6/7
仮面を脱ぐ夜
舞踏会の喧騒を離れ、ガタゴトと揺れる夜の馬車。
馬車の扉が閉まった瞬間、そこは静寂と、彼が放つ圧倒的な熱量に支配された。
「……ギルバート、様……っ」
私の呼びかけが終わる前に、体が座席に押し込まれた。視界を遮る彼の手が、私の頬を包み込み、そのまま親指が唇を強く辿る。
「……あんな男に触れさせたな」
彼は自嘲するように低く笑い、そのまま額を私の肩に預けた。
途端に、彼を覆っていた威圧感が、ガラスが割れるように崩れ去る。
「……最初から、わかっていた。あの温かい声も、雨の日のような清らかな匂いも、あの日、私の暗闇に光をくれた少女と同じなのだと……」
彼の大きな体が、微かに震えている。
「君が誰であろうと構わない。姉の身代わりだろうが、どこかの間者だろうが……私のそばにいろ。もし君が消えるなら、私はこの世界ごとすべてを焼き払う」
執着という名の呪いのような告白。
彼は私の手を取り、自分の目隠しの上に重ねさせた。
「……見てくれ、リリアーヌ。いや、私の光。……君だけが、私の絶望を止められるんだ」
それは、身代わりという嘘を共有する、共犯者としての誓いだった。




