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東方鼬紀行文  作者: 辰松
一、旅鼬
3/29

其之三、鼬旅立ちて諏訪の社を訪れる事

 さて旅である。


 いざ行かん日本全国怪異伝説紀行……と言いたいところなのだが、何分今は弥生時代、西暦にして大体六十年。これ程昔の伝承などそうそう後世まで残る筈もなく―――要するに、いつ何処で何が起きるか起こったか、全く分からないのである。闇雲に歩き回ったとてそう簡単に怪異なぞに出会える筈も無し、ならば一体どうするか。


 そこで考えたが、神社巡り。

 古くは精霊崇拝アニミズムに端を発する物である日本の神道は、実に根が深い。少ないとは言え、例え弥生時代でも神社は有る所には有る筈なのだ。この当たり前のように妖怪がうろつく過去の世界でならば、本物の神にとて会えるかもしれない。何と素晴らしいことであろうか!


 とまあそんな感じで記憶に有る神社、中でも古い所、この時代でも存在しているやも知れない場所を回ってみることにした訳なのである。




◇◆◇◆◇




 俺が生まれた場所……つまりいづなの縄張りであった山は、現代日本の地域区分で言うところの中部地方にあった。従って俺の旅の開始地点は中部。そこから近く、かつ古くからある有名な神社と言えば―――


「……んー。ざっと五年ぶり?」


 現代―――或いは未来―――で言うところの長野県諏訪市。諏訪湖の辺にその堂々たる威容を見せる、神位正一位の名神神社。


 即ち、諏訪大社である。


「いや待てよ、この場合はマイナス二千年ぶりとでも言うのか……?」


 ぶつぶつと呟きながら湖の辺を歩いて行く。姿は人。耳や尾は隠して、髪は黒。神社に参拝するのだ、人でないと分かる姿で行く訳にはいくまい。


 社に到着。記憶に有るより遥かに小さくまた形も違うが、何処か似た雰囲気を持つ威風堂々たる建物。


「さてと……」


 二礼二柏手、柏手を打つ。賽銭は無い。と言うか賽銭箱が無い。そもそも柏手なる作法の有無すら怪しいのだが―――ともあれ。


 無病息災と旅の安全を祈願し、ついでに目付きが良くなりますように等と祈ってみる。昔から神社に行く度に願っているのだが、残念ながら一向に効果が無い。


 最後に一礼、くるりと神社に背を向け来た道を引き返す。


「神様は出んか……つまらん」


 ―――と、呟いたその時であった。


「待ちなよ、そこの化け鼬」

「!」


 後ろから呼び止める声。驚いて振り返ると、


「一体、妖獣がうちの神社に何の用?」


 幼女がいた。




◇◆◇◆◇




 幼女である。


 何度見返しても、小学校低学年程度の幼女である。


 ぎょろりとした目の飾りが付いた大きな帽子、顔の横で房にした短い金髪、この時代における貴人服。そんな出で立ちの幼女が、此方を睨み立っている。


「何の用、と言われてもな……」


 怖い顔―――幼女なので怖くも何ともないが―――を作る幼女に、俺は首を傾げる。


「……神社の参拝?」

「へ?」


 俺の返答に、幼女が目を瞬かせる。


「さ―――参拝ィ?」

「まあ、参拝だ。むしろ神社に来て他に何すんだよ」

「いや、そりゃ、そうだけどさ」


 それはそうだけれど、と慌てた様に言って。


「あんた、妖獣じゃん。鼬じゃん」

「鼬が信仰を持っちゃいけないのか?」

「い―――いや。信仰を拒むつもりはないけど」


 小首を傾げ腕を組み、むむむと唸る幼女。信仰を拒むつもりはない、との物言いから鑑みるに神職の者であろうか。いや、幼女の見た目にそぐわぬその態度と、この国の者では有り得ぬ髪の色から考えれば、人間ではなく御使の類かも知れない。


「ねえ、お前さん」

「……ん? 何?」

「お前さんは何者なのかね。人間じゃあないみたいだが」

「は?」


 幼女が再度、俺を見て目を瞬く。


「あ……何だあんた。分かってなかったの。道理で態度がおかしいと……」


 呆れた様に首を振り、幼女は一ツ息をついて。


「―――私は、洩矢諏訪子。この諏訪大社の祭神の一柱だ」


 腕を組み、顎を上げ。俄かに辺りを塗り替える様な空気を発散し、幼女はそう名を名乗った。


「……」


 ぽかん、と自分の口が開くのが分かった。この幼女今何を言った。そんな姿で、そんな馬鹿な。

 ……いやしかし。この重々しく息苦しく、だが決して不快ではないこの感じは―――神々しい、と呼ぶのではなかろうか。


「……えぇ、と」

「何さ」

「神様?」

「そうだって言ったよ」

「……そのなりで?」

「どう言う意味だコラっ」

「痛っ」


 がすん。脛を蹴られた。痛い。


「……か、神様の割に攻撃が地味でありますね……」

「何さ、祟られた方が良かった?」

「滅相も御座んせん」


 しゃがんで脛を抱えたままふるふると首を振る。結構本気で痛い。


「……はてさて……」


 跪いたまま幼女―――神を見、その御尊顔をまじまじと拝見する。その可愛らしい顔立ちは、神と呼ぶには些か抵抗を感じるのだが。まあ、神だと言うからには神なのだろう。


「洩矢諏訪子様、とおっしゃいましたっけか」

「そうだよ」


 先程とは打って変わり敬語の俺に満足気な笑みを零しつつ、幼女もとい洩矢神はこくりと頷く。


 さて―――洩矢。


「……大和の神との争いに敗れ、信仰を譲り配下となった古き土着の神―――で、ありましたっけか」

「おや。あんた若そうなのに、良く知ってるねそんな昔の事」


 まあ配下になんざなってやしないけど、と洩矢神は笑う。


「それでは、大和の神もいらっしゃるのでありましょうか」

「ああ、居るよ」

「うむぅ……お目通り叶いますでしょうか」

「あー……まあ、多分良いんじゃない?」


 些か投げ遣り気味に、洩矢神はひらひらと手を振った。


「何だって妖獣が神に会いたがるのやら……今日は変な日だね」


 洩矢神は独り言の様にそう呟くと、ふと思い出した風で、


「あ、そうだ。あんた、名前何?」

「っと。神様に名乗らせておいて名乗り忘れるとは何たる不覚」


 俺は芝居掛かった風にそう言って、ぴしりと姿勢を正す。


「自分は鼬の妖獣、八切七一と申します―――」





◇◆◇◆◇




 八切七一。


 それが今の俺の名である。

 どうせ生まれ変わっちまって、かつての自分を知る者等居やしないのだ。元々気に入ってもなかったこの名前、心機一転と言うか過去との決別と言うか、そんな意味も含めて名を変えた。

 何だか適当とは言え母から貰った「なないち」の名と、流石に思い入れも有って字を変えるだけに留めた「八切」の姓。

 それで、八切七一。



 ―――さておき、諏訪大社。

 俺は今、洩矢神を名乗る幼女―――神である以上間違いなく年上だが―――の先導で、神社の中を建御名方神に会いに行くところである。

 先導、と言っても大して広くもないこの御社。して掛からぬ内に、洩矢神が立ち止まる。


「―――此処だよ」


 眼前には一つの戸。洩矢神が背伸び気味に手を伸ばし戸を開ける。ぐっと唾を飲み中を覗き込んだ俺が見たものは―――。


 ―――注連縄の輪を枕に引っ繰り返っていびきをかく女性の姿であった。


「……」

「……」

「えー、あの……アレ、建御名方様で?」

「……ちょっと待ってな」


 洩矢神は、俺の問いには答えずそういうと、自分だけ中に入ってぴしゃりと戸を閉めた。

 直後、怒声が響き渡る。


「―――起きろこの間抜けッ!!」


 ずどん、と何かを打ち下ろした様な衝撃に社が震えた。ぎゃーぎゃーと喚く声、どすんばたんと暴れる様な音が、戸の向こうから聞こえて来る。


 ―――そして、しばしの沈黙の後。

 がらりと戸が開いた。


「よくぞ来たな鼬! 妖獣でありながら神社参拝とは非常に殊勝な心がけ!!」

「……はあ。どうも」


 のそのそと中に入り、戸を閉めて正座。

 濃い紫の髪、臙脂色の服。洩矢神とは対照的に大きく膨らんだ胸の前に、小さな鏡が下がっている。

 そんな神様が、一段高くなった所に胡座をかいて威厳たっぷりに声を響かせる。……女である。建御名方―――の筈なのに。


「何だその返事は。神だぞ。もっと喜ば痛い!?」

「阿呆」


 すぱん、と。横に立っていた洩矢神が、建御名方(多分)の頭をはたく。


「寝こけてるとこ見られた癖に、今更無い威厳保とうとしてんじゃないよ」

「そうは言ってもさ諏訪子」


 御名方(きっと)が洩矢神に反論する。が、先程までの威厳ある口調が崩れている。

 ……何だろう。淡くも神に抱いていたイメージと言う物が、粉微塵にされてゆく。


「妖獣相手に舐められる訳にはいかないだろ」

「だからもう遅いって言ってんの」

「いやいや、見なよほら。こいつ私の威厳に圧倒されているじゃないか」


 御名方(おそらく)が掌でこちらを指し示す。だが、俺がさっきから黙りこんでいるのは―――。


「ありゃァあんたの厚顔無恥っぷりに呆れてんだっての」

「え? 何が」

「昼寝してるとこ見られてよくあそこまで偉そうに出来るね」

「偉いよ。神だし」

「参拝客もいる昼間っから寝こけてる神があるかこの駄女ダメ神」

「だってさあ。面倒じゃないか一々願い聞くのって」

「神の仕事放棄してんじゃねえよ」


 すぱん。またはたかれる御名方(仮)。洩矢神の言葉も粗暴になってゆく。と言うか、何でド突き漫才してるんだこの神様達。


「ってか神奈子。お前名前の後ろに(仮)付けられてるぞ。しかも呼び捨てだ」

「何だとぅ。貴様神への信仰が足りん」

「いやいや。モノローグ……もとい思考読まないで下せい」

「いいだろ。神だし」

「いいじゃないか。神だし」


 目茶苦茶である。


「さておきッ……我こそはこの諏訪大社の祭神・建御名方、またの名を八坂神奈子である!」

「ははー」

「口調今更戻すのかよ。んでお前ひれ伏すのかよ。威厳ねえだろもう」


 何だか色々どうでも良くなった俺は、呆れた様子の洩矢神をスルーしつつ今聞いた名に思考を向ける。


 さて―――八坂神奈子、と。

 神奈子の方は知らないが、八坂の名は八坂刀売のモノと考えて間違いは無いだろう。女性だし。建御名方と八坂刀売がなんで一緒くたなのかは知ったこっちゃないが―――信仰の対象が纏められたりバラけたりなんてのはよくある事。

 第一俺が知っているのは『歴史』であって『事実』ではない。なにせ二千年近くも前の事、正しく伝わっていなくても致し方ないのやも知れない―――。

 と、八坂神の御声が掛かる。


「どうした鼬。名を名乗らんか」

「や、これは失礼」


 また同じ失敗である。すぐ思考に没頭して周りが見えなくなるのは自分の悪い癖。直さなければ。


「えー、八切七一と申します。未だ齢三歳程度のしがない化け鼬であります。どうぞよしなに」

「三歳ィ?」

「え、三歳?」


 揃って驚きの声をあげる八坂神と洩矢神。


「そんなに若いのかい、あんた」

「歳の割に落ち着いてるねえ」


 と、感想を漏らす神二柱。大人びているのも当然の話、人間時を含めれば自分は既にほぼ二十歳である。神から見ればまだまだ赤子にも及ぶまいが。


「妖獣とは言え三歳の鼬が一人旅かい。よく途中で妖怪なぞに襲われなかったもんだ」

「はあ。隠行やら遁走の類は母に教わりまして。それなりに優秀な能力も持っておりますので」

「へえ。能力持ちか」


 能力というやつは、強さを決める非常に大きな因子である。例え若く妖力の低い小妖怪でも、優秀な能力があれば中級妖怪とも渡り合えるのだ。

 自分のような若いどころか幼いとさえ言える三歳児な雑魚でも、優秀な能力のお陰で、全身全霊、力の限りを逃げに尽くせば逃げられない相手など居ない。

 気がする。

 多分。


「まあ、全国の神社回る積もりでありますから。初っ端から喰われてちゃ堪りません」

「いや全国て。何年掛けるつもりだ」

「必要とあらば数百年は」

「数百年生きるつもりなのかい……」

「いやいやァ。二千年は生きる予定で」

「たった三歳の餓鬼がよく言うよ」


 呆れ返る洩矢神。


「ってかさ。そんなに生きて何すんの?」

「見て回るのであります。この島国の隅から隅まで」

「……ホント変な奴だね。普通妖怪の妖獣のって奴らは、縄張り張って一カ所に留まって生きるもんなのに」

「詰まらんじゃぁあらんせんか、そんな生き方」

「……ふうん。そんなもんかな」


 微妙な表情の洩矢神。……神というのもそれこそ、普通は自分の神社に留まって動かないものだろうから。理解し難いのかもしれない。


「ところで」


 ふと、八坂神が言う。


「大分日も落ちてきけど。あんた、泊まっていかないかい?」

「や」


 宿を貸してもらえる、と。それは願ってもない申し出だが―――。


「……宜しいので?」


 幾ら何でも妖獣なんざ泊めてしまって良いのであろうか。ちらりと洩矢神の顔を伺う。


「……いいよ、別に。あんた悪さしそうにないし」

「決まりだね」


 八坂神がにっと笑う。


「喜べ八切の。妖獣が神社に泊まるなんてのは多分これが初だよ」

「は。有難う御座います―――」


 だから何だ―――と言う気が、しなくもないが。




◆◇◆◇◆




「―――そんな感じで私らは、仲良しこ良しと一緒に暮らしているわけさ」

「はー、成程。それで表向きは八坂神、しかして実際のところは洩矢神がここの祭神をしている、と」

「そーゆーこと……んぐ」


 その夜。

 俺は神二柱から、この神社に神がダブっている理由を聞いていた。

 案の定知っている話とは違い、洩矢神と八坂神は大分仲が良い様であった。


 で、この二柱。話をしつつ酒をかっ喰らっているのだが。


「んっ……ぷは。ほれ、あんたも飲みなって」

「や、だから飲めませんて」


 俺の腕を掴んでぐいぐいと酒を勧めてくる八坂神。非常に困る。ちなみに自分は一応未成年、酒を飲んだことはない。

 と、いうか。


「あんた三歳ならとっくに成獣だろぉ。飲め呑め」

「むしろ年とかそれ以前に」


 御神酒は―――拙いだろう。


「気にすんなてのに。イイんだようちの酒なんだから」

「鼬なんぞが供えられた酒飲んじまうのはいかんでしょうや」

「はん。頭堅いねぇ……ま、飲みたくないてんなら良いけどさ」


 ぺいっ、と腕を放して八坂神が酒を流し込む。やれやれやっと解放された、と俺は少し距離を取った。酔っ払いは些か苦手である。


「ところで……」


 同じく徳利を傾ける洩矢神が、此方にちらりと目を向ける。


「あんた、結構立派な尻尾してるよね」

「む?」


 尻尾。当たり前だが人間の頃は無かった器官である。生えたら生えたで、人の形態をしていてもバランスを取るのに使えたりするが。


「そうですかね」

「それなりに大きいし、毛並みも綺麗だし。……抱き枕にしたら気持ちよさそうだね?」

「……やめて下さいよ?」

「あはは。冗談だって」


 とか何とか。他愛のない会話をしつつ、夜は更けてゆき―――




◇◆◇◆◇




 俺は今、非常に困っていた。


「だぁからぁ。飲みなって言ってるじゃんかぁ」

「いや、飲めませんてば」

「何らとぉぅ!? あらしの酒がぁ、飲めないってゆうのかぁ!」


 八坂神である。……非常にうざったい。絡み酒であった。


「るせぇんだよこの駄女神ぃ! 静かに飲みゃぁがれすかたん!」


 洩矢神である。……非常に怖い。見た目ロリなのに。怒り上戸である。


「ほぉらぁ! 飲めっていってるだろお!!」

「いたたた!」


 実力行使に出る八坂神、まさかのヘッドロック。胸が当たっている―――と言えば羨ましく聞こえるかも知れないが、人外の腕力で締め上げられては実際のところ痛いだけである。

 と、言うか。

 嫌なら飲まなくて良い等とのたまったのはどの口だ。


「うるせぇってんだよおおお! ブッ殺すぞこのハゲ鼬ぃぃぃ!!」

「なんで俺だ!?」


 目をギラつかせて絶叫する洩矢神に、うっかり素が出てしまった。……が、ここまで泥酔していては敬語など使うだけ無駄かもしれない。

 ……泥酔。泥のように酔う。随分アクティブな泥もあったものである。

 と。洩矢神が突然尻尾に抱き着いてきた。


「んんん。やっぱ気持ちぃじゃねぇかぁこの野郎ぉ……もふもふ」


 ……怒り上戸なのか、これは。むしろ可愛いんだがこの子。抱き枕にされているのにあまり怒る気にならない。

 と、言うか。

 あはは冗談だ等と抜かしやがったのはどの口だ。


「……すかー」


 ふと気付けば、八坂神が寝息を立てている。酔い潰れたらしい―――選りにも選って、ヘッドロックの体勢のままで。

 既に力は抜けているので別に痛くはないのだが―――。


「……だから、胸……」


 ……ある意味さっきまでよりキツいかも知れない。苦しい体勢のまま、額に手を当て天井を仰ぎ溜め息をつく。


「……ぐう」


 洩矢神の方も、尻尾にくっ付いたまま潰れており離れる様子がない。叩き起こす訳にもいくまい。


 本当に―――神らしくない。否、初めて会う神がこの方々なのだから、神とはこれが常態なのか。


「……あーもう」


 動くもののない酒臭い部屋で、頬や尻尾に感じる感触を忘れようとしながらまんじりともせず夜を明かす。


「……これだから……」


 ふと脳裏によみがえる人間だった頃の記憶。

 酒飲んで酔い潰れる矢霧さん。

 間違えて酒飲んで酔い潰れる幼馴染み。

 確信犯で酒飲んで酔い潰れる部活の先輩方。

 ……そして翌朝、一人片付ける俺。


「……これだから酔っ払いは嫌なんだ……」


 酒は飲んでも呑まれるな。至言である。




◇◆◇◆◇




「もう行っちゃうんだ」

「ゆっくりしてけば良いのに」


 翌朝。俺は二柱の神に別れを告げていた。


「……ゆっくり出来ないから出て行くんじゃあらんせんか。昨夜は飲み過ぎです御二方」


 呆れ顔で軽くたしなめる。我ながら、鼬風情が何を偉そうにと思わなくもないが―――こんな神様方では、まあ。


「あっはっは。何はともあれ……達者でね。野垂れ死にすんじゃないよ」

「何か有ったらまた来ると良い。面倒じゃない事ならしてやるよ」

「ええ、どうも。近く通ったら、ちょっと寄ったりもしますんで。では―――」


 最後に、諏訪湖と諏訪大社の威容を眺める。遥か後々まで残ってゆく、実に雄大かつ神々しい景色。


「―――御世話に、なりました」


 さて―――次はどこに行こうか。


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