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童話の世界で世直しします

 何にもない、だだっ広いだけの薄暗い空間を

ひたすら端っこを目指して歩いて来た。

どれくらい歩いたか、とか どこまで進んだか、とか 全くもってわからねぇ。

でも 歩く。ひたすら歩いている。


「おぉーい! 人いませんかぁー?! 誰かぁいませんかぁー?! 」


 でっかい声で喚いてみるが、声は果てない空間の暗闇に吸い込まれていくだけ。

もう何回も喚いて叫んでるけど コールアンドレスポンスなし。

 

「あぁーっ! もういい。疲れた。夢なら起きろ、俺! 」


目を覚ますならばショック療法だと、つねったり 叩いたり 

バーンとジャンプして地面にドーンっとダイブしたりしたけど、

痛いだけで全くもって変化なし。


 本来 楽天的で、お気楽極楽な俺でも この事態の異常さはわかる。

尋常じゃない。


「事態は異常 非常に異様 異常非常 尋常じゃなぁーい。デーン。」


うん。・・・・・・・尋常じゃない。


 しかし、だ。

歩かなきゃって思うわけ! 出口あるなら見つけなきゃって思うわけで。

空間つぅか箱の出口・EXITは 大体大概端っこにある訳で。

 

 だが、だ。

不安と恐怖に煽られながら ひたすら端っこを目指して歩いてきたけど、

時間の感覚も無くなって、上下左右の感覚も無くなって、

歩く意味もわからなくなって、精魂尽きた感覚に襲われて、その場にへたり込んで 

ついには座ってる事さえ出来なくなってしまった。


「俺、なにやってんだ? てか ここどこだよぉ。」


何もない、というか 床だけは存在している【この空間】に

何故 俺がいてるのか、俺に何が起きているのか、

冷静に順序だてて考えてみようと思ったのだが、上手く頭が働かない。


俺、疲れてんだなぁ。いっぱい歩いたもんなぁ。

こんなに歩いたのって、いつぶりだろう。中1の夏以来か?

隣の県のばぁちゃん家に自転車で行った帰り、途中でパンクしちゃって自転車押して歩いて帰ったっけ。

暑かったよなぁ。熱中症で死ぬかと思った。

あ、でも高校の冬山登山でコース間違えて 24時間遭難した時よかましか。

あれはきつかった。マジで死ぬって思ったな。

寒いし、腹減るし、野生動物との死闘つってもタヌキとの遭遇だけど。

ビビったよなぁ。熊と思ったもんなぁ。

無事保護されて家帰ったら、親父と兄ちゃん達にボコられて。

俺あん時、3回は死んだな。

・・・・・・俺、死ぬのかな。

 意識が、薄れてく。

もう真っ暗で何も見えない。



「・・・・し。も・・・・」


なんだろ? 声がする。


「あのぉー、もしもーし。」


女の子の声? 大好物系のアニ声だな。誰呼んでるんだろう?


「もし、もしもぉーし。生きてますよぉ。起きてください。もしもぉーし。」


俺を呼んでる? ゆっくりと意識が、戻ってくるのがわかる。

ぼやっとした視界に真っ白い靴を履いたの色白の足が見える。

大好物系アニ声の主は、この白い靴の子か。


「ダメなんじゃね? 諦めたって事さ。」


別方向からも女の子の声がする。うん。これも大好物系だ。


「そんなぁ。ダメだなんて、決めつけちゃいけません。」

「ダメだね。これだけ声かけてても、動きもしねぇじゃん。」

「うーん。あ! ツンツンしてみてはいかかでしょう? 体感的な刺激があれば、きっと。」


白い靴が、パタパタと走り、ぼやけた視界から消える。

ツンツンかぁ・・・。

ぼんやりとした意識の中で、俺は果てない妄想をする。

白くて細くて柔らかい指先が、俺のあんなとこ、こんなとこ、そんなとこまでツンツン・・・


ガッ!

いきなり背中に衝撃と それに伴った痛みが走る。

理由を確かめる暇もないまま 誰かに肩を踏まれ身動きが取れない。


「おい。オマエ、目ぇ覚ましてんなら動いた方がいいいぞ。」


この声は、さっき白い靴の君と会話してた

ツンデレボーイッシュ系と予測される女子の声だ。


「何かと妄想繰り広げてるんだろうけど、起きなきゃオマエ死ぬよ。」

「え? し・・死ぬって・・? 」

「ほれ、来たわ。」


 踏まれてた肩が、自由になる。

俺の目線は前方に向けられ すごい勢いで何かが走って来るのが見える。

これ漫画なら、ドドドドドドーっとか効果線付きの描き文字のあるやつだな、

なんて思ったのも束の間

白い靴の君が、巨大な丸太を抱え宙を舞い、俺に飛び込んできた。


「ツンツンですよっ! 」


ドスンだか、バコォンだか、どえらい音と共に 何かが突き刺されてくる。

紙一重で、俺はそれを避けれたが、今まで俺が、寝っころがってた場所に大きな穴が出現してる。


「なんじゃあああああ! 」

「ツンツンですよ。って目が覚めたのですね。」

「ツンツ・・・ってツンツンじゃねえええ! これ、死ぬやつだから!

 当たったら もう即死のヤツだから! 」

「うっせぇなぁ、当てってねぇんだから ぎゃぁぎゃぁ騒ぐな。」


必死の俺の訴えが、一掃されて終わる。

半泣き状態の俺なんぞ、綺麗に無視して何事も無かった様に白い靴の君の声が、

俺の頭の上に降ってくる。


「で? どうされますか? 受けますか? 案内頼みますか? 

受けるならアレなんで、アレですけど。」


・・・話が見えない。こいつ何言ってるんだろ?

案内? 受ける? アレがアレ?

困惑している俺をよそに、頭の上でアニ声の掛け合い会話がはじまった。


「もういいんじゃね? 面倒くさいから、放置の方向で。」

「あら、ダメですよ。ちゃんとお連れしなくては。」

「じゃあ、もう連れて行っちゃえばいいじゃん。」

「それもダメです。ちゃんと意思確認しなくては。」

「融通きかない! ミューは融通きかない! 」

「これは融通きかすとか、どうとかって話じゃありません。もう、ニュイは大雑把なんです! 」

「大雑把?! 大雑把! いい加減って事?! 」


 え? もしかして ふたり喧嘩勃発?

 止めなきゃって思って立ち上がった瞬間、

俺はクラっとして、倒れそうになって

俺の右手は、咄嗟に柔らかい何かに掴まって、つか、柔らかいモノを握って

おもいっきりビンタを食らって、その場に尻もちをついた。。

いや、不可抗力だから、わざとじゃないから、そう言い訳する猶予も無く、だ。

 

 ジンジンする頬を押さえつつ見上げると、

俺を殴ったであろうと思われる黒髪の女の子が、

プルプルと唇を震わせて立っていた。


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