からは焦っても物投げるなよ……」


 そこで、意識を失うのだった。



 * * *



 一階のキッチンでは美香佐が朝食を作っていた。鼻歌交じりに料理をしていると天井から物が倒れる様な物音が耳に入ってくる。


 美香佐はその物音に若干体をビクつかせるが、直ぐに原因を察した。恐らく秀一が何か佳純にしたのだろう。


 その出来事にフッと、口元を緩ませると独り言をいった。


 「おお。やってるやってる」


 しかし、そんな和やかな出来事に対して、彼女は()()()()()()()()()()を思考してしまい表情を落ち込ませるのだった。


 「だが、そんな遣り取りをいつまで見ていられるかな……」


 ()()()()()()()()()()()()してきてから()()()()


 今では、自分にとって息子と娘の様な存在だ。彼等ならば生き抜けると思う。だが、そこに自分の存在はないだろう。


 『帝国』にとって。いや。『皇族』達が私を許さないからだ。そして、その存在達が今目と鼻の先まで進出してきている。


 それを鑑みると私に残された時間はそう長くないだろう。だからこそ―――。


 「だからこそ、急いで()()を完成させなければな……。それまで、持ってくれよ。軍」


 美香佐は祈るように呟くのだった。



 * * *



 どのくらい意識を失っていたのだろいうか。次に目を覚ました時、俺は佳純のベッドの上に寝かされていた。


 俺は少し首を動かすと、心配そうな表情をした佳純がいた。自分が覚醒した事に気付いた彼女は強張った顔を緩ませるのだった。


 「気が付いた? シュウ」


 「あ、ああ」


 「ごめんね。咄嗟とわいえ焦って物なんか投げちゃって」


 しょんぼりする彼女に俺は頭を撫でてやる事で対応した。すると、えへへと、いった感じの面持ちを取った。


 彼女の艶やかな黒髪を数回撫でてやった後に、俺は下で美香佐が待っている事を伝えるのだった。


 「佳純。下で美香佐が朝食を作って待ってる。あと、昨日持ち帰った武器に付いても何かしらの進展があったみたいだ」


 「そうなの?_で、どんな物なの?」


 「それは、まだ聞いてないよ。だから、早く準備してリビングに行こう」


 それから、俺達は再度準備を整えると美香佐が待つリビングに向かうのだった。

2023/5/28 改変

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