いざ 大図書館へ!
門扉から出た城外の風景は、ビックリする程なぁーんにも無かった。
あるのは、草野球チームが、リーグ戦いっぺんに戦えそうな位の
だだっ広い芝生の平原。で、ぽつ、ぽつと小高い丘。
その丘に続く、うねった道。あ、でもこれは砂利じゃなく、城郭と同じ石畳だ。
でも、他はなーんにも無い。
「風が気持ちいいですね。」
どこぞのアイドルかと見紛うほど、
ミューさん、風を纏うお姿可愛いです。
願わくば、もう少し強く風が下から吹いてくれれば
俺、幸せ絶頂期に入れそうです。
「おい、さっきも言ったけど、
ここから先どうなってるかわかんないんだから、
気を引き締めて、自分の身は自分で守れ。」
ニュイの奴、俺の絶頂への梯子外しやがった。
でも、仕方ない。ここは未知の土地だ。
今回はニュイの言う事、聞いておいてやろう。
「この先の丘を抜けてチョット行った所が、大図書館ですよ。」
細い白い指先が、指し示す先・・・って遠くね?
つか、この先の丘ってどの丘?
もう 見渡す限り芝平野と丘しかないんですけどっ。
「あのさ、準備とかいらないの? 」
「準備? さっきしましたよ? 」
「ほら、城下町に立ち寄って、食料を調達したりとかさ、」
「お腹すいたんですか?」
「そーじゃないけど、ずいぶん歩くみたいだからさ。」
「それ程じゃありませんよ。すぐですよ。」
あくまでも、【 近場 】を固持するおつもりでいらっしゃるのね、ミューさん。
俺は不安になった。だって、誇張表現、誇大広告のミューだもの。
城と婆さんで、体験済みですから俺。
絶対、この『 近い 』も、『チョット』も、そのまま受け取ると、えらい目に合う。
ここは、もう一人の現地民、ニュイに聞こう。
「おい、ニュイ、大図書館ってホントに近いのか? 」
「ミューは、何て言ってる? 」
「『すぐそこですよ』だ。」
「フン。じゃぁ、すぐそこだね。」
あーあ、聞くんじゃなかった。
もしかしたらニュイってミューの完全イエスマン?
ミューが右って言ったら、絶対右なんだろな。
ニュイは怪訝そうに俺の顔を見上げ、フンっと鼻を鳴らした。
白い石畳の道をしばらく歩くと、開けた十字路に出た。
城からここまで、一本道だったから、ここが最初の分岐点になる。
十字路の中央には、鉄製の黒い円柱が1本突き刺す様に立っている。
なんとなく周りの雰囲気に馴染んでないような気がして、
俺は違和感を覚えた。
俺が、ジロジロ見てるのに気付いたミューが
「これは道案内の標識ですよ。」と教えてくれた。
「変わってるね。 こんなの初めてみた。でも案内してないよね? 」
「してますよ。右に行くと城下町、左は寺院、まっすぐは大図書館。ね? 」
『ね? 』と笑顔で言われても、俺には黒い鉄円柱にしか見えない。
「指輪、」
ニュイが横に来て、顎をしゃくる。
「指輪? コレ? 」
「そう。それ。案内板にかざして。」
半信半疑でニュイの言う通り、左手の中指にはめた指輪をかざしてみる。
すぐさま、指輪と円柱が、共鳴するみたいに短く光を放ち
円柱から文字が浮かび上がってくる。
「何これ! すげぇ。」
いきなりの近未来感! 宇宙題材のアニメでありそうなヤツ!
俺のテンションは、跳ね上がる。
そんな俺を見て、ミューが冷静に
「何これって、案内標識ですよ。」 と素の表情で言った。




