アイテム
「では、次は、これ。導きの本です。どうぞ。」
ミューから手渡された【導きの本】は
表紙全体に、ペルシャ絨毯みたいな生地が張ってあって
へりやタイトルの部分は、金色の糸で縁取られて、いかにもって豪華さだ。
国語辞典位の厚みと、大きさがあるのに、見た目と違って随分と軽い。
「凄い本だなぁ。こんなの見たことない。中身は凄い事、書いてあるんだろうな。」
俺は興味深々で本を開けようとした。
「ダメですよ。」
ミューがスッと手を伸ばしてきて、俺の手から本を取り上げる。
「これは、導きの本ですから、導かれる時に本を開くのですよ。」
「導かれる時?」
俺の疑問にニュイが答える。
「オマエ的に言うと、仕事の時だな。」
「ああ、なるほど。」
「仕事先が決まったら、その本が教えてくれる。」
「バイトの情報誌みたいなものか。」
俺は一人合点が行って、うんうんと頷く。
「だから、本が教えてくれるまで、勝手に開くな。」
「どうやって教えてくれんの?」
「本が光って、それから、タイトルに行先が出る。」
「おおお。まさに導きの本だな。」
「まぁな。」
ニュイを褒めた訳でもないのに、何故かニュイはドヤ顔をしている。
ツッコミたかったけど、また殴られるのもヤだし、
何より、そんなニュイがちょっと可愛く見えた。
「ここまでは理解出来てますか? 次いきますね。」
理解出来てるかと聞いておいて、俺の返答は聞かないミューが
巾着を手に取り、微笑む。
「これ、可愛いでしょ。小さくってコロンっとした、まあるい形で。」
おお、天使の笑顔。ミューさん、やっぱ可愛すぎる!
ミューの笑顔にドキドキしながら、受け取った巾着袋を見る。
確かに、丸くって小さい。丈夫そうな厚手のコットン生地。
大きさは、俺の握りこぶし位か。色は生成り。シンプルで悪くない。
・・・って、これ何に使うんだ?
収納出来るモノって、ほぼほぼ、なくね?
「収納は、鳥籠の説明が終わってからにしましょ。その方が、いっぺんに済みます。」
「え? これに鳥籠いれるの? 」
「はい。収納する為の巾着袋ですから。では、鳥籠の説明です。」
そんなの当たり前でしょ・何、聞いてるの? と言わんばかりの二人の雰囲気に
俺は黙って、鳥籠の説明を受けることにした。
だって、魔法のアイテムだもん。なんだって収納出来るんだろうよ。
俺の世界の常識は【 魔法 】のカテゴリーで破壊されまくってく。
「この鳥籠の用途は、今回のお仕事に直結してます。だから、まず、お仕事のお話をします。」
急に深刻な顔つきになって、ミューが軽く咳ばらいをする。
「言葉の説明だけでは、理解しがたいと思いますから、
こんな形でお話致しますね。」
ミューはそう言って、白く華奢な指先を俺の額に当てた。
一瞬、天地が逆さまになった様な感覚に襲われ、ギュッと目を閉じる。
「ミチル、目を開けて。大丈夫。ミチル、目を開けて。今の状況を見て。」
ミューとは違う透明で落ち着いた声にそう言われたような気がして
俺は目を開けた。