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黄金色の記憶
視界を埋め尽くしていたのは、残酷なほどに眩しい黄金色の光だった。
少女だった私が見上げていたのは、向日葵のような笑顔を浮かべる少年。彼は私の泥だらけの手を握り、真剣な瞳でこう言ったのだ。
「君のその声は、どこにいてもすぐにわかる。だから、いつか必ず僕が見つけ出すよ」
それが、私たちが交わした最初で最後の約束。
……不意に視界が暗転し、ガタリと大きな衝撃が体を揺らした。
瞼を開ければ、そこにあるのは黄金の光などではなく、湿った夜の匂いが立ち込める馬車の座席だ。
膝の上で震える指先。身に纏っているのは、私の物ではない、姉のための豪奢な絹のドレス。
私は今日から、名前も、過去も、あの日の約束も捨てなければならない。
戦場で呪いを受け、視力を失い「怪物」と恐れられるようになったギルバート公爵。彼に嫁ぐ、身代わりの花嫁として。
「……さようなら、私の過去」
馬車は、冷たい雨の中、黒々とそびえる公爵邸の正門を潜り抜けた。




