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ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか  作者: タカハシあん


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25 人攫い

「なによこれ!?」


 外でねーちゃんが叫んでいる。


 只今絶賛引きこもり中なので、確かめに出たりはしません。


「リン! どうなってるの!」


 すっかり女口調になったお姉様。三つ子の魂百まで、じゃなくてよかったよ。人の中で育つから人になるんだね。


「知らない」


 素っ気なく返す。


「知らないじゃないでしょう! あんたがやったことでしょうが!」


 ハイ、まったくもって反論できぬ。わたしめのやったことです。だが、後悔はせぬ!


「いいから出て来い!」


 人間離れして来たねーちゃんだが、防御力を高めたばかりのローブを剥がすことはできない。シルバーで試したばかりだからな。


「まったく、あんたは変なもんばっかり作るんだから! 知らない!」


 しばらく挑んでいたが、無理と悟ったのか剥がすのを止めてしまった。


 今度は油断して出て来るのを待ち構えているのだろう。ねーちゃんの性格などお見通しよ。そんな手には乗らんがな。


 今日はやる気なし。フード内に閉じ籠もります。


「リン。外に獣人が集まってるけど、どうしたの?」


 仕事を終えたかーちゃんが帰宅。閉じ籠もってるけど、お帰りなさい。お仕事ご苦労様です。


「ナナリ、どうしたの?」


「知らないよ。帰って来たらリンが閉じ籠もってたんだ」


 人は変われるものとは言うが、今までかーちゃんを避けていたねーちゃんも最近ではかーちゃんのことを受け入れ、体を売っていたこともしょうがないと思ってる節がある。


 そんなねーちゃんの成長に涙が零れる。二人に見せられないのが悲しいけど。


「はぁ~。物わかりのいい子だと思ってたけど、やっぱり子どもだったのね」


 前世の記憶を持って生まれて赤ん坊の真似をしろとか拷問である。一日で死ねるわ。


 じゃあ、これはなによ?


 と、整合性が取れてないことに突っ込んで来る方がいるだろう。だが、オレの中では整合性が取れてたりするんです。


 ハリュシュがなぜオレの護衛をし始めたか。それはオレを取り込むため。そして、旗頭にするためであろう。


 エルフは知らないが、獣人は嫌われ、見下されている。そんな社会で獣人を受け入れるオレが現れた。


 獣人としたらそんなオレは重要で貴重で捨てられない存在であろう。まだ五歳で世間慣れしてない。いい様に丸め込めると思っても不思議ではない。


 ここで大切なのは流されないこと。毅然とした拒否を見せることだ。欲にくらんではダメ。負けたら最後、破滅の道を転げ落ちることだろう。そんなジャンヌ・ダルクみたいな人生ごめんである。


 だからと言って獣人たちを責めるつもりはない。自分たちが生きるために他者を犠牲にするなんてここでは当たり前のこと。オレもやってんだ、他人を責める資格なんてねーよ。恥ずかしいだろうが。


 この世界に生まれて知ったよ。平和ってのはたくさんの命を犠牲にした上に立ってるってことを。弱肉強食は世の真理だってよ。


 生きるために他の命をいただく。生きたければ食え。イヤなら死ね。単純にして厳格なこの世のルール。人は地獄で生きてるのだ。


 なんて、言いワケでもしなきゃやってられんよ。人はそんなに強くねーよ。割り切れもしねーよ。悩んだり悔いたりの繰り返し。笑ってしまうくらい矮小な生きもんなんだよ、人ってのは。ハハ……。


 ──ハイ、自己弁論終わり。判断は神様にお願いします。オレはオレのために、そして好きなように生きさせてもらいます!


 コンコン。コンコン。


 と、壁を叩く音。そして、天井に作った小扉から従魔にしたフクロウが入って来た。


 命大事になオレが夜を無用心にするワケはない。昼以上に監視の目を設けてるわ。


「敵か、夜叉丸?」


 夜叉丸は夜間警備の隊長で、八匹のフクロウを従えさせてます。


「ホー。武器持った人、たくさん来る」


「わかった。ねーちゃん」


「起きてる」


 牧場にいって鈍ってるかと思ったが、まったく失われてない警戒心。ステキです。


「光、いる?」


「いらない。カモは五人だし」


 この世界の生き物は大抵魔力を持っている。それをわかったときからねーちゃんには魔力感知ができるようにし、常日頃から魔力感知するよう言ってある。


 そして、魔力を抑える訓練も忘れずに行って来た。


 暗闇の中にいるねーちゃんの存在が薄くなり、音もなく家から出ていった。


「夜叉丸。監視者はいたか?」


「いない」


 なら、噂を聞きつけたゴロツキどもかな?


 獣人が人目を避けて、なんてやって来てるとは思えないし、仮にやっていても隠し通せるはずもない。いずれバレると思ってた。


 町の者か盗賊か。万全の用意をしていたオレたちにはカモでしかない。


「リン。終わったよ」


 さすがねーちゃん。五分もしないで戻って来た。


「なんだった?」


「たぶん、人攫いの類いだと思う。武器はナイフだけだったから」


 人攫いか~。ならハズレだな。


 それでも探ってみなけりゃわからない。スヤスヤ眠るかーちゃんを起こさないよう家を抜け出し、お宝探しだ。


 外の熊小屋で寝ているシルバーだが、ちゃんと従魔としての仕事をこなし、カモどもを野望の穴の近くまで運んでてくれた。よしよし、いい子だ。


「……いったいなにが起こったんだ……?」


 あ、ジェスたちもいましたっけね。すっかり忘れてましたわ~。


「カモが来ただけだよ」


 本当に変われば変わるものである。ねーちゃんにコミュニケーション能力が宿ってるよ。去年なら「うるせー」の一言だったのに……。


 ジェスたちはねーちゃんに任せ、オレは死体漁り。後ろ首を一刺しなので血は大して出てない。服もシルバーが噛んだくらい。再利用できてなによりである。


 服を脱がし、きったねーパンツも脱がし、死体はシルバーに野望の穴へと放り込んでもらう。


「……酷い……」


 お優しいハリュシュさん。自分が被害者になるまで殺しに来た者にも人権はあるってタイプだね。


「そんなんだからリンに嫌われるんだよ。生きるのに邪魔でしかない」


 ねーちゃんよく言った。もっと言ってやれ。オレは宝探しで忙しいんでさ。おっ、ベルトに銀貨が仕込まれてる。しかも八枚。やったー!


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[一言] 人さらい殺すべし慈悲はない。インガオホー!
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