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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

バベルができたので ~最終日だからちゃんと言わなきゃです~

※シナリオ形式です。読みにくかったらごめんなさい。 それからバッドエンド苦手な人もごめんなさい。


○ 黒画面に浮かぶ古文書


――古に天衝く塔ありき。その塔なる鐘響きし時、その者彼の国に還り渡りぬ


王立古文書館で見つけた書物の一篇だ。

まあ簡単に言ってしまうと、「すっげー高い塔を作って、鐘を据え付けて、それ鳴らしたら異世界から元の世界に帰れるよ」ってことだ。俺の推測だけど。




○ バベルの塔建設現場・屋上(夕)


ユウト「よし、っと!」


やっとの思いで吊り下げた鐘を見上げる。

明日には、宮廷魔術師の偉い人が来て、鐘の真下に魔法陣を描いてくれる予定だ。

それでこの塔(俺はバベルと呼んでいる)は完成する。

そしてその後、鐘を鳴らせば俺はめでたく元の世界に……でもま、それは明日の話だ。


ユウト「レヴィアちゃーん! んっ?」




○ 置き手紙と差し入れのお菓子(夕)


『大事な用事ができたので帰ります。レヴィア』




○ もとの屋上(夕)


このバベルは俺がたったひとりで建てはじめたものだ。

だけど気づいたらそんな俺を手伝ってくれる女の子がいた。

それがレヴィアだ。


そして、なんでなのか理由は分からないのだが、俺のことを慕ってくれている。

外見は……まあ、そこそこ可愛い。




○ (回想)にこやかにほほ笑みかけるレヴィア




○ もとの屋上(夕)


いや、控えめに言ってものすごく可愛い。

だからと言って付き合っているとか、そんなんではない。

そもそも俺には、女の子への告白の仕方が分からない。

されたことも……ない。

元の世界に帰ることに躊躇はないけど、レヴィアの笑顔がもう見られないということは、さすがに心残りだと思っている。




○ 宿屋・フロント(夜)


主人「ユウトさん、お客さん来てるよ」


宿の主人がアゴで指す先には、陰になってよく見えないが、女の子らしき人物が座っていた。


主人「ユウトさんもすみに置けないねぇ」

主人の下衆い笑いを黙殺して、女の子の元へと歩いて行く。


座っていたのはレヴィアだった。

何か思いつめた表情で俯いている。


ユウト「レヴィアちゃん?」

レヴィア「あっ……」


俺と目が合うなり、顔を紅潮させる。

そして再び俯いてしまうレヴィア。


ユウト「心配したよ、いなくなっちゃうから」

レヴィア「ごっ、ごめんなさい」

ユウト「それで、大事な用事とかいうのは終わったの?」

レヴィア「はいっ! あ、いや、まだ……」

ユウト「俺のトコ来てる場合じゃないんじゃないの?」

レヴィア「はいっ! あっ、ち、違くて……」


全力でぶんぶんと首を振るレヴィア。


レヴィア「ユウトさん、明日帰っちゃうんですよね、元の世界に」

ユウト「古文書どおりならね」

レヴィア「きょ、今日は私……、その……、ユウトさんに大切なお話があってきました」

ユウト「明日でもよかったのに」

レヴィア「ダメなんです! 明日バタバタしてるうちにユウトさんが異世界に帰っちゃったら私、死んでも死に切れませんからっ!」


レヴィアが真剣な眼差しで見つめてくる。


レヴィア「だから、ユウトさんのお部屋に行ってもいいですか?」

ユウト「えっ……!?」


俺の手を取って部屋へと引っ張っていこうとするレヴィア。

それをなんとか押しとどめる。


ユウト「ま、まずいよ……さすがに、ほら」


ニタニタと笑いながらこっちを見ている宿屋の主人。


レヴィア「わっ、私ったら! ごごご、ごめんなさいっ!」


真っ赤な顔をさらに真っ赤にしてあわあわするレヴィア。

ユウト「じゃあさ……そうだ。ちょっと外歩こうよ」

レヴィア「は、はいっ!」


俺はレヴィアを夜の街へと連れ出した。




○ 街(夜)


レヴィア「……」

ユウト「……」


宿屋の時とは一転、無口になるレヴィア。

残念ながら俺は、こういう時にかけてあげる言葉を持ち合わせていない。

しかし、さすがの俺でも、うすうすは気づいている。

レヴィアが俺に告白しようとしてくれてるんじゃないかということに。

今日はお別れ前夜なのだ。


レヴィア「……正直に言いますね。ええっと……私、まだ決心つかないんです」

ユウト「そもそも、俺でいいの?」

レヴィア「決まってるじゃないですか、そんなの」

ユウト「でもだって、男なら他に……」

レヴィア「やっと見つけたんです。すっごく探しました。そして確信したんです。この人で間違いないって」

ユウト「そうなんだ……」


俺は冷静を装って答えたが、実はすごく動揺している。

この子を残して帰っていいのか?

レヴィアは俺のコトが好きなんだぞ。

そんな事ばかりが頭の中を駆け回って、気のきいた言葉が出てこない。


レヴィア「明日帰っちゃうんですよね……」


潤んだ瞳で見上げてくるレヴィア。


ユウト(M)「うわぁ! ますます決心が揺らぐ!」

レヴィア「うんっ! よし! 決めた! ユウトさんっ!」

ユウト「は、はいっ!」

レヴィア「私、ちゃんとやり遂げますっ!」


よしっ! 気合を入れるレヴィア。

その瞬間……


ふぁさっ!


レヴィアの背中から翼がが生えた。

レヴィア自身も気づいたようで……


レヴィア「きゃっ!」


地面にうずくまってしまうレヴィア。


レヴィア「見ないでっ! こっち見ないでくださいっ!」


ユウト(M)「見ないでって言われても……」


レヴィアは背中をこちらに向けてうずくまっている。

だからむしろ翼は俺の目の前に。

けどここは異世界だ。翼が生えた異種族がいたっていい。

その時、俺の脳裏にふとある情景が思い浮かんだ……




○ 回想・幼いヴァンパイアを庇いながらドラゴンと対峙するユウト


幼い女の子のヴァンパイア。

その目が不安に押しつぶされそうになっていた。

その小さな手は、必死に俺の服の裾を掴んでいる。


ユウト(M)「いくらヴァンパイアだからって、こんな年端もいかない子を……」


ユウト「大丈夫だから」

俺はそっとその手を離すと、剣を振りかざしドラゴンへと斬りかかっていったのだった。




○ 元の街(夜)


恥ずかしそうに立ち上がるレヴィア。


レヴィア「憶えてませんか? ヴァンパイアを助けてあげたこと」

ユウト「俺も今それを思い出してた」

レヴィア「憶えててくれたんですね? よかった……」


安堵のため息をつくレヴィア。

なんでこんな俺のことを、って思ってたけど。

なるほど、それで俺のことを……


ユウト「あれってまだ、異世界来て間もないころだったんだよね」


今でも憶えている。ドラゴンの首を斬り落としたあの時の感触を。


レヴィア「私、あの日のことずっと忘れてません」

ユウト「俺も倒せるか自信なくてさ。でもよかったよ。くっそ弱いドラゴンで」

レヴィア「くそ弱い……」

ユウト「そう、ザコ弱レベル」


レヴィアが泣き出しそうな目で俺の目を見つめている。


レヴィア「……ユウトさんが倒したドラゴン。私のお兄ちゃんだったんです」

ユウト「なっ!」

レヴィア「だから困るんです! 勝手に元の世界に逃げ帰られちゃ!」


そして一転、にこやかに笑うレヴィア。


レヴィア「ふぅ……ちゃんと言えました。えへん、です。えへへ」

ユウト「……まじか」

レヴィア「では、覚悟してくださいっ!」


ごごごごご


ユウト「えっ?!」


気付いた時、目の前にはドラゴンになったレヴィアが翼を大きく広げていて……

直後、俺の視界はレヴィアが吐く真っ赤な炎に包まれた。


(おわり)


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