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ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか  作者: タカハシあん


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172 宿屋

「スズ。宿は高いところか安いところ、どちらにする?」


「わたしは、安心して眠れるところ以外は却下だぞ」


 まったく、都市暮らしに不向きなヤツなんだから。そんなことなら市役所に帰れよな。


「高いところにお願い」


 まあ、旅をしていれば安いところに泊まれるだろうし、今回は高いところに泊まってみるかね。


「高いところに泊まったことあるの?」


「ないな。都市に亜人を泊めてくれる宿などないので」


「亜人のなにが嫌いなのかね? ボクにはわからないよ」


 姿形など人の間でも違う。まあ、種としての違いはあるだろうが、そんなもの個性の範囲だろう。同じ人だからって相成れない者もいれば理解不可能な者もいるんだからよ。


「まあ、ボスが飛び抜けてるからな。種の違いなど気にもならんだろうさ」


「ボクは普通だよ!」


「ボスが普通ならわたしなど猿にも劣る存在だよ」


 それはオレを貶めてるのか? 自分を卑下してるのか? どっちだよ?


「貶めているほうに一万点」


 そんな昭和ネタは止めろや。昭和生まれだけどオレは平成育ちだわ。


「亜人を差別するようなケダモノはぶっ殺せばいいよ。神もそう言ってたし」


「言ってないわよ! 主の言葉をいいように曲げないで!」


 オレら、神にいいように扱われて、人生をねじ曲げられることについてご意見を聞かせていただけると幸いですが?


「神の使徒たるリン様が言いました。ケダモノは害悪。殺しても罪にならないと」


「キチ○イに刃物だな」


 戦争の人に言われたくねーよ! オレは人としてまっとうだわ!


 なんの謂れのない言葉を受けながら高い宿に到着した。


「高いの、ここ?」


 オレの感覚では外国の田舎宿にしか見えないのだがな。


「……噂に聞いた程度だからよくはわからん……」


 まあ、泊まったこともないジェスに訊いたオレの失敗でした。ごめんなさい。


「じゃあ、ここにしよう。それほど悪そうなところでもないしさ!」


 元の我が家と比べたら最高級なところ。オレに不満はナッシング。臭いとかダニがいるとかだったら嫌だけどさ~。


 中に入るとまずはホールがあり、奥に受付カウンターがあった。


 ……まあ、この時代では高級なほうかな……。


 受付カウンターには仕立てのよい黒い服を着た男がおり、こちらに目を向けた。


 その目に嫌悪や見下しはない。営業スマイル百点満点だった。

 

「受付はボクがやるよ」


 なに事も経験。初めての受付や~。

 

「こんばんは~。お部屋空いてますか~?」


 こちらも笑顔満点で話しかけた。


「いらっしゃいませ。はい。空いております。何部屋を御用意致しますか?」


「いい部屋を三部屋お願いしま~す。なければ二部屋で!」


 もちろん、イビスは一人部屋です。寝込みを襲われたらイヤだしな。


「はい。わかりました。三部屋御用意致します」


 あ、空いてるんだ。伝道巡回で混んでると思ったんだけどな?


「支払いは前金ですか? ボク、宿に泊まるの初めてなんだ!」


「そうでございますか。初めての宿がダリウムと光栄でございます。支払いは前金でお願い致します。何泊お泊まりでしょうか?」


「一泊でお願いしまーす! 夜と朝に食事をつけてください! 明日から冒険の旅に出るので!」


「さようでございますか。では、今日はよく食べてよく眠れるように致します」


 にっこりと受け答えする受付のジェントルマン。よく教育された宿だこと。宿の見た目以上に高級なところなのかな?


「うん! そうするぅ~!」


 受付と説明を受け、金はジェスが払い、オレは0円スマイルをチップに渡した。


「では、お部屋にご案内致します」


 ボーイ的な少年が現れ、部屋へと案内してくれた。


「三部屋同じなの?」


「部屋の造りに多少の違いはありますが、設備に変わりはありません」


 と言うので、適当に部屋割りをしました。


 部屋は基本、二人用なのか、ベッドが二つ並んでおり、チェストや水差しがあり、花瓶に花が活けてある。


 まさに質素。質素・オブ・ザ・イヤーである。


「……トイレも風呂もお茶もなしか……」


「いや、お茶はいらないでしょう」


「お茶はおもてなしの基本だぞ。サービス業ナメんな!」


「なんの怒りよ?」


 おもてなしがなってないことにだよ! なんて怒りは筋違いか。綺麗な部屋とベッドを用意できるだけ立派だよな。


「まあ、自分で出せるからいいんだけどね」


 帽子をベッドに放り投げ、椅子とテーブルを創り出した。


 手のひらの創造魔法万歳。緑茶最高。お供の最中は最強。これで温泉があれば至福である。


「女子旅か」


 そんな突っ込みいらんがな。つーか、守護天使から突っ込み天使にジョブチェンジかよ?


 なんてやってるとドアがノックされ、イビスとジェスがやって来た。


「夕食までプライベートタイムなんだからゆっくりしてなよ」


 ジェントルマンの話では呼びに来るそうだ。


「部屋に一人でいてもつまらんし。コーヒーをくれ。あと、甘いものを」


 寂しいん坊か。


「ジェスはお酒でいい?」


「ああ。あと、ツマミもあると助かる」


 遠慮がない二人である。まあ、いいけどさ。


「……なんと言うか、こうも平和だと落ち着かないもんだな……」


 コーヒーを飲んでいたイビスがポツリと呟く。戦争の人とは度しがたいもんだ。


「平和を知る者こそ戦いを知る、だよ!」


 ドヤと言ってやる。


「それを言うなら戦いを知る者こそ平和を知る、だろう」


 あれ? そうなの? ってか、そんなこと言った人いるんだ。適当に言ったのに。


「まあ、休息を楽しめってことさ」


 今さらだけど、戦争の人との会話って弾まねーもんである。いや、この世界に生まれて会話を弾ませたことないけど!


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[一言] 宿代聞かなかったけど高かったり
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