第10.5話 狩人と探偵
@新宿ゲート管理局
本日未明、新宿区ゲート第一層の突破を確認しました。冒険者各位は奮って調査を進めて下さい。日本の未来は、皆様に掛っております。よき旅を。
♥︎ 128 ↗︎ 34 ⇔ 12
@新宿ゲート管理局
第一層で未帰還者が増加中。
直近一週間で26名。「明らかに不自然」だとして調査班が派遣される模様。
♥︎ 2354 ↗︎ 87 ⇔ 74
@匿名冒険者
はっや!マジで?迷宮型なのに?マップ情報はよ!
#新宿ダンジョン
♥︎ 1 ↗︎ 0 ⇔ 0
@匿名冒険者
26人死亡とか(笑)
終わってて草
#新宿ダンジョン
♥︎ 0 ↗︎ 24 ⇔ 5
@対策局広報
故意の殺傷行為は即時送還・永久資格停止です。笑い事ではありません。
♥︎ 354 ↗︎ 45 ⇔ 23
@匿名冒険者
殺傷行為の有無は精神鑑定で判別つっても、罠でヤレばいいだけじゃん。なんの対策にもなってないやろ。そりゃ悪用する奴、出るに決まってる。
♥︎ 78 ↗︎ 36 ⇔ 45
@ダンジョン倫理委員会
“視認情報ベースの人間判定”が抜け道になっている件、システム改修の優先度を上げるべきです。
状態異常系スキルを悪用したキラーの摘発が困難。
♥︎ 987 ↗︎ 836 ⇔ 648
@匿名冒険者
新宿の死神いた。ヤバい
♥︎ 0 ↗︎ 1 ⇔ 2
@探索系インフルエンサー
「事故死対応の保険」めっちゃ売れてて笑う。
いや笑えないわ……命かかってるのよ。
♥︎ 889 ↗︎ 742 ⇔ 716
@小市民
エネルギー復活は嬉しいけど、冒険者が毎日死んでるニュース見てると……なんか違うよな。
♥︎ 18 ↗︎ 0 ⇔ 0
@管理局職員(愚痴)
現場、本当に地獄。
事故扱いで片付けられるとこっちも動けない。
でも資源確保は必須だから、止められない。
胃薬が足りません。
♥︎ 47 ↗︎ 2 ⇔ 0
@エネルギー経済研究所
対策は後手。その間にも“影”だけが増えていく。
……しかし、それでも潜らなきゃ国が持たない。
問題は治安との両立だ。
♥︎ 187 ↗︎ 6 ⇔ 2
@エルロック探偵事務所【公式】
何事も平和が一番ですよ。
ただ、先輩が「暇ねぇ……」と呟いていたので、そろそろあたしの平和は潰れます。
♥︎ 2.4万 ↗︎ 3,687 ⇔ 1.8万
◇◇◇
「暇ねぇ……」
ノートパソコンが置かれたクラシカルな書斎机、革製のチェアに深く腰掛けた鳶色の女性はサスペンダーを指で弾きながら伸びをした。ここはエルロック探偵事務所。雑居ビルの一角にある小さな事務所は絶賛、閑古鳥が鳴いていた。
「先輩……さすがに早いです……」
どこか小動物を思わせる大きな目をしたスーツ姿の丸メガネ。ソファの片隅でスマートフォンを高速操作していた女性が呆れたように口を尖らす。それもそのはず。彼女たちはついこの間、新しく出現した大阪難波ゲートを完全踏破したばかりであった。
「えぇ?そう?」
「そうですっ!たまにはゆっくりしましょうよぉ。あたしも、そろそろ論文書き始めないとですし……」
「あちゃ~、そうだった!じゃあ、しばらくお休みにして……ん?」
鳶色の女性の視線がパソコンに映し出されたネットニュースに止まった。
『新宿ゲート第一層、史上最速踏破。ついに完全踏破なるか?』
「へぇ。新宿ゲートって確かあの理不尽ダンジョンだよねぇ。一層踏破したんだって」
「あぁ~、みたいですねぇ。……あっ」
「第一階層で未帰還者が増加中。直近一週間で26名。明らかに不自然……」
カラカラっとマウスのホイール音が響く。丸メガネの女性はメガネを外して、渋い顔をしながら天を仰いだ。
「面白そう!行こう!」
「はぁ……もう、わかりました。ですが、一層のマップ情報が解禁されるまで待ちましょう。効率的にもその方がいいです」
「おっけー!じゃあ、その間に新宿支部局に情報提供依頼して……」
その時、タイミングを見計らっていたように控え目なノックが三度。気弱そうな女性がそっと扉から顔を出した。
「す……すみません。猫が逃げちゃって……」
「お、ようこそ!エルロック探偵事務所へ。迷い猫のご依頼ですね!どうぞ、そちらにお掛けください!私は所長の――」
パタンとノートパソコンを閉じて、鳶色の女性は立ち上がり、来客の方へと歩み寄った。長めのポニーテールがゆらりと揺れる。丸メガネの女性はサッと来客用コーヒーの用意を始めた。
手がかりを拾い集め、消えかけた痕跡をたどり、やがて獲物を射貫く。
獣を追う狩人も、真実を明かす探偵も、求めるモノが違うだけで――
その本質に、大きな違いはない。
彼女たちは趣味で探偵業を営む冒険者チーム。だが、その正体は……。
難攻不落の新宿ゲートダンジョン。黄金と漆黒──二つの翼がはためく音。その羽ばたきが、静かに近付いていた。
「えっ?写真ない?うそぉん……。あ、じゃあ絵、ニャンコの絵描いて!」
「あ、あの。猫さんのお気に入りのおもちゃがあれば……あたしのスキルで……」
迷い猫が見つかるのは、まだ少しかかりそうだ。
つづく




