表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焉蒼のヴァイキャリアス  作者: イツロウ
Ⅰ 安全な戦争
8/202

  7  -再動の兆し- 

 補足情報006

 戦闘支援AIは、ランナーの操作技術の未熟さをカバーするのが目的だったが、現在では必要不可欠な存在となっている。AIを含めた補助システムが機能しなくなると、歩くどころか直立させることも難しくなる。移動できて銃のトリガーを引くだけなら問題はない。しかし、高度な戦闘を望むならば補助システムへの依存を減らさねばならないだろう。


  7  -再動の兆し- 


 ――3ヶ月後

 セブンというAIが起動させたシミュレーションプログラムは本格的な訓練プログラムだったらしい。日本に来てから3ヶ月たった今も、俺は未だにそのプログラムに没頭していた。

 この年になって初めてゲームという物にハマった気がする。

 巷ではネットゲームに嵌り込んで社会的に再起不能になった若者の話をよく聞くが、今ではその気持がよく分かる。止めたくても止められないのだ。もはや面白いから遊ぶのではなく、義務と化している。VFOBが大人気なのもよく分かる。

 この訓練プログラムはよくできていて、俺の実力に合わせて難易度が変化しているような感じがする。クリアできなかった時の悔しさは半端ないし、クリアできた時の快感も半端ない。俺は自他共に認める負けず嫌い野郎なので、こういうゲームにはハマりやすいのかもしれない。

 とにかく、数回プレイしただけで俺はこの訓練プログラムを全て完璧にクリアすることを目標に決めた。

 そんなこんなで今の俺は仕事を放棄してリアトリスのコックピットの中で一日中訓練プログラムに没頭している。

 初めの一ヶ月は七宮宗生の個人倉庫の中に篭り、寝る間も惜しんでプレイしていた。セブンに下手だの情けないだの言われ続けてストレスが溜まる一方だったが、2週間もすれば上手く操作できるようになってきた。

 毎日食事を運び続けてくれたサラギさんには感謝の言葉もない。

 次の一ヶ月で俺は順調に訓練プログラムをクリアしていき、睡眠を取る余裕も出てきた。この時既に携帯端末は自らの手で破壊していた。なぜなら毎日毎日ケイレブからの呼び出しのせいでうるさく感じていたからだ。

 この一ヶ月は人生の中で一番有意義に時間を過ごせた一ヶ月でもあった。

 最後の一ヶ月では、約束通り倉庫を立ち退くことになり、そこで1週間ほど移動に時間を費やしてしまった。個人倉庫内からリアトリスやその他もろもろの兵装を運び出し、相続した遺産の一部を使って狭い貸し倉庫に移ったのだ。元々は何かの食品の加工場だったのか、たまに生臭い。

 貸し倉庫の広さは、借りるときに貸し手は200坪と言っていたが、25メートル四方と言ったほうが分かりやすいかもしれない。広さは十分なのだが、高さが5メートルしか無いのでリアトリスはずっと仰向けになっている。

 高さに関しては仕方ないとして、こんな事ならもう少し狭めの倉庫でも良かったかもしれない。

 でも、ここの倉庫には小部屋もあるし、とにかく、訓練プログラムを行うには十分過ぎる環境だった。

 そして、今は訓練プログラムの最終段階に入っていた。

「レベル24-55、78回目のチャレンジ、総計6112回目のリトライです。」

「もうカウントしなくていいから早くしろ。」

 プログラムの内容は至ってシンプルで、時間内に所定の場所まで移動したり、時間内に複数のターゲットを破壊したりと、時間制限物が多い。たまに破壊したターゲットの量や被ダメージ率でスコアが出る訓練もあったが、それも難なくこなしている。

 そんな感じでレベル23までは順調だったのに、レベル24に入ってからリトライ数が跳ね上がった。

 このレベルは主に仮想敵との戦闘訓練が多くを占めている。

 それぞれ武器を持っていたり、動きが素早かったり、遠くから射撃してきたりといろんなタイプの仮想敵がいたのだが、そのどれもがとても強い。必ず一回目は失敗している状況だ。

 そのため、自然と所要時間が増えてしまっていた。

 今も55体目の相手に77回負け続けている。

 やがてそれが78回になると、セブンは勝手に訓練プログラムを中断してコックピットハッチを開放した。

「順調な上達ぶりです。ここで休憩を入れましょう。」

 こうやって無理やり中断させられるのにも慣れてしまった。疲労管理を完璧にやってくれているようで、ここ最近はあまり目も体も疲れていない。

 俺はセブンに言われた通り、ゴーグルタイプのHMDをつけたままコックピットを降りて、近くにある簡易テーブルからスポーツドリンクを取る。その飲み口に口を付けたところで、再びセブンが俺に無駄なセリフを送ってきた。

「休憩がてらVFB豆知識を披露します。このプログラムは当時の七宮重工が良質なランナーの育成のために……」

「プロランナー基準で開発しちまったから結局表に出なかったんだろ。それは多分30回は聞いたぞ。」

 話の途中で突っ込むと、セブンは別の豆知識を披露し始める。

「では違う豆知識を。……VFBのランナー、『タカノユウキ』は女性として初めて1STリーグに出場し、また、女性で初めて1STリーグの頂点にたったランナーです。優勝回数は13回、連続優勝回数8回の記録は未だに破られていません。」

「へぇ、七宮宗生よりすごいランナーがいたんだな。しかも女かぁ……。」

 七宮宗生はむしろ七宮重工の社長も兼任していたから有名だったのかもしれない。

 こんな話を聞かされ続けていると、嫌でもVFBに興味が湧いてきてしまう。

 しかし、自ら積極的に情報を得ようとまでは思わなかった。今はこの訓練プログラムのことで頭がいっぱいだ。

(それに、VFBも今じゃすっかり廃れちまってるみたいだしな。)

 まずはこの訓練と言う名のゲームをクリアするのが先だ。

 スポーツドリンクを飲み干してため息をつくと、またしてもHMDのイヤホンからセブンのアドバイスが聞こえてきた。

「戦闘に関するアドバイスです。より速く反応するためにはVFと一心同体になりましょう。以上です。」

「抽象的すぎるだろ……。」

 そんな役に立たない助言を聞きつつ、俺はリアトリスのコックピットに戻る。

 すると、すぐに先ほどのレベルが再開された。

 このレベル24-55は訓練の総まとめらしく、同時に2体を相手に戦わなければならない。それが5セットほど続き、全てに勝利すればコンプリートだ。

 70回以上のリトライのお陰で敵の弱点も見えてきた。あと数回もすれば完全に攻略できるだろう。

「さて、今日中に終わらせるぞ。」

「その意気です。」

 俺はコンソールに手を載せ79回目のリトライに臨んだ。



 ――103回目にしてようやく俺はレベル24-55をクリアできた。

 これほど長引いた理由は最後の最後で強い敵が出現してきたからである。それは1機だけだったので20回ほどのリトライで何とか対処することができた。もし戦場で会っていたら簡単に殺されていただろう。

 しかし、こんな強い敵が現実の戦場にいるとは思えない。

 VFの基本性能はもちろん、敵の反応速度もまるで未来予知しているかのごとく早い。ゲーム以外でこれを実現するのは不可能だ。

 とにかくレベル24を全てクリアして勝利の余韻に浸っていると、HMDに25という数字が映しだされた。

「レベル25はエクストラレベルです。歴代の有名ランナーを再現した戦闘AIと戦い、自分の成長を確かめてみましょう。」

 エクストラ、と言うことは、どうやらこれで訓練プログラムをひと通りクリアできたみたいだ。3ヶ月と長い時間を掛けてしまったが、その分多くの達成感を得られたので良しとしよう。

「お、いいね。VFBのランナーがどのくらい強いのか気になってたんだ。」

 とりあえず今日はそのエクストラレベルを少しプレイして終わることにしよう。

 名残惜しいが、そろそろCEにも戻らなければならない。借金を満額返済したので帰る義務もないけれど、今のところ俺にはあそこしか帰る場所がない。

 あれだけあった遺産も殆ど消えてなくなったし、しばらくはCE社で働くつもりだ。

 そんな事を考えつつ俺はエクストラレベルを選択し、シミュレーションを開始する。すると、いきなり戦闘が開始されて古めかしいVFが正面から俺に襲いかかってきた。

 そのVFのデザインはかなり古めかしく、“老兵”という言葉が似合うようながっしりとした風貌をしていた。また、手には大きなロングソードが握られていた。

 このようなVFをただのスポーツで使っていたのだから恐ろしい。現代の戦場にいてもおかしくないくらいの迫力があるし、こんなVFとタイマンで戦えと言われたら大半のランナーは尻尾を巻いて逃げ出すに決まっている。

 俺は一直線に向かってくる敵VFに対して構えの態勢を取る。

 ちなみに、俺が訓練プログラム上で操作しているのは現実と同じくリアトリスだ。武器も特殊な斑の刃紋を持つあの日本刀である。

 俺は日本刀を両手で握りしめ、地面に対して刃を水平に保ったまま、刃先をやや後方に向けて腰のあたりで構える。この構えは俺が3ヶ月の間に試行錯誤して編み出した、最も隙のない構えだ。

 真上に振りあげて思い切り叩き斬るのも悪くない。しかし、それだと回避されることが多いのだ。その点、広い範囲をカバーできる横薙ぎの攻撃は命中率が高い。

 もともと切れ味もいいし、リアトリス自体のパワーも高いので威力は問題じゃない。当てさえすれば切断できるのだからそれに最適な方法で刀を振るだけだ。

 相手は単にロングソードを肩に担いで接近してきているだけだし、この構えで倒せる。

 やがて敵VFは俺に肉薄し、ロングソードでこちらに斬撃を放ってきた。その斬撃は上方からの振り下ろしだった。

 俺はすぐに反応して、そのロングソードが届く前に日本刀を真横に振りぬく。

 これで敵VFの胴体は真っ二つに切断されるはずだった。

 しかし、俺はそこで信じられない光景を目にすることになる。

 ……こちらが日本刀を横薙ぎにした瞬間、相手はロングソードから手を離して膝を地面に付けて仰け反ったのだ。

 更に相手はリンボーダンスのように体を後ろ側に折り曲げて低い体勢になる。その結果、こちらの日本刀は相手の頭上の何もない空間を切ってしまった。

「!!」

 攻撃が外れた。……というか、回避方法がアクロバティックすぎる。

 その後、相手の手から離れたロングソードはこちらに命中し、その衝撃のせいでリアトリスは背後によろめいてしまった。

 斬られはしなかったものの、この隙は相手にとって好都合だった。

 相手はすぐに俺に飛びつきその勢いを利用して地面に押さえつけ、マウントポジションを取る。俺はガードするべく咄嗟に両腕を体の前に構えたが、その時には既にリアトリスの頭部は破壊されていた。

 続けて胸部も強烈な拳によって陥没させられ、コックピットは見事に破壊されてしまった。

 コックピットが破壊されたことで戦闘は終了し、HMDにLOSEの4文字が表示される。

 その文字を見ながら俺は呟いた。

「何だこれ、無理だろ……。」

 今まで対戦してきた訓練プログラムの敵とはレベルが違いすぎる。仮想空間でも怖気を感じるような、容赦ない攻撃だった。

 あまりの強さに呆然としていると、セブンが戦闘の結果を教えてくれた。

「VFBチーム『トライアロー』のランナー『ドギィ』に12秒持ちこたえました。彼は先程話したタカノユウキと七宮宗生と並ぶほど優秀なランナーでした。」

「道理でつえーわけだ……。」

 七宮宗生という最強のVFランナーとやりあえるランナーだったとなれば、人間とは思えぬほどの反応速度にも納得できる。目で追えただけでもよくできたと考えておこう。

 しかし、為す術もなく負けるのはかなり悔しい。

 先程まではすぐに再挑戦するつもりでいたのだが、勝てる見込みが全くないのでリトライを躊躇っていた。

 俺に戦闘結果を伝え終わると、セブンが話しかけてくる。

「……ともあれこれで基礎段階は終了です。」

「基礎段階……?」

 俺の疑問を無視してセブンは言葉を続ける。

「続いて応用編、発展編、実践編があります。応用編に移りますか?」

「まだ続きがあるのか!?」

 基礎編で3ヶ月掛かった事を考えると、すべて終えるのには1年……いや、難易度が上がることを考慮すると下手をすれば3年以上掛かる可能性もある。

 プレイするかどうかはひとまず置いておいて、俺は休むことにした。

「今日はいい。応用編をやるかどうかは明日考える。」

「そうですね。お疲れ様でした。」

 俺はコックピットから降りてリアトリスの漆黒の装甲を手で触る。そして、倉庫内で寝転がっているリアトリスを観察した。

 もし七宮宗生がこのリアトリスを操作していたら、あのドギィとか言うランナーにも勝てていただろう。対する俺は手を出す暇もなく負けてしまった。

 ……俺は自分のことを結構強いと思っていた。いや、今でも強いほうだと思っている。

 CEでも活躍しているし、このリアトリスの操作コンソールにもあっという間に適応できた。そんな俺が手も足も出ない相手がいるということが信じられない。

 今はもう死んでこの世には存在しないのだが、似たような実力を持つ輩は現在のVFBにもいるだろう。

 そんな優秀なランナーが戦場に出ないでスポーツで対戦しているだけというのはあまりにも勿体無い気もしていた。

 リアトリスの装甲を触りながら自分の無力さを痛感していると、不意に倉庫の外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「シンギ、中にいるんだろう?」

 その物腰柔らかそうな声の主はCE所属のエリートランナー、ケイレブに間違いなかった。

 俺は倉庫の通用口まで移動し、窓越しに返事をする。

「ケイレブか……?」

 名前を確認すると、更にボリュームアップした声が外から届いてきた。

「やっぱりここにいたんだな。とにかく話がしたい。中に入れてくれ。」

「わかった。」

 よく日本くんだりまで来たものだ。というか、どうやって俺の居場所を突き止めたのだろうか……。

 通用口の鍵を外してドアを開けると、そこには懐かしいケイレブの顔があった。

 俺を探すために苦労したのか、疲労の色がかなり濃かった。おまけに怒っているようで、なかなか酷い形相をしている。

 ドアを開けると同時にケイレブは倉庫内に入り、俺に詰め寄ってきた。

「ようやく見つけたぞシンギ。この3ヶ月間一体何を……って、なんだこのVFは!?」

 ケイレブの視線は俺から倉庫内に横たわっているリアトリスに移り、表情も怒りから驚きへと移り変わった。

「んー、俺の父親の形見ってところかな。個人倉庫に眠ってたのを発掘したんだよ。」

 俺もリアトリスを眺めながらケイレブに答える。

 これだけの説明では明らかに不十分だったが、意外にもケイレブは納得したかの如く大きく頷いていた。

「形見ってことは、これが七宮宗生の操作してたVFなのか?」

「なんだ、知ってたのか。」

 知っているならば話は早い。ケイレブは小さく相槌を打って話を続ける。

「ああ、コルマール社長からお前が借金を全額返済したと聞いた時に教えてもらった。七宮宗生は引退してからVFBとはあまり関わりがないと聞いていたんだが、ここまで状態がいいVFを持っていたとなると、相当なVFマニアだったみたいだな。」

「仮にも七宮重工の社長だからな。しかも最強のVFランナーなんて呼ばれてたんだし、そんな奴がそう簡単にVFを忘れられるわけ無いだろ。」

「それもそうだな。……ところで、新しい社長が決まったとニュースで聞いたぞ。つまりシンギはもう既に日本での用事は終えているということだ。いつまでも休んでないでそろそろ作戦に参加したらどうだ。」

 やっぱり俺を迎えに来たみたいだ。 

 訓練プログラムも一段落ついたし、しばらくはCEで働こうと思っていたことだし、ちょうどいいタイミングかもしれない。

 折角の機会だ。訓練プログラムでどのくらい強くなったか確かめてもみたい。

 訓練プログラムの次の段階へ移行するのは一度実力を試した後でもいいだろう。

「参加してやってもいいぜ。次もやっぱり拠点制圧作戦か?」

「いや、パトロールの任務だ。」

「パトロールなんて俺じゃなくてもできるだろ。他にもっと過激な依頼はねーのか?」

「人の話はよく聞けシンギ。そのパトロールの任務なんだが、ヨハネスブルグに駐屯している国際治安支援部隊からの依頼だ。実質的にはパトロールよりも防衛に近い、厄介な奴が相手だ。」

 国際治安支援部隊といえばハイエンドVFの他にも練度の高い兵士や、それこそ俺達みたいな傭兵を何人も雇っている部隊のはずだ。補給も後方支援も行き届いているし、そんな部隊が手を焼く相手がいると思えない。

「何だ? 武力勢力が近くまで迫ってきてるとか、そう言う感じのやつなのか。」

 この部隊はテログループを始めとする非合法の武装集団を解体するのが目的の部隊だ。

 未だ領土問題で紛争が絶えない地域に派遣され、治安を正常化する為に日々奮闘している。そのせいで、両国の武装集団から疎まれている不憫な部隊でもある。

 近々大きな戦闘が起こる可能性が高いのかと予想したのだが、ケイレブは俺の予想に対して首を左右に振った。

「いや違う。敵は5週間に渡ってたった一人で部隊内の兵器や物資を破壊し続けている狙撃手だ。周辺から狙撃されているのは間違いないんだが、未だに居場所は掴めてない。……だが正体自体は判明してる。武装勢力が雇ったフリーランスのVFランナーだ。名前は『アイヴァー・グレゴール』、非合法組織御用達の狙撃手だ。」

 守りを固めれば何とかなりそうな気もするが、ケイレブが言った感じだと凄腕みたいだし、冗談抜きでヤバイ相手なのだろう。

「確かにそれは厄介だなぁ……。スナイパーはあんまり相手したくねぇな。」

 下手をすればパトロール中にドタマをブチ抜かれる可能性もある。

 もっとシンプルに敵を倒せる依頼はないのかを聞こうとすると、ケイレブは俺の言葉に対してコメントしてきた。

「相手したくない気持ちはわかるが、シンギは一度アイヴァーと戦闘してるはずだぞ。」

「本当か?」

「あの時のスナイパーって言えば分かるか。この間の拠点奪還作戦でシンギのアルブレンを狙撃した奴だ。……レンタグア社製の四脚型VF、覚えてるだろう?」

「……アイツか!!」

 ようやく思い出せた。

 “修理と輸送の手間を省いてやる”だとか何とか言って俺のアルブレンを大破させた輩だ。あの時のことを思い出すと自然と腹が立ってくる。

 同時に、仕返ししてやりたいという気持ちも湧き出てきた。

「よし、俺もその作戦に参加するぞ。」

「そうか、それは良かった。」

 俺が提案を受け入れると、ケイレブは満足気な表情を浮かべて俺の腕を掴む。

「じゃあ早速CE社に戻るぞ。今この瞬間も支援部隊は疲弊し続けているからな。」

 強引に連れ出されそうになったため、俺は一旦ケイレブの手を振り払った。

「待て、リアトリスにロック掛けて倉庫も戸締りしないといけねーから……ケイレブも手伝えよな。」

「もちろんだ。」

 ケイレブは俺が復帰したことが嬉しいのか、嬉々として倉庫のシャッターや窓に鍵を掛けていく。

 俺もリアトリスの保全をセブンに任せるべく、コックピットへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ