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ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか  作者: タカハシあん


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56 ミューリー

 しばし進むと、集落が見えて来た。


 牧場での仕事の内容は聞いてたが、牧場の様子はまったく聞いてないので、集落がなぜあるかはわからなかった。


「リン。あれ」


 リリーが指差す方向を見ると、おっちゃんが氷漬けにされていた。なんのアートだ?


「そう言う冗談、悪趣味よ」


 すみませんね。なんせ悪趣味な世界に生きてるもんで、毒されちゃってるんですよ。


 しかし、人が氷漬けにされるって漫画かよ。どんな超理論が働いてんだよ? 魔法、えげつないわ~。


 生きてるのと、>っと鑑定する。


「……やっぱり、死んでるか……」


 そこは漫画じゃないんだな。ほんと、悪趣味だぜ。


 集落に近づくにつれ、氷漬けの人が増えていく。老若男女、構わずだ。


 前世だったら世界を震撼させる出来事だろうが、この世界ではよくある日常だ。毎日のように誰かが死んでいく。改めてクソったれな世界で生きてるんだと教えられるぜ……。


「ミューリー! ミューリーミューリー! 死んじゃイヤだー!」


 と、ねーちゃんの声。どうした? と見れば、集落の住人だろう人たちに囲まれ、氷漬けの少女を抱いて叫んでいた。


 片田舎の中心で愛とか小っ恥ずかしいことを叫んじゃう物語の最終回かな? 


「捻くれないの」


 この世界で素直に生きられる秘訣を聞きたいもんだ。


 氷漬けにされてるのはうちに来たねーちゃんだ。ってことは、この子がねーちゃんの友達か。これまで知らなかったことに突っ込みを入れないでくれると助かります。


「……ミューリー……」


 ねーちゃんを人らしくしてくれた少女……ん? あれ? このねーちゃんからオレの魔力を感じるんやけど? >っと鑑定。


「……ねー。まだ生きてる」


 カウントダウン一桁だけど。

 

「リン、助けて!」


 即決即断できるねーちゃんがステキです。


 氷漬けにされたのはハーケンハイローの魔法。魔法と言うことは魔力。ならば美味しくいただきましょう。はいっとな。


 氷がなくなったら元気にな~れと治癒魔法。ミューリーちゃんのお顔に赤みがさして来ました。


「あとは体を温かくすればいい」


「リン、ありがとう!」


 お礼を言える子に育って妹として嬉しいよ。


 涙を拭ったねーちゃんは、ミューリーちゃんを抱き上げると、どこかへと駆けていってしまった。


 どれ。オレもと思ったら、ハリュシュと何人かがオレを囲んだ。どうした!?

 

「近づくな!」


 各自弓矢を構えて集落の者たちを威嚇する。


「ま、待ってくれ! おれたちなにもしない! ただ、助けて欲しいだけだ!」


「依頼なら受ける」


「わたしたちは、グランディール傭兵団だ。仕事なら受けると言っている。代表者は誰かしら?」


 ハリュシュもオレの言ってることを理解して来たもんだ。リン、感動。


「い、依頼ではなく、助けて欲しいのだが……」


「それは、わたしたちにタダ働きをしろと言ってるのかしら?」


 虐げられているからか、ハリュシュの口調は堅く、他のエルフたちの表情が堅かった。


「決めるなら早く。命が消える前に」


 そう言ってねーちゃんが駆けていったほうへと向かった。


 ねーちゃんの魔力残像を追うと、集落を出て五十メートルくらい離れた小屋についた。


 ……集落から外れてるのは、下層のねーちゃんなのかな……?


「一応、陣を敷いておいて」


 野営訓練はしているので問題はなかろう。


「わかったわ」


 任せて小屋にお邪魔します。


 中は以前の我が家よりボロいが、汚らしさはない。物も整理されていて居心地がよかった。


 藁にシーツを敷かれた寝床にミューリーちゃんが寝かされ、心配そうに見守るばーちゃんとねーちゃん。そして、ピレネー犬っぽい生き物がいた。


 ……犬、だよな……?


 >っと鑑定してみると、グレーダーと言う牧羊犬と出た。この世界、そう言うのもいるんやね。


「誰だい?」


 ほっかぶりのばーちゃんが顔を上げ、こちらを見た。


 うん? もしかしてこのばーちゃん、目が見えないのか?


「ねーの妹。リン」


「おや。あんたがリンちゃんかい。いつもありがとうね」


 ん? オレ、なんかしてたのか?


 改めて小屋の中を見ると、うちにあったもので占められていた。


 そう言えば、ねーちゃんがあれが欲しいこれが欲しいと言ってたのはこれか。練習用だったから気にもしなかったわ。


「うん」


 人の感謝は素直にもらっておく。


「リン。ミューリーは大丈夫なんだよね?」


「大丈夫。今は精神疲労で眠ってるだけ。それよりなぜ死ななかったのが不思議」


 それにオレの魔力を感じるのも気になる。なんなんだ?


「たぶん、太陽行火と下着のお陰だと思う」


 それでか。死ななかったのは。って、下着や太陽行火まで渡してたのか。みつぐちゃんか!


 やたら下着を欲しがったのはそのためか。見えないところのお洒落に目覚めたのかと思ってたよ。


 ちなみにうちには自動洗濯具があり、洗い、乾燥、折り畳みが可能です。


「……そう言うのはちゃんと言って……」


 みつぐなとは言わないが、親のサイフから黙って金を抜くようなことは止めなさい。みっともないから。


「……ごめん。ちゃんと言うよ……」


 まったく、そう言う素直さがあるんだから。


「なら、いい。目覚めたときのために食事を作る」


 ねーちゃんの大切な人だ。儲け度外視でやったるよ。


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