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52 進むべき道

 あかりを増やした牢内で、リュシエルは黒髪の娘の傍に座り込んでいた。ジェイが持ってきた丸薬を飲ませた娘の頬には、ほんのりと血色が戻ってきている。両手首にめられた魔力封じの枷の下に巻かれた包帯には、未だ血がにじんできている状態だ。気を失うようにして眠った娘が、時折、寝言でデューク、と呟く。あの偽者の名前だ。


 審問院長ウォーレスに報告をしに行っていたジェイが戻り、リュシエルは彼が娘の様子を見ている横顔を見つめた。感情を表に出さない、いつもの表情に見える。


「少しだけ……あの偽者に会わせてやるわけには……」


 そう口にすれば、振り向いたジェイの太い眉がひそめられた。


「それは出来ぬ」

「しかし――、」

「会わせてどうするつもりだ。死にかけの男に会わせ、ここまでしたのは自分だとでも言うのか?」


 ジェイの言葉に、リュシエルは言葉を失い両手を握り締めた。


「この娘は怒るぞ。今は大人しく我々に従っているため出来るだけ配慮しているが、歯向かわれては手荒な事をしてでも繋がねばならん。お前は、そうしたいのか?」

「いえ……」


 リュシエルは首を左右に振った。突き付けられた現実に、ついぞいだいたことのない感情が湧いていることを自覚する。この娘に同情してしまっているのだ。それと同時に、驚くべきことに、この娘に憎まれることを怖れてもいる。


「代わるか?」

「いえ、大丈夫です」


 ジェイの気遣いを、リュシエルはやんわりと拒否した。



* * *



 異端審問院から出された公開処刑の触れは、瞬く間に広まった。民の間では予言を怖れる者が多い印象だったが、アルシラを出て行こうとする者はいないようだ。それよりも久し振りに行われる魔女の公開処刑を心待ちにするような、そんな発言も見られる。何かあれば大主教様がなんとかしてくださると言っているのを耳にするたび、無知とは恐ろしいものだと思う。


 どうにもできないまま過ぎゆく日々に、エリュースは祈ることしかできなかった。

 タオは予想した通り、なんとかできないのかと言ってきたが、今回ばかりは難しいと答えるしかなかった。デュークラインを助け出すにしても、脱獄を成功させるための知識やコツが自分たちには無いのだ。事前に話しておいたサイルーシュがタオをなだめてくれたおかげで、なんとかタオはサイラスの元で従士として働いている。なんと言って宥めたのかは知らないが、タオが自棄やけを起こさなければそれでいい。


 こうして学校終わりに町を歩き回ることが、エリュースの日課になりつつあった。考え事をするにも良いし、何よりじっとしていられないのだ。アスプロはあの哀れな娘を見殺しにするのだろうか? あのような大主教に名を語られることを、良しとするのだろうか? 魔導士たちが崇拝するマヴロスは、ウィヒトに与えた予言がまた打破されるのを、黙って観ているのだろうか? それとも神たちはこの地で行われる騒ぎにはもう無関心なのだろうか――。


「――あれ? 不良司祭見習いじゃないか」


 ふいに背後から掛かった知った声に、エリュースは振り返った。大聖堂の丘から流れ落ちる細い滝の傍で、スバルが立っている。滝の音にも気付かなかったほど、ぼんやりしすぎていたようだ。相変わらず軽装の旅装束のスバルが、片手を振りながら近付いてくる。


「どしたのさ、難しそうな顔をして。お腹でも痛いのかい?」


 明るい笑顔で話し掛けてくるスバルに、エリュースは片手で頭を搔き、溜息を吐いた。


「お前は今までどこへ行ってたんだ?」

「サウスターだよ」

「サウスター?」


 聞き覚えはあるが記憶がはっきりしない名前に聞き返すと、スバルが口角を上げてうなずいた。


「うん、カークモンド公爵領の港町だよ」

「……なんでそんな所に?」

「いやあ、このアルシラも大きな都だけど、サウスターも大きいって聞いていたから、一度は目にしておきたいなぁって。確かに、アルシラとは全然違ったよ。ここは綺麗にビシッっと決まっているけど、サウスターはもっとごちゃごちゃしていて、その分活気があって。異国の船なんかもいっぱい来て、珍しい生き物も売ってるんだよ」


 よほど楽しかったのか、次から次へと言葉をつむぎ、スバルが笑う。そんなスバルに、エリュースは遠慮なく口を開いた。

 

「だから、どうして、そんな所へ用事があったんだよ?」

「だから、さっきも言ったじゃないか。僕が思うに、あの白髭しろひげの賢者ももっといろんな場所へ行った方がいいよ。本も色々教えてくれるだろうけどさ、やっぱり直接自分の目で見るのって全然違うんだよねぇ」


 これには、エリュースも同意できる点があった。大聖堂騎士ダドリーは、もちろん忙しく気軽に旅ができる立場にはいないが、直接色々な知識を吸収した方がもっと優れた賢者になれるはずだからだ。昔は本人もそうしたい気持ちはあるようだったが、年を取った今では積極的にそういう感じはしない。


「……そんな事より、カイの事を聞いたか?」


 声を潜めて問えば、スバルが特に表情に変化を見せずに頷いた。

 

「うん、聞いた聞いた。うるわしのお姫様が、今じゃ一転、予言の魔女扱いだからね。いやあ、目まぐるしく変わるもんだねぇ。でも、思っていたより、ずっと早かったね」

「ちょ、ちょっと待てよ」


 スバルの口から出た不穏な言葉に、エリュースは彼に詰め寄った。


「お前、こういうことが起きることを知っていたのか?」

「いいや? いくら僕でも、麗しのお姫様が連れていかれるのが分かっていたら、事前に警告してあげるよ。……ま、警告したところで逃げられないんだけど」

「……でも、さっき、『思っていたより、ずっと早かった』って言ったろ」

「うん」

「いや、『うん』じゃないだろ。どういう意味なんだよ」


 はぐらかされているような会話に少し苛立ちを覚えるも、エリュースは彼の答えの方が気になっていた。うながせば、スバルの目が細まる。

 

「ああ、そういう事か。……その前にさ、人の寿命ってどれくらい?」

「……五十から六十年くらいかな」


 エリュースは町の人々を想像し、答えた。


「そっか。だったら、あと五年しない内に、あの悪い人は寿命を迎えるでしょ。そうなったら、事態は変わる。まあ、そうなる前に精力が減退するだろうから、麗しのお姫様に興味を失くして、処分しちゃうかもしれないけどね」

「……そういう事か。だったら、さっきの寿命はもっと先延ばしだ。五、六十年って、一般の人の寿命だから。良い暮らしをしている奴はもっとのさばるだろうな」

「あっ、そ。いずれにしても、『いつまでも今のまま』なんて続かないんだよ。……だけどさぁ、こんなに早く変わっちゃうなんて、思ってなかったなぁ」


 残念そうにスバルが溜息を吐いた。

 エリュースは、そんなスバルを見ながら一つの希望を見出していた。手の中に無かった駒が、意図せず転がり込んで来たのだ。

 

「ここで会ったのも世界神ソラドゥーイルのお導きだ。ちょっと、力を貸してくれないか? いや、知恵でいい」

「ん? 何?」

「実は、デュークラインが捕まっている」

「まあ、そうだろうね。麗しのお姫様がああなっていたら、ほんとなら黒騎士さんは『命に代えても護る!』ってなってるだろうからさ」


 想像しているかのように、スバルが少し笑んだ。

 

「彼は今、異端審問院の地下牢にいる。正直、危ない状態なんだ」

「うん、地下牢に入った者はだいたいそうなるよ」


 知っている、というように言ったスバルの表情に、僅かな陰りが生じる。エリュースはそれに気付いたが、えて言及はしなかった。


「……俺は、彼がどこに捕らえられているか、道順を知っている。タオと協力すれば、なんとか彼だけでも助けられないかって考えているんだ。お前はそういう忍び込むのにけていそうだから、潜入のコツを教えてくれないか? 特にタオはしっかり教えておかないとヘマしそうだからな。あと、良ければ侵入しやすいように陽動をしてくれれば、助かる」

「陽動って――ペエの小剣ダガーの時みたいなの?」


 エリュースは自分の頭の回転の早さには自信があった。ダドリーに出会っていなければ、会った人の中で一番だとおごっていたかもしれない。そういう教えとなった意味でも、エリュースはダドリーを師として尊敬している。この自負があるエリュースにしても、スバルとの会話は、頭を目まぐるしく回転させなければ付いていけないところがあった。スバルの話は、本人にはそのつもりはないかもしれないが、あちらこちらへ飛ぶ――本人の存在と似た性質がある――からだ。今回も、『ペエの小剣ダガー』が何の意味を持つのか、すぐにはわからなかった。ペエの小剣ダガーといえば、聖人ペエの聖遺物アーティファクトだ。その聖遺物アーティファクトは、今年の収穫祭で一般に公開された。そう連想し、ようやくエリュースはスバルが伝えようとした、と思われる意図に追いつく。


「――ああ、そうか。そういえば、あの時も小火ぼや騒ぎがあった――」


 そう言ってから、エリュースの頭に疑問が浮かんだ。まさか、あの小火ぼや騒ぎはお前がやったのか? と思う。しかしそれを言葉として口から出す前に、エリュースはこの考えを捨てた。スバルがそんな危険な橋――故意に火をけた犯人はきっと重い罪に問われる――を渡ったところで、得られる物がないからだ。悪戯いたずらにしては――いや悪戯ならスバルがしそうな事だが、さすがにそこまで命知らずの馬鹿とは思えなかった。むしろ、スバルは賢いと思う。……怖ろしいことに。


「ん? どうしたの?」

「いや、何でもない。協力してくれるか?」

「うん、いいけど――あの堅物騎士見習いくんに教えるのは難しいだろうね。コツなんて口で言ったところで、すぐに身に着くものじゃないし」

「やっぱり難しいか……」

「うん、だから、僕に道順教えてよ」


 エリュースは、また、スバルの発言に追いつくのにしばらくのを必要とした。


「……協力してくれるのか? お前自身が?」

「うん。じゃないと無理でしょ。牢に閉じ込められた黒騎士さんを助け出すなんて」

「危険だぞ。見つかれば確実に殺される」

「うん。だけど、まあ、見つからないから大丈夫」


 あっけからんと言ってのけたスバルに、エリュースは驚いた。うそぶいているようにも感じられない。

 

「そうなのか?」

「うん。人って大抵、上を見ないからね。だから、天井近くに張り付いていたらバレないんだよねぇ」

「張り付くって……」

「うん。こう、ピョンピョンって。あとは小剣ダガーで引っ掛けていたら、しばらく持つよ。もしバレちゃっても、飛び掛かれるからこっちが有利だし」


 それは、先日、タオが異端審問官を制した件で体験済みだ。そもそもタオに上から飛び掛からせようという発想は、スバルから思い付いたことだった。森で盗賊を倒した戦い方や、小妖精ピクシーの花畑へ至る途中で突然木の上からるように現れたのを見たからこそ、上から攻撃するという案を思い付いたのだ。


「でもさあ……」


 スバルが曇り空を仰いだ。


「地下牢って天井低いでしょ。そうなると、さすがに張り付いていてもバレるから、そうなると見張りを殺すしかない。それでもいいの?」


 エリュースは、言葉の小剣ダガーを喉元に突きつけられた気分になった。答えられないでいると、スバルが続ける。


「見張りってのはどこもそうだけど、命令でそこにいるだけなんだよねぇ。殺されて当然の悪い奴かもしれないけど、そうじゃないかもしれない。家に帰れば、妻と子供や年老いた親が待っているかもしれない。見張りを殺すことで、その家族たちも路頭ろとうに――」

せよ!」


 エリュースはスバルの言葉を止めていた。スバルの言うことを、エリュースは理解している。しているが、いざ目の前にし、その重さにおののいたのだ。


 言葉を止めたスバルがじっと見つめてくるのを、エリュースは受け止めていた。スバルの口元は笑ったように両端が少し上がっていたが、その目は笑っていない。真剣な眼差まなざしで、エリュースの目の色をうかがっているように見える。しばらくし、スバルの微笑が少し深くなった。

 

 エリュースは分かっていた。

 若い娘を塔に閉じ込め、更には拷問ごうもんしている男の正体が大主教メルヴィンだと知った時、エリュースは吐き気がするほどの嫌悪けんおを覚えた。世の人が聖人とあがめている存在が、裏でどす黒い欲望を満たすために若い娘を犠牲にしていることが許せなかった。だが、あまりにも大きな相手であること、それにタオたちの身を案じ、一度は手を引こうとしたのだ。しかし、それがたとえ予言の娘であっても、大主教の悪行は正当化すべきではないとエリュースは思う。血を流し倒れているカイをの当たりにしたあの時、この胸に強い嘆きと怒りが生まれた。それは今も、エリュースの中でくすぶっている。いつの日かメルヴィンを大主教の座から追い落とすのは、今やエリュースの秘かな野望の一つなのだ。


 その過程で自分が汚れてはいけないと、エリュースは思っていた。自身が新たなメルヴィンとなることは、正しい道とは言えない。しかし、その道が汚れずに歩けないものだという現実は、徐々に実感させられつつあった。


 タオやルクと共に異端審問官を襲い、結界士のシアンを助けた時も、一線を踏み越える瀬戸際だった。あの時、儀侍ぎじ兵が武装放棄をしなければ、先に制した異端審問官を警告通り殺すしかなかっただろう。殺さずに縛れたのは運が良かったからだ。


 あの時のように、スバルにも殺さずにことを運べないかを頼むのは違う(・・)。可能性を確かめる意味で、無理とは分かりつつえて聞くのは、道としては正しいのだろう。しかしそれは、自分は汚れた道を歩きたくない、というままから生まれる行動だ。自分の心が汚れたくないからといって、スバルの命を軽視するのは間違っている。異端審問官を倒した時とはいささか事情が違うのだ。あの時は、周囲に増援がいなかったため、相手に降伏をうながす機会があった。対して異端審問院の地下では、少し騒がれただけで多くの儀侍ぎじ兵がやって来るだろう。囚人を解放するためには、見張りを問答無用で殺すしかない。


 結界士のシアンを助ける際に『上手うまくいかなければ異端審問官を殺す』ことをエリュースが迷わなかったのは、抵抗しようとした異端審問官を殺さなければシアンが殺されると考えたからだ。今回も、見張りを殺してでも助け出さなければ、デュークラインは殺されるだろう。しかし、あのデュークラインは、無実かもしれない見張りを殺してまでも助け出すべき存在なのだろうか――。その確信が、エリュースには弱かった。


「実は……デュークラインはさ、貴族のデルバートと同じ格好をしていた偽者なんだ。魔法で姿を似せた人間か、あるいは人に化けられる魔物かもしれない」

「あるいはその両方か、だね」

「……驚かないんだな」


 平静さを崩さないスバルに、エリュースは眉をひそめた。


「うん。だって、胡散臭うさんくさい奴だなーって思ってたからね」

「……」


 スバルの物言いに黙ると、スバルがにやりと片方の口角を上げた。


「あ、お前もそうだろって思ってるね? うん、そうだね。でも、逆に胡散臭い奴だから、同じにおいのする奴を嗅ぎ分けやすいんだよ。だから、僕は黒騎士さんを、魔法を掛けられて人の姿をしている魔物、だと思うよ。……で、どうするの? その魔物を救い出すために、無実の人を殺すのはいいのかな?」


 少し話を逸らすことで喉元に突きつけられた小剣ダガーを下げられたと思っていたが、スバルはくるりと手をひらめかせたように、またエリュースの喉元に言葉の小剣ダガーを突きつけてきた。しかしその時には、エリュースの覚悟は決まっていた。


「ああ」


 進むべき道が光の当たる綺麗な道ではない、と受け入れた覚悟だった。これで、もはや道義的には大主教メルヴィンを非難する資格はないだろう。直接的ではなくとも、エリュースの手は無実の人の血で汚れるからだ。しかし、そうなったとしても、エリュースはメルヴィンを許してはおけなかった。今の社会もそうだ。危険性はあるのかもしれないが、無害に生きようと心掛けている娘を引きずり出し、火炙ひあぶりにするのは間違っている。傍観すればこの手は汚れないだろうが、汚れるかどうかという判断だけで進むべき道を決めてはいけないのだと思う。


 タオのために、さきを行かねばならないという思いもあった。タオには、こんな覚悟はさせられない。いや、純真なタオでさえ、このままいけば彼が信じて進む道は無実の人の血で汚れるのを避けられないだろう。しかし、その現実に直面するのは今すぐでなくても良い。汚れるのなら、タオがもう少し成長し、社会と自身のありように矛盾を感じ、悩んでから、であるべきだ。その時間を稼ぐために、エリュースは進んで汚れるつもりだった。


「ふーん。やっぱり、白髭の賢者の言うとおり、君は賢いね。利用されないよう注意しなきゃなぁ」

「利用ならもうしてるだろ。でも、本当にいいのか? かなり危険な橋を渡ることになるぞ」

「命の危険があるのは、荒野に出ればいつもそうなんだから、一緒だよ。まあ、大丈夫だって。今までもうまく(・・・)転がって来てるんだから」


 今回もエリュースは、スバルの言葉を理解できなかった。カイが魔女として火炙りにされる日が迫り、デュークラインが地下牢で果てようとしているのだ。とても、上手うまく転がっているとは思えない。だが、スバルがそう感じるには何か理由があるのだろうと、改めて考える。すると、結界を解いて塔から出してあげようと考えていたカイの状態については、確かに目指していた結果が得られていることに気付いた。このように、スバルは物事の良い面だけに注目し、前向きに考えているのかもしれない。あるいは、スバルと初めて協力した、小妖精ピクシーの花畑の時の冒険をしているのかもしれない。いずれにせよ、くよくよしていても始まらない事は確かだ。


 その時、鐘の音が鳴った。大聖堂の鐘が、五鐘ごしょうの時を知らせていくのだ。


 ふと見ると、スバルが目を閉じ、首を少し傾けながら、その鐘の音に聞き入っていた。エリュースにとっては日常の音なので気にならなかったが、長旅から帰った者には安心させられる音色なのかもしれない。


「うーん、今日も良い音色だね」


 目を開けたスバルが、エリュースと目が合うと、そう言って片目を閉じ笑みを浮かべた。また分からない奴だと思ったエリュースは、もしかするとダドリーはスバルを理解できるのかもしれないと考えた。が、すぐにもう一つの可能性が高いと考えを改める。ダドリーは自分が理解できない存在として、スバルを楽しんでいるのだろう。


「じゃあ、手付金代わりに、今晩食事をおごってよ。僕、こう見えてもめちゃくちゃ食べるからさ、腹いっぱいじゃなくても八分目くらいにはなれるといいなぁ」

「ちっ、どうするかなー」


 いくら頭の回転が早くとも、無い金を湧いて来させられるわけではない。エリュースは誰に頼ってこの場を乗り切るべきか、自慢の頭をきりきりと回し始めた。




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