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ちなみに疑惑は些細な事

 昔からの言葉で「女の勘は鋭い」という言葉があります。

 思い浮かべて下さい。

 例えば、旦那さんや恋人と普通に食事をしている時、ふと何気ない会話の内容やしぐさで「何か隠している?」「なんか今日は変だな?」と思った事はありませんか? 更に男性が後ろめたく思っている事、本人も気付かない体調の変化に気付いてしまう経験はありませんか?

 それは女性が『変化』という事に敏感で、観察力が男性よりも優れていると考えられるからです。

 その事に関して、興味深い実験を行った記録がありますが、あとで紹介するとして、とりあえず物語に戻りましょう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 ここは私が経営する太宰探偵事務所。ちなみに浮気調査専門の事務所です。


「なるほど。水木様は旧姓鈴木様――ご結婚されて水木瑞希様になったのですね」

「はい。ちなみに、よく笑われます」

「けれども、人に絶対覚えてもらえますでしょう?」

「ええ」

 どうでもいい会話を晒してしまいましたね。

「では先程仰っていた、ただなんとなく……をもう少し一から詳しく教えて下さい」

「はい。えっと……まず、主人は大手企業に勤めるサラリーマンです。ちなみに、結婚して一年半くらい経ちます」

「はい。お子さんはいらっしゃいますか?」

「一歳になる娘がいます」

「さようでございますか」

 つまり、できちゃった結婚ですね。失礼しました。そんな事はどうでもいいですね。

「主人は結婚してからもずっと忙しくて、毎日の帰宅も夜十時過ぎ……ちなみに、遅いのは仕方ないと思っておりました」

「はい」

 まあ、帰宅が遅いというのは、仕方ないと思っていても常に不安という十字架を背負っていますからね。わかります。

「けれども、先日スマホからメールを送信していたのです。それが妙に気になって……」

「メール? 今まで自宅では目にした事がなかった光景でしたか?」

「いえ、ありました」

「では、なぜ?」

「なんか、メールを打っている時の表情が楽しそうだったからです……」

 まあ、ありえなくもない話ですね。たしかに仕事のメールでしたらそんな表情はしませんから。しかし、ここはあえて反論してみましょう。

「水木様。あ……もちろん苗字の方です」

「は、はい」


 私とした事が失礼致しました。ややスベリましたね。


「もし、奥様が逆の立場であったとして、目の前でニヤけながら浮気相手にメールをするでしょうか?」

「いえ、しないと思います……」


 反論は通じたようですね。


「ちなみに、どんなシチュエーションだったか覚えていますか?」

「えっと、たしか娘を寝かしつけた後、こたつに入って主人とテレビを見ていました。ちなみに番組は霊感ヤマカン第六感というクイズ番組でした。その時に通知音が鳴りました。ちなみに通知音はコケコッコーってニワトリの鳴き声です」

「はい」

 なんですか? ちなみにちなみにって、何にちなんでいるんですか? 変わった奥様ですね。

 あと、なんですか? その番組名は? 妙に気になりますね。通知音の方はどうでもいいですが。

「そしたら主人が、会社からメールだ。ちょっと返信すると言ってスマホを操作しだしたんです。ちなみに最終問題の時でした」

 だから、何にちなんでいるんでしょうか? めんどくさい奥様ですね。

「なるほど。その時にニヤけ……いや、楽しそうにメールを打っていたのですね」

「はい。あからさまに笑顔だったわけではないと思いますが、妙に引っ掛かって……」

「まあ、女の勘というのがありますからね。それは私も共感します」

「え? 太宰さんもそういう経験があるんですか?」

「いいえ。私は独身ですから」

「え? そんなに綺麗なのに……」

「ありがとうございます。ちなみにそれ以外、ご主人の言動などで気になる点を教えて――あ、枕元にスマホを置く件でしたね?」

 ちなみに、私は社交辞令的に褒められた場合は軽く受け流し、スルーする事にしています。

「あ、はい」

「今まではそんな事はなかったのですか?」

「いえ、主人はスマホをいつも枕元に置いて寝ています。けれども、今までは枕元……頭の上だったのが、最近は耳元に置く事が増えたのです」

「なるほど。微妙な変化に対して奥様は気掛かりなのですね」


 そんな些細な事で疑うの? と思う方もいるでしょう。しかし、行動に何か変化があったという事はそこに理由があるからなのです。


「そうなんです。だから調べて欲しいのです」

「かしこまりました。ところで事前にメールでお渡しした書類は記入して頂けましたでしょうか?」

「あ、はい。今、出します」


 当探偵事務所では、面会前にパートナーのタイムスケジュール、交友関係のリストを書いて頂いてます。


「たしかに受け取りました。それでは明日から調査開始致します」

「はい。よろしくお願い致します」


 今回のポイントは三つ。

①奥様が妙に気になったメールの送信

②微妙に変化したスマホの置き場

③結婚してからずっと帰宅が遅いご主人


「調査はまず明日から二週間行います。そこで一旦ご報告させて頂きます。再来週以降ご都合のよろしい日を連絡下さい」

「わかりました。あっ、ちなみに調査ってどんな事をするのですか?」

「先程頂いたタイムスケジュールをパッと拝見させて頂くと、休日は家族から離れる事がないようですので、平日の退勤時からの尾行が中心となります」

「はい。わかりました」

「あとは頂いたご主人の携帯番号、メールアドレスから、並行して主だったSNS関係の調査も実施致します」

「はい。ちなみに太宰さんは個人的にどうお考えですか?」

 

 水木瑞希じゃなくて、水木ちなみに改名したらどうですか?


「個人的に? とは?」

「主人が浮気してると思いますか?」

「現時点では考察する材料が少ないので正直わかりません」

「はい……」

「ですが、私は女の勘というのはかなりの的中率をほこると個人的には思いますので」

「じゃ、じゃあ黒だと……」

「いえ、断言は出来ません。黒だという前提で調査するという事です」

「わ、わかりました……よろしくお願いします。ちなみに来週でしたら、水曜日に母が家に来ますのでお伺いする事が出来ます。ちなみに今日は母の家に娘は預けてあります」

「……かしこまりました」

 

 本当に変わった奥様ですね。


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