見てはいけない4
「クソクソクソ!なぜ、死なない!」
第二皇子は、焦っていた。
いつもなら、この剣で敵は死ぬ。
しかし、目の前の存在はなんだ。
いくら斬っても血の一滴すら出さない。
「はあはあ……貴様、ゴーストか!?ならば、スキル聖光剣!!」
ザシュ!!
しかし、子供にはなんの効果もなくただ座っていた。
「帝国の第二皇子!もう、やめろ!!それ以上特記事項に触れるな!!いや、見るな!!」
いつのまにかオスティアン王国の兵士は後退していた。そこへ、オスティアンの貴族が帝国第二皇子に警告していた。
「帝国の第二皇子よ!!やめるんだ!!」
「なにを言う!!敵の言うことなど聞けるか!!」
この子供さえいなければと、また剣を振りかぶり今度こそは首を刎ねてやろうと子供の顔を覗き込むといつの間にか子供は第二皇子に顔を向け見つめていた。
ただし、その両目は昏い闇のように真っ黒い穴だった。
『遊んで……』
「ひぃっ!」
思わず短い悲鳴を上げてしまった第二皇子だが、それが腹立たしく子供の首を刎ねた。
今度こそは殺した。
そう思っていたが、剣の先に子供の首が乗っておりそこから黒い穴が第二皇子を見つめ口が動く。
『遊ぶ……』
「ひぃあ……!」
今度は首のない胴体がいつの間にか第二皇子の足にしがみついていた。
「や、やめろ!はなせ!」
そう言い、足から子供の胴体を振り払おうとするがなかなか振り払えずにいると、今度は首に手を回して来たものがいた。
こちらも首のない胴体だけだ。
「な、なんなんだ!これはいったい!」
いつのまにか、2体3体と増え第二皇子にまとわりついていく。
「殿下をお助けしろ!」
恐らく第二皇子共に新しくこの戦場に来た親衛隊なのだろう躊躇せずに子供だったものに槍を突き入れる。
『遊んで……』
次の瞬間、子供の体に槍を突き入れた者たちはまったく同じ箇所に傷が出来、死んでいった。
「な、な、な、なんなんだこいつは!?はやく助けろ!!」
第二皇子はどんどんと増えていく子供だったものに恐怖し助けを求めた。
「ファイヤーボール!」
魔法が子供に命中したと思ったその時
「ぎゃあああ!!」
魔法を放った兵士が丸焼けになったのだ。
『遊ぶ遊ぶ……』
子供だったものは、今や第二皇子だけでなくネペンテス兵にまでしがみつき、なお増えていった。
「せ、せ、先輩、あれはなんですか……?」
「バカ!もうゆっくりじゃねえ!全速力で後退し戦場を離脱するんだ!!」
パトリックは先輩にそう言われると全速力で後退しようとした。
だが、出来なかった。
なぜなら、彼の足にもまたあの子供がしがみつきこっちを見ていたのだから。
そして、目が合った。
「ひぃぃぃ!!」