真実の光
「ミチルよ、どうだね?」
「どうって、なにがっすか?」
顔が近すぎて 圧迫感が半端ない。
「私の顔は、美しいか?」
考えもしなかった質問に、俺は固まる。
女王婆さん、美しいとは真逆な立ち位置で、悪のばばぁ魔女顔面登録です、
とは言えない。
見たまんま言うと絶対傷つけてしまう。
しかし 俺のスキルの中に【お世辞】はないのだ。
『美しいです』なんて言うおうものなら、絶対微妙な空気になる。
「どうだ? 美しいかい? 」
グイグイ迫られ、目が泳ぐ。どうする?!
お若い頃は、さぞ お美しかったでしょうって返すか?
いや、これ今は美しくないを肯定しているようなもんだ。
可愛いはどうだ?
そうであっても、そうじゃなくても、言われて不快な言葉じゃない。
俺の周りの女性陣は 免罪符のように 何にでも
この【可愛い】を使ってる。可愛いなら、俺でも言えるはず。
俺は唾をグっと飲み込んで「可愛い」と言おうとしたが、
最初の一文字『か』すら発声出来ない。意外と正直者なんです。俺。
「フォッフォッフォ。ミチル、そなた、こう思ってるであろう?
『何言ってんだ? このばばぁ。美しい訳ねぇだろう、汚い醜いばばぁじゃねぇか。』
どうだ? 違うかぇ? 」
図星! さすが女王婆さん、鋭い。
俺が、返答に詰まっていると
「どれ・・・」と女王婆さんはローブの内側から
銀色のペンダントを取り出し俺の掌に乗せた。
「真ん中の石を回してみよ。」
俺は言われた通りにペンダントのど真ん中に鎮座する
ダイヤとおぼしき 大きな石を回してみる。
急に石が光り、その眩い光が俺の周りを包み込む。
「どうだ? 私は美しいか? 醜いか? 」
光に包まれている女王婆さんは、凛として高貴で、美しかった。
それどころか、廃墟でしかなかった、この広間も、
映画で見るソレと同じく、豪華で美しい。
「ミチル、それは真実の光。見えないモノを見える様に導く光。
本来の姿そのものを映し出す光だ。」
「真実の光・・・。見えないモノが、見える・・・。」
俺はハッとする。いや、ドキッの方が、近いか?
見えないモノが、見える! これ、これって、俺のイケナイ好奇心が爆走する。
光を放つペンダントを掲げ、俺はミューとニュイを探す。
こうなる事を察知してたのか、光の届く範囲にいない。
ガタン! と前方10メートル辺りで音!
「そこかっ! 」と走りだそうとする俺の頭に女王婆さんの杖が、振り下ろされる。
「えええい! 何をしとるかっ! 愚か者っ! 」
「あ・・・・あ・・・。」
光が小さくなって、すっと消える。
・・・やばいっす。ペンダントの石。落下により粉砕。