説明の説明
少し手こずったけど、巾着袋の扱いにも慣れてきて、
ミューも、これなら大丈夫と言ってくれた。
後は、鳥籠の説明と仕事の詳しい内容の説明だけだな、と
思っていると、「そろそろ行こうか」 と
ニュイがミューに言っているのが聞こえた。
「行くって、ちょっと待って。今すぐ行くの? 」
「どうしました? 行くのがイヤになったのでしょうか? 」
不安げにミューが聞いてくる。
ニュイは、「は? 行くのがイヤだとか、ふざけてんの? 」 と
俺を睨んでくる。
「いや、そうじゃなくて、イヤとかじゃなくて、」
「だったら、何? ミューを困らせたいの? 」
「だから、そうじゃなくて、俺まだ説明、全部聞いてないから、」
「は? やっぱオマエ、バカだね。説明したじゃん。アレが全部だよ。」
「やはり、難しかったのですか? 説明に説明付けるべきでしたか?」
「いやいや、説明に説明付けたら、余計ややこしいでしょう。」
「じゃあ、何? 早く言えよ。」
正直、腹が立ったけど、聞くことは聞かなきゃと思い
ここは押さえて、まず鳥籠の事を聞いた。
「鳥籠、ですか?」
「何に使うの?とか、どうやって使うの?とか俺、まだ聞いてないからさ。」
「んーんと、ですねぇ。」
ミューは唇の端をトントンと叩く例の癖をしている。
俺の推測が正しければ、この癖をする時のミューは思考タイム突入時。
て、事は今、ミュー、か、考えてる? 何を?!
俺に説明する為に言葉を選び考えているのか、
それとも、まさか、知らないとか? いやいや、それはないだろう。
これも女王婆さんからの預かり物な訳だし、必要な物って言ってたし。
「それはですねぇ。」
「うん。」
「アレを、アレした時、アレするものです。」
キター! アレアレ発言! やっぱ知らないんだっ。
鳥籠について知らないんだっ!
もし、マジで知らないのなら、
このクソ重たい鳥籠、ここまで運んできた俺の労力が報われん。
俺は突っ込んで聞いてみる。
「アレって何? 」
「どれ? ですか? 」
「いや、今、ミューが言ったアレ。何? 」
「アレはアレですけど。フフフ。意味が解りませんよぉ。なぞなぞですか?
なぞなぞはちょっとぉ・・・苦手です。 」
ちげぇええ。なぞなぞなんかしてねぇわっ。
つか、知らんの確定じゃないかっ。
「鳥籠は使いますよ。ちゃんと。」
「だから、どうやって何に使うの? 」
「アレの時に。アレを、こう、アレするんです。」
アレの時って何の時?! アレって何?! 何少し恥じらってんのっ。
19歳の血気盛んな青少年に、恥じらいつつアレ連発すると
とんでもない内容が成立するよっ!
「だからぁ。」
進展ない状況を見かねてニュイが口を出す。
「だから、何? 」
「だから、重要な時に、」
「うん。」
「アレすんだよ。」
オマエもアレかぁぁいっ。
「どのアイテムも全部、母王様が、必要だと思ったから持たしてる。
使い時になれば、使える様になるわ。」
何かもっともらしい事、言ってるけど
結局、お前ら知らないって事ね。
まぁいいや。巾着に入ってるから、かさも重さも気にならんし。
次いこう、次。
「じゃあさ、仕事について聞きたいんだけど。具体的に何するの? 」
「悪影響を及ぼしているモノを捜して、見つけて排除。劇中で説明しただろ。」
「だから、それだよ。悪影響を及ぼすモノって何? 」
「それは・・・」
さっきまで強気だったニュイの口がこもる。
「それは、正直、私達にもわからないのです。
私もニュイも、体験した事のない事態なので。」
「前例とか無いの? 」
「私の知る限りは。母王様が、御統治なさっておられた時にも
この様な事はなかったと聞いてます。」
「手がかりになるもんもないの? 」
「わからないって言ってんじゃん。」
「排除するモノ事態わかんなくて、どうやって見つけるのさ。」
「知らないよっ。それが、オマエの仕事だろっ。」
「手がかりは、ありますよ。」
「あるの?! 」「あんのか?! 」
「え、ええ。手がかり、と言っても
私が考えただけなのですが。」
ミューが言うには、ここから左程遠くない場所に
王族が代々運営を担っている国営大図書館なる物があるらしい。
そこに、サージュって奴がいて、そいつに聞けば何かわかるかもって事だった。
「よし! のった! 行かなきゃわかんないなら、行こうぜ。なぁニュイ。」
「うん。行こう。ミュー。」
俺とニュイの盛り上がりに反してミューは
「ただ・・・」と言って顔を曇らせた。