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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

今年の恵方が下下下だった

作者: 譚織 蚕
掲載日:2022/02/02

ちなみに今年の恵方は北北西らしいです。

「えーっとスマホ、スマホ……」


 一人暮らし3年目。ようやく暮らしに余裕ができてきたので、3年目ぶりに恵方巻きを食べることにした。


 お願い事を考えて、奮発して買ったサーモンと胡瓜がメインの太巻きを手に大事なことを思い出す。


 恵方を調べないと。

 恵方巻きは恵方を向いて食べるからこそ恵方巻きなのである。


 たとえどこかの会社の陰謀だろうと、買ってしまったからには最後まで騙されていなければ。


「『今年の恵方』っと……」


 Go○gle先生に文字を打ち込み、今年の恵方が……


「っし、出た出た」


 やっぱり皆が検索しているのか、今年まで打った所で出てきた。


「ふむふむ。ってえ!?」


 そこに書かれていたのは、目を疑う文字。

 あまりにおかしいので、別のウェブページを開く。

 しかしそこにも、再び真面目くさって同じ文字が並んでいた。

 青いお鳥のTLも、ピンク背景にカメラアイコンのSNSでも皆同じことを言っている。

 あ、舞子のサラダ太巻き美味しそう。


 結局、私が調べられる範囲では全て同じ回答が書かれていた。

 おっと、調べる事にあまりに時間をかけすぎてサーモンがカピり出してる。ヤバイヤバイ。

 早く食べなきゃ。


 兎に角全員がこう言う『今年の恵方は下下下です』と。


 え、いや何? 下下下ってなに? 頭湧いとん?

 恵方って恵みの方角でしょ???


 ちなみに恵方が方角では無く向きなのは2年連続3回目らしい。私が居ない間に何があったんだ。前々回は2000年前らしいし。嘘乙。


 しかし世の中全てがそう言うなら仕方ない。


 醤油をしっかり付けて立ち上がる。

 太巻きをむんずと掴んで口にいれれば……


「むごっむぐっ」


 めっちゃ下を向いて食う。

 下を向きながら食う。


 嚥下きっつ。


(楽に就活できます様に。頼んだ。楽n……むがっ!)


 やばっ、喉詰まる。

 ぐがっ!!!


 でもやらなくちゃ。達成しなければ……


 恵方巻きを食べる時には一気に、黙って、恵方を向いて食べなければならないとされている。

 最初はバカにしていた恵方巻き文化だが、私はいつの間にか本気になっていた。


「むごむっぐ…… ぐっぶ……」


 サーモンが旨い。醤油ちょっとつけすぎたかな?


 あ、お願いお願い……


「ぐっ! まんむ……」


 やばい、2000円のなんて買わなきゃ良かった。太すぎる。デカすぎる。


 あっ、ヤバっ! 下の白い絨毯に醤油落ちた。最悪。


 よし、ようやく7割。


「んぐっ、ぎゃばっ、ざんぞ……」


 あっ、これヤバいかも知れない。

 スマホ時計をチラ見すると、食べ始めてから1分半が経っていた。

 あー、これヤバ。でも食べきらない……と……


「しゅうしょく……」


 口から太巻きが離れていく。ずっと見つめていた床に黒い丸太が弾み、それに向かって私が近づいて行くのが見えた。


『ここで速報です。今年恵方巻きを喉に詰まらせて死亡が確認された方が1000人を超えました。発見されていない方も多く、犠牲者はまだ増える模様です。皆さん、くれぐれも今年の恵方巻きは恵方を向かずに食べてください。繰り返します。速報です、速報です。今年~』

★★★★☆「面白かった!」「恵方が気になる!」という方は、是非下の星をタップして評価等宜しくお願いします。読者様に得はないですが、作者が小躍りします。

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