その1
私の幼なじみは、どこにでもいるふつうの子。
強いて言うなら十人並みを地でいくような子だ。
いやここ数年に置いては化粧しないのは地味として認識されるから、ちょっと地味な子か。
性格は至って普通………平均的なのよね。
笑うとこは笑うし、引くと時は引くし。
強いて言うならば他より少し流されやすいってとこかな。
まあ、ともかく。
そんな子と私は親友である。
「………だからね、心配なわけ」
なにがどうして一体、あの子は学校一モテ男に懐かれてしまったのだろうか。
「苦労するわ。ううん、もうしてるのよ」
モテ男には必ず取り巻きがいるのは当然のごとく。
そして彼女たちが同性に対して過激な性格に豹変するのも当たり前であって。
ええ勿論、撃退しましたけど?
わ た し が な!
ヤツがあっちこっちそっちで気を持たせるような愛想振り散らかすから、あの子は傷ついている。
アイツにそんな恋の字という気はないのに、無駄によ?!
これが許されると思ってるの?!
ああ、話しててだんだんムカついてきた。
「………あんたは流されないよな」
「はぁ?当たり前でしょ!あたしまで流されたら誰がストッパーになってくれるってのよ」
「別にいいんじゃねぇの。本人があまり気にしてねぇんだし」
「あのねぇ、気にしてないんじゃなくてさせる暇を与えてないの。つまり考えることを放棄させてるのよ?!そんなヤツなんか、だめよ!結局あの子のこと考えてなんかないんだわ。自分の感情で振り回してるの、サイッテーだわ!」
「………確かに、あんたの言ってることは正論だよ」
「そんなの当然。理由なく否定なんて猿でも出来る馬鹿のすることだわ」
「でも世の中、物語のようになる人生だって、あるかもしれないぜ?」
「ええ本当に、物語に出てくるような、執着心の塊みたいな男よね」
「俺、そいつと親友なんだよな」
「知ってるわよ。だからあんたに文句言ってんでしょ。親友の言葉なら多少ほんのちょっと僅かでも聞いてくれるかもしれないから。………あーっ言ってて悲しくなってくる。あんたも聞いてて悲しくなってこない?親でもないのに親友の躾について聞かされるの」
「あぁ、全く。悲しくなるな」
深々とため息をつくのに合わせて、うんうんと頷く。
あんたは学校での保護者だもんねー。
「泣かしたら、再起不能にしてやる」
「その責任をあの子にとらせるんじゃないか」
「そんなの、大手を振って弁護士にでも相談するわ」
「そこは俺じゃないのか」
「男の尊厳を奪ってやるんだから。覚悟はあるわよ」
「全くあんたは…………いい女だよ」
「腑抜けな男も傲慢な男もお呼びじゃないのよ」
はんっ!
いっくらでも戦ってやろうじゃないの、あの腹黒性悪男め!
困った顔で笑う男の本心など露ほども知らず、私はメラメラと闘志をたぎらせていた。
「やっかいな男に好かれたもんだよねーーーー君たち」