難航する調査
翌日より尾行、張り込みを開始致しました。
しかし、今回の調査はかなり難航しました。水木瑞希様のご主人が勤める大手企業のオフィスビルは他にも高層ビルが立ち並ぶ駅前ビル群の中に存在していました。しかも、ビル東西南北それぞれに出入口が存在、更に地下一階は地下鉄駅ビルに直結しており、社員数も多く、何時に退勤するかわからない旦那さんの姿を確認するだけでも困難を極めました。初日は二人一組の四人体制で地下一階の駅直結出入口と駅へ行くには一番近い東側の出入口で張り込みましたが、とうとう確認する事が出来ませんでした。
初日終了後、緊急の打ち合わせを事務所に戻り行い増員を決定。他事務所への依頼を行いアルバイトスタッフを招集。三倍の十二人体制で行う事とし、まずは対象者である旦那さんがどこの出入口を使用するかの把握から始めました。
その結果、旦那さんは南の出入口から必ず出て、近くの喫煙所でタバコを吸ってから駅に向かう……という事が判明しました。
そして、三日間共に時間は夜九時過ぎ。自宅の最寄り駅までは真っすぐ帰ると約四十五分、つまり十時過ぎであるという奥様の情報に相違はなく、結果的にこの期間の不貞行為はありませんでした。
その後も十二日間に渡り尾行を継続しましたが、退勤時間もほぼ同じであり、もちろんなんの不貞行為も確認出来ませんでした。
並行して行っていたSNSの調査ですが、利用の確認は出来ず、尾行中に電車内でスマホを操作しているのを確認しましたが、パズルゲームをしているだけでした。
つまり現状では真っ白という事になります。
奥様の女の勘はただの杞憂に過ぎなかったのでしょうか?
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女性と男性では脳の構造や機能に違いがあると考えられています。
それはどういう事か?
まず前提として脳には右脳と左脳があり、役割分担があります。
例えば左脳では言語能力、計算能力に優れ、右脳では空間認知や音を聞き取る……という様に分担して情報を認知、処理しています。
1970年、海外のある神経科学博士によって、とある実験が行われました。
男性と女性のそれぞれの被験者の頸動脈に麻酔作用のある薬品を注射、言語中枢のある左脳だけを眠らせるというものでした。
その結果……男性は全く話すことが出来なくなったが、女性は片言ながら話をする事が可能だったのです。
つまり、男性の場合は脳の役割分担がはっきりしていて、左脳だけで会話をする……それに対して女性は左脳が駄目なら右脳で会話する事が可能だそうです。
女性は脳の構造上、左脳と右脳の情報伝達が男性よりも優れていて、機能的には脳の役割分担がはっきりしておらず、両方を使用する事が出来るために、物事をきめ細かく見る、変化に敏感、音楽をよく聞き取るという事が可能だという事です。
しかし情報伝達が優れているという事は、情報過多によりパニックになりやすい、疑心暗鬼に陥りやすいというデメリットもあります。
ですから、男性は女性がパニックになり多弁になった時はデンと構えて、情報を整理して落ち着かせて下さい。
太宰からのお願いですよ?
あっ……私とした事が、慣れないセリフを吐いてまたもスベリましたね?
失礼致しました。