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宇宙へ帰る、お手伝い

作者: 常陸橫

 深夜0時頃、二階の部屋からベランダに出る。この時間帯はしし座流星群を見る絶好のタイミングなんだそうだ。あまり星には興味はないが、宿題の息抜きにと思い、東の空を眺めた。

 前日からあまり良いとは言えない天気だったが、空に星が見えるほど回復していた。ぼんやりと外を眺めていると、一筋の光が空を横切った。それに続き一つ、また一つと流星が横切っていく。初めて見る景色に思わずため息が出る。

 ふと不自然な動きをしている流れ星が視界に入る。不審に思い、その星を見ていると、少しずつ大きくなっているように見える。まさか、近付いている?

 そう思った瞬間、その光は家の近所の空き地に墜ちた。その時、何故か湧き上がってきたその空き地に行かなければならないという使命感に駆り立てられ、ベランダから外へ飛び降り、その空き地へと走った。


 空き地には金属のようなものでできた、不思議な形の物体が突き刺さっていた。かの有名な空飛ぶ円盤の仲間なのだろうか。

 そんなことを考えていた時、頭の中に謎の記憶があることに気付く。初めは、見渡す限りの闇と、その中にポツリポツリと浮かぶ光を見ている記憶。次に、その空間の中を自分と並走する岩々を眺める記憶。最後は、その岩々とともに青い球体に接近し、炎に包まれていく記憶。

 この記憶を確認し終えた時、空き地の物体から何かがこちらに視線を送っていることに気付いた。一瞬動揺するが、同時に直感した。墜落したこの宇宙船を掘り出すためにここに呼ばれたんだと。

 一旦、家に戻り、納屋からシャベルを持ってきて、宇宙船の周りを掘り始める。一体、何時間かかるのだろうと気がかりだったが、気が付くと、元いた地面が肩の位置にくるまで掘っていた。催眠術にでもかかったかのようにどんどん掘り進めていった。


 二時間ほどたっただろうか。宇宙船の周りを4メートル近く掘った。すると、宇宙船は光り出し、宙に浮き始めた。掘った穴の中から見上げていると、頭に、テレパシーだろうか、直接言葉が語られた。


――アリガトウ




 気が付くと、机に突っ伏していた。体を起こすと、机には真っ白な宿題が目に入る。外は明るくなってきていた。部屋の時計は、午前6時を示す。しまった。


 慌てて取り掛かるも間に合わず、朝から担任のお目玉を食う羽目になった。ぼんやり授業を受けている時、ふと深夜の出来事を思い出した。あれはやはり夢だったのか。クラスの誰もその話をしない。それによくよく考えてみれば、二階から飛び降りて平然としていたり、二時間で4メートルも掘ったりと常人の所業ではない。しかし、頭の中にあのカタコトな日本語がはっきりと残っているのだ。

 次の評定が悪かったら、あれのせいだ。そう思いながら、退屈な授業時間を過ごしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごくあたたかい気持ちになれたというか、なんだかほんわかした気持ちになれました。 [気になる点] UFOが落ちた時の衝撃などの描写がもう少しあればもう少し不思議な雰囲気になっていたかも、…
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