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その書物、危険?

 サージュの変なポーズは続いている。

吹き出しそうになるのを息を止めて堪える。

しかし、そろそろ限界。

どうしよう? 絶対、笑ってはイケナイ気がする。

ミュー、ニュイ何とかしろっ。


そんな俺の念が通じたのか


「か・カッコいい! 」


ミューが感嘆の声をあげる。


「キレテル・キレテルゥー。」


ニュイがクソダルそーに賞賛を贈る。


なんだ? 何が始まった?

新しい呪術か? 宗教か? キレテルってボディービルダーか?


「わっふぅう。」


奇声とも、気合とも、ため息とも、取れる様な言葉を発し

サージュは椅子にドカッと座った。

ひとしきり賛辞をあびて、ご満悦といったところか。


奇妙奇天烈摩訶不思議な光景過ぎて

ここに何しに来たかすら、俺は忘れそうになる。

この後、どーすんだ? この空気 どーすんだ?


「でな、その完全防衛システムに守られた【 国定文庫収蔵庫(ア レ) 】が

何故沈んだかのくだりに入るのだが、」


 普通に喋ってるよ。何事もなかった様に。

しかも、重要事項説明的な内容だよ。

摩訶不思議ポージングの後のこの変わりよう

ついて行けるのか、不安。


「ここまでは、わかるか? ミチル。」

「あ、はい。」


 『 ポージングまでは、よくわかりました。 』 って言いてぇ。



「質問はないか? ミチル。」

「ないです。」



 『 あのポージングと掛け声なんですか? 』 って聞きてえぇ。



 口で答える内容と、心で呟く内容は、違ってる事が有にあるけれども

ここまで違うと、心にクチが、つられそうで、少しヒヤヒヤする。


「そもそも防衛システムというのは、だな、」


サージュの顔が、グッと引き締まる。


「外からアレに入る事を防衛する為だけに作ったんじゃねぇのさ。」


ここからは国家機密扱いだ、他言無用だよ、と念を押し

サージュは話し出す。



「アレん中に入ってる文献、まっ書類の類なんかもあるんだが、

大きく分けて3つある。ミュー言ってみ。」


「はい、歴史のアレと、閲覧禁止のアレと、あと、あのアレです。」

 

 ここにきて、ミュー、アレアレ発言とかっ。しかも真顔で!

自分がアレしか言ってないの、わかってないんかっ?

自信もって答えてるけど、アレしか言ってないよっ?


「おお。そうだな。」


 つーじてるっ、通じてるよっオイっ。

何でわかるの? 何がわかるの? 

ひょっとしてアレって隠語? この国の常套用語?

納得して『うん、うん、』してるけど、アレでわかるなら

この国もう『 アレ 』しか言葉いらねぇよね?


「で、その中で一番危険なのは、ニュイ、なぁんだ?」

「童話。」


不貞腐れてるのか、えらくぶっきらぼうにニュイは答える。


「うん。その通り。ニュイは賢いな。そんなに照れるな。」


照れる? テレてんのかっ?

どう見ても悪態就く3秒前だぞ。


「へへへっ。」


ニュ・ニュイが笑ったっ?!

ポっとほっぺ赤くして、笑ったっ。

まじで、テレていたのかぁああ。


 俺の頭の中はくるくる回る。


 ―― ニュイ・ガ・ワラッタヨ

 ―― ヘヘヘ・ト・ワラッタヨ

 ―― ホッペタ・アカクシテ

 ―― テレテ・ワラッタヨ


もういい。こいつらの会話をまともに受けてたら、

俺は脳みそ崩壊する。さよなら右脳クン、左脳クンになっちまう。


 平常心、イチイチ、リアクション取らない。

まぁ取ってる訳じゃないけど。

落ち着こう。うん。落ち着こう。



「童話自体は、なーんも危険じゃないよ。でも何故、童話だけが

この国で、危険視さてるのか・・・わかるか? ミチル。」


わかるか?って聞かれても、と思いつつ

「童話が危険視された理由・・・。」と呟き考える。


ふと脳裏にミューとニュイの紙芝居が浮かぶ。


子ども達に読み聞かせてる絵と共に

ミューの言葉が、聞こえてくる。



 【言葉というツールを用いて、気持ちを伝える術を知っているのに、

  何故、伝えず、伝わらず、この様な事態が起こるのか、

  どうすれば、もっと心に伝える、心で感じられる様になるのか、

  初代王は悩み考えて、想いの豊かさ、心の豊かさを育てる事にしました。】


 【童話、おとぎ話です。人々の心に、愛と戒めを、思いやる精神を

  分かりやすく、そして少しでも長く残る様、色々な物語に託したのです。】




「童話に託す・・・。初代王が、童話に託した・・・。

童話に、何かした? 上手く言えないけど、こう、

童話に魔法みたいなもの懸けて、

それで、童話が力持った、つーか、強くなった、つーか。」


そこまで言って、俺はクチを紡いだ。


「どーした。ミチル。100点満点中の90点の答えだよ。

なんで、黙った? 」


サージュは、ぐっと身を乗り出し俺の目を見据えた。

 

 そして、


「この期に及んで、『 有り得ない話 』だと思ってんだろ。」


と挑発する様に笑った。








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