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ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか  作者: タカハシあん


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193/359

193 手駒

 生贄の名前はナミリー。


「そこは建前でも少女の名前は、と言いなさいよ」


 え? オレ、生贄って言ってた?

 

「素で言ってるところが狂ってるわね」


 失礼な。これでもまっとうに育……ってないね。まともな環境でもなければ教育も受けてないからな。


 まあ、神に差し出すんだから生贄でいいっしょ。


 ナミリーに案内されたところは北地区。貧しい方々が住む感じの住宅が密集したところだ。


「スラムじゃないんだ」


 背後にいるイビスがポツリと呟いた。


「どこの町にも貧しい者はいるけど、よほどの規模がないとスラムなんてできないよ」


「なんで?」


「自然淘汰されるからだよ」


 大きな町なら下に回って来るパイは多いが、小さな町ではパイは微々たるもの。その微々たるパイを争い、極一部の貧しい者しか生き残らないのだ。


「まあ、最底辺が住むところなのは間違いないけどね」


 雪吸いに来てた子(姿と名前を登録して管理してます)が何人か見て取れた。ここの子たちだったのね。


 貧困層相手にと、まずは食事で釣った。冬は満足に食べることはできないからだ。そう思って行動したが、住んでる場所までは調べてなかった。まあ、万能偵察ポッドで町の地図は作ったけどね。


 ナミリーが住む家はアパート的な賃貸家屋で、六畳くらいの一室だった。


 そこには五歳と三歳の女の子と男の子。ベッドには母親らしき女性がいた。


 ……母子家庭か……。


 別にこれと言った感想はないが、町の中でも母子家庭は生きられるんだな~と感心してしまった。


「お母さん! 治せる人連れて来たよ!」


 母親に答える力はない。息も絶え絶え青い顔をしていた。死へのカウントダウンが始まってるようだ。


「お願いします! お母さんを助けてください!」


「大丈夫だよ。ウェルヴィーア教は弱き者の願いを無下にしたりしないから」


 こう言うシチュエーションはウェルカム。ウェルヴィーア教の奇跡を見せてあげようではないか。


 女の子の頭を撫でてやり、母親の横に立つ。


 右の手のひらを光らせ、母親の額に当てるが、これと言って意味はなし。たんにパフォーマンスです。奇跡は派手に。これみよがしに。それが人の心つかむ妙である。


 手のひらの光は母親に流れ、その体を光らせ、見ている者の視界を遮らせ、部屋を満たした。


「やりすぎよ」


 うん。ちょー眩しいわ。


 光が消えると母親の息は落ち着き、顔色もよくなった。手のひらの創造魔法の補正はすんばらしぃ~!


「……おねーちゃん……」


「病気は治ったよ。けど、これまで食べてなかったから弱ってるから、目覚めたら栄養のあるものを食べさせないとね」


「うちに食べるものないです……」


 だろうね。部屋に台所もないし、ものも少ない。妹も弟も痩せこけている。


「イビス」


「できてるよ」


 怖がる妹と弟の手をつかみ、部屋の外に出て道に連れ出す。


 道には雪吸いに勤しんだ人たちに振る舞っていた屋台があり、イビス特製のボルシチをテーブルに並べていた。


 驚愕! イビスちゃんはボルシチを作れたのです!


 ……こいつが謎でしかない……。


「チビッ子ども。腹一杯食いな」


 自分より下にはなに気に優しいイビスちゃん。こいつを聖女にしてやろうかしら。


 まあ、聖女より異端審問官にしたほう効率的か。イビスの場合は。


「ナミリーも食べなさい」


「あ、あの、お金が……」


「スズたちは、神より人を救う役目を与えられたの。だから人を救うの。もし、あなたも弱い人から助けを求められたら助けてあげて」


「……わたし、なにもできなかった……」


「ううん。ちゃんとできたよ」


 え? ってな顔でオレを見るナミリー。


「スズにちゃんと助けてって言えたでしょう」


 意味がわからないって顔になる。結構、表情豊かな子やね。


「人はね、弱ると声を出せなくなる生き物なの。あなたもそうでしょう? お母さんが病気になって、お腹空いて、どうしていいかわからなくなった。けど、ナミリーはどこかでスズのことを聞いたんでしょう?」


 うんと頷いた。


「スズたちが食事を与えてること聞いて、そんなスズならお母さんを助けてもらえると思ったのでしょう?」


 またうんと頷く。


「そして、ナミリーは動いた。心を奮い立たせてスズの前に現れた」


 本人はまだ人の傲慢さに気がついてないだろうが、七、八歳の子が理解してたら弟子にしたいわ。


 これは世間的にはいい話になる。ウェルヴィーア教を売り込む宣伝にもなるのだ。


「弱いことは罪だけど、弱いことになにもしないことは害悪。弱いなら弱いなりに動いて、より先にいくのが人だよ」


 と、言ってもまだ理解はできないか。できたら影武者にするわ。


「……どっちにしろ利用するんじゃない……」


 ハイ。利用する気満々ですが、なにか?


「もし、強くなりたいと言うならウェルヴィーア教に入るといいよ。今よりもっと、誰よりも強く、ナミリーを強くしてあげる」


 ウェルヴィーア教はいつでも入信オッケー。ウェルカム。次世代を担う優秀若者は先に奪われる前にオレがいただきます、だ。


「は、入りたいです! 強くなりたいです!」


 その心意気やよし。


 ウェルヴィーア教の聖紋を出して首にかけてやる。


「今からあなたはシスターナミリー。ウェルヴィーア教の信徒だよ」


 手駒ゲットだぜ!


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― 新着の感想 ―
[一言] やらない善よりやる偽善ですし、していることは普通に善行よりのはずなのにどうしてこうも悪行に見えるのでしょう……
[気になる点] 聖女イビスちゃんも見てみたい感はある そしてミナリーもイビスちゃんの同士に(気苦労仲間?) [一言] ボルシチ……ココアパウダーと味噌ペースト( ˘ω˘ )
[良い点] >まあ、神に差し出すんだから生贄でいいっしょ。  いけないなァ 神のことを悪く言っては……むしろあなたが神か?
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