見てはいけない5
「ひぃぃぃぃ!」
「パトリック!!くそ!!すまん!!」
先輩兵士は、そう言うと剣を抜きパトリックの両目を切りつけた。
「ぎゃああ!」
「すまん、パトリック。こうするしかなかった。」
なにをするんだと思っていたら、先輩兵士はパトリックを担ぎ走り出した。
「直感スキルで感じた通りだ一度見てしまったら目を潰すしかない。そうすれば助かる。」
パトリックもまた第二皇子と同じく、あの子供を見続けてしまった。
しかし、幸いにも先輩兵士の直感スキルによって災いは回避された。
パトリックの目を潰したと同時にパトリックにしがみついていた子供は消えていた。
「ファイヤーボール!」
「アイスショット!」
「エクスプロージョン!!」
様々な魔法がネペンテス側にこだまする。
しかし、そのどれもが効果がなく魔法は魔法を唱えた術者に返って来ていた。
そして、怒号が鳴り止むとネペンテス側に生存者はいなくなっていた。
後日、オスティアン王国側はアスタリア平原に偵察兵を送った所、帝国第二皇子の生首を転がして遊ぶ子供の姿を見て脱兎のごとく離脱し、上層部に報告した。
後年、アスタリア平原の怪と呼ばれる事象であった。
パトリックは、目を治そうとはしなかった。
今でも夢にあの昏い黒い穴が自分を見つめている気がしてとても治せなかったのである。
あれはなんだったのだろうか?
ゴーストやゾンビでもないのに何回切りつけても死なない。
ただ、一言で表すなら、そう化け物だと。パトリックは後に語った。