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見てはいけない2

 その1 見てはいけない



 なんだ、これは?


 その2 魔法を撃ってはいけない


 その3 攻撃してはならない


 その4 ………………


 パトリックは何度も読み返していた。

 曰く、見るな攻撃するな、存在Aが現れた場合突撃を即座に中止しろ。


 なんだこれは?マニュアルは何度か見たことあるがこうまで不可解なマニュアルは初めてだとパトリックは思った。


「なんだこれは……」


 先輩兵士が、そう呟くとパトリックの顔を覗き込みながら続けた。


「パトリックよ、これはよく分からないが皆んなにも回して字の読めないやつにも言ってやってくれ」


 パトリックは職業軍人のため字が読めるが今回一緒に行軍してきた部隊の中には、ただの平民も居たため字が読めないものも存在していた。


「わ、わかりました」


 パトリックは、そう言うと先輩兵士が冊子を渡してきた。


「明日にはオレたちも、兵士と仕事をしなきゃならん。だが、この冊子の書いてあることが本当なら戦争にならんな。生き残れるかもしれんぞ、パトリック」


 先輩兵士は、そう言うとテントの中に引っ込んでいった。

 パトリックは、戦争の死の恐怖でいっぱいだったが冊子のせいで混乱していた。

 なにか、よく分からない存在がいるらしい。

 それが、戦争をしても生き残れる理由になるかもしれない?

 パトリックの頭の中は今や混乱の坩堝と化していた。




 次の朝


「パトリック、昨日のお貴族様が言っていたんだがネペンテス帝国の第ニ皇子がこのアスタリア平原に来るらしい」


「なんですって!?あの首斬り皇子が!?」


 ネペンテスの首斬り皇子と言えば、パトリックにも伝わってくるくらい有名な戦争狂だ。

 一年も膠着状態のアスタリア平原をネペンテスの皇帝が痺れを切らして送り込んできたのだろう。


 ネペンテス帝国第二皇子、その剣技は神技と言われ女子供でも首を切って落とす冷酷非情の首斬り皇子と噂される。

 そんな戦争狂を相手にしたら命がいくつあっても足りない。

 パトリックは、そう思い足ががくがくと震えだした。


「先輩……どうしましょう……死んじゃいますよ……」



「まぁ、待て……昨日の訳の分からん冊子を覚えてるか?」


「あんな訳の分からないもの信じてるんですか!?先輩!!」


「……お貴族様が平民を揶揄うためだけに貴重な紙を使って作るものか。あれは、本物だよ。」


「…………」


 パトリックは、先輩兵士がなにを言ってるのか理解出来なかった。

 ただ……


 ただ……死の足音が聞こえた気がして恐怖に身体が支配されていた。



「おっと、もう時間だ。行くぞ、パトリック」


 先輩兵士がそう言うと、パトリックの腕を掴んで隊列に加わり始めた。


 なんてことだ、最前列だ。


 パトリックは思った。


 これは本当に死ぬかもしれないと、震える手で槍を必死に掴みながら、そう思った。


 


 

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