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進化し人類の名はヴァンパイア  作者: 夏月コウ
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プロローグ 世界大厄災と人類社会の崩壊

 これは、人類史の一幕。


 人類―――かつて地球上を支配してきた種族。


 その支配は数千年も続いた。


しかし、現在の人類は危機的状況に瀕する。


人類はこの出来事を【世界大厄災】と呼称した。



 時を遡ること、十年前―――新暦二千二十七年。


 人類は、前例のない未知のウイルス。



 【ヴァンパイアウイルス】の猛威により滅亡に瀕していた。



 人間という種族が長年打ち勝ってきた数多の感染症や伝染病、疫病を遙かに凌駕した存在。【ヴァンパイアウイルス】は人間の持ちうる英知では如何にもならない程に“猛毒”だった。


 この【ヴァンパイアウイルス】とは、俗に言う所のゾンビウイルスだ。生者がそれを接種すれば個体差にもよるが、最短で数分から十分、最長で三十分程度で人間を人ならざる者へと変貌させる。


 詰まる所、原則これに感染した者は屍か生命活動を文字通り終える“死”を体験する事になる。


 世界でこの未知のウイルスが最初に確認されたのは東アジアの一国・大和皇国。関西地方にある大坂府の繁華街での事だ。


 当初は暴動事件と報道されていたのだが、次第に事は大事となる。それが、大和皇国全土に知れ渡る事になる頃には、大坂府全土は死人―――【アンデット】の巣窟へと街を色付けていた。大坂が死人の街に変えるまで一日とかからなかった。


 これに対し政府は緊急事態宣言を発令、軍を同地域に派遣しこれを収束させようと試みた。が、当初の予想は裏切られ、作戦は失敗する。つまり、封じ込め作戦は失敗したのだ。


 軍は封じ込めに失敗し大和列島をアンデットが自由に闊歩するまでに掛かった時間はたった一カ月余りだった。この現象で大和民族は滅亡寸前となり大和皇国の政治経済は破綻した。


 生き残った旧大和民族の生存者は琉球諸島やアイヌ地域の一部へと難を逃れる。この時の、大和国民の推定死者数は七千万を超えた。


 この殺人ウイルスには空気感染などでは感染しないが、一度経口感染・血液感染などで感染すると高確率で死人に変貌する。


 一連の事件で、旧国際連合は極東アジア諸国に多国籍軍を配備する事を決定。極東アジア諸国は大和からの難民を受け入れる。


 しかし、難民の中に感染者が現れるよう用になると、殺人ウイルスを恐れた極東アジア諸国は難民の受け入れを中止した。これにより殺人ウイルスの拡散は収束するかと思われた。


 しかし、これは事の序曲でしかなかった………。



 大和列島殺人ウイルス蔓延事件より半年。世界各地で感染者の出現が確認され始める。最初の一年半は殺人ウイルスの蔓延を各国家は自国の軍隊で防ぐ事が出来ていた。しかし、徐々に軍や政府内部にまで感染者の魔の手が伸び始めたると、それは濁流の様に感染は一気に拡散していった。


 この頃には一部の見識のある政治家や貴族、大手商社、軍閥などの保護のもとで、世界各地に初期型のパーティーが現れ始めた。


 それから、三年後。人類社会は崩壊した。


 各国家は瓦解し世界を統治していた旧国際連合の世界秩序は崩壊した。


 唯一の救いとしては、三年で人類が生存する事が許されたパーティーやコロニーなどの整備が整えられた事だ。


だが、この時点で世界人口の推定死者数は五十億人を超えていた。


 そして生き残った人類は新たな体制を作り出した。それが現在の【国際残党国家連合】である。



 【世界大厄災】から十年。


 世界人口は八億人となっていた。混沌と混迷を極めた世界で保護された人類は鳥籠の中、明日も知れぬ生活を強いられていた。


 だが、そんな世界でも変革はあった。


 人類から生まれた希望あるいは、異端者。吸血鬼と名の付く生命力の権化。【ヴァンパイア】と呼ばれる人類の亜種。


 彼らは、超回復能力や身体能力の向上、“魔力”と呼ばれる新たな力。まさに、時代の過渡期に生まれ出る事が許された生物のようだ。 



 しかし、すべての人類が成れるモノではない。



 何らかの原因で【ヴァンパイアウイルス】を摂取しアンデットに変異せず、それまでの人格を保った者が【ヴァンパイア】に昇華出来るのだ。


 【ヴァンパイア転生】と呼ばれる現状はパンデミックの初期から確認されていた。


 そんな【ヴァンパイア】は生き残った人類から畏怖の存在とみなされた。出現当初は治療施設と称した強制収容所に収容され、そこで様々な実験の試験体となり、高い治癒能力の有する【ヴァンパイア】はモルモットの様に使用された。


 それでも異端の存在とされた彼らにも救いはあった。


 新暦二千三十二年。【世界大厄災】から五年後の事だった。ヨーロッパ州、旧ドルギニア共和国の旧貴族であったディアス・ヒュート・プリンツオイゲン氏と一部の政治家などによる【ヴァンパイア人権保護法】と呼ばれる新人類人権宣言を国際残党国家連合に宣言させる事に成功させたのだ。


 これにより、【ヴァンパイア】は名実と共に()()()()()()()()()()()()事になった。


 今現在、人類は巨大な城壁に囲まれたごく一部の人工的生存可能エリア内でのみ生きる事を許されている状態だ。まさにそれは籠の中の鳥の様に。




 しかし、忘れてはならない。人類は常に【ヴァンパイアウイルス】の脅威がある事を。


 

 そして―――――――今のままでは人類は緩やかな衰退を迎える事を。


 

 滅ぶも、生き残るのも人類次第である事を………。



                                            

 Next Stage


2023/05/28 改変

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