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14 グルメなじーちゃん

 巨大な蜂の巣から採れた蜂蜜は約八リットル。巣のサイズにしては少ないなと思い、巣を解体したら女王蜂が赤ん坊くらいあり、蜂の子がびっしりと詰まっていた。


「キモ!」


 さんざんゴブリンをひき肉にしてるクセに蜂の子くらいでキモいとかないだろうに。オレなんかグロ耐性マックスだわ。


「ガウ」


「まだ食べるのかよ。お前の食費でうちが潰れるわ」


「ガウ~」


「まあ、いいさ。もうお前はうちの子なんだからな。食え」


 従魔とは言え、これだけ一緒にいれば愛情も湧く。もう離れるなんて考えられんよ。


「ガウガウ!」


「……食ってる……」


 女王蜂を食らうシーンと言うのはR18なのでモザイク処理し、蜂の子を一つつかみ、鑑定する。


「やはり食えるのか。どれ」


「うぇっ!?」


 オレがオレの口に入れたんだから変な声出さないでよ。


 クチャクチャゴックン。う~んイマイチ。


「甘く煮たらくえるな」


 確か蜂の子の甘露煮があったはず。前世と同じような効能があるかわからんが、保存食にはなる。食えるは正義だ。


「あたしは食わないからな」


「わかってる」


 クソ。容器が足りん。諦めたくはないし、手のひらの創造魔法で創っちゃおう。おりゃそりゃとぉーっ!


 で、四リットルくらいの瓶容器を八つ創ってしまった。


 イカン。魔力が枯渇する。魔力回復薬を飲まねば。ゴクゴクゴックン。ぷふぁーっ! 生き返るぅ~!


「リン。あたしにもちょうだい。魔力が半分切ったから」


「ねーちゃん、あげたやつ、もう飲んだの? あんまりないんだからカブ飲みしないでよ」


 乱獲しないようにと注意してたが、ねーちゃんがカブ飲み……いや、オレもだけど、回復薬が採れなくなったのだ。


 このままでは不味いと畑に移して育ててるけど、魔力回復薬にする魔力が追いつかないので備蓄が減る一方なのだ。


「わかってるよ」


 まったくわかってない返事だ。


「予備を渡すから蜂の巣をいっぱい探してよ。秋までに採れるだけ採っちゃうからさ」


「それは任せな。蜂退治はいい練習になるし。それより、蜂蜜が食いたいぞ」


 ったく。欠食幼女が。うちのエンゲル係数がインフレ起こしそうだぜ。


「一甕あげるから大事に食べるんだよ。お酒と冬のおやつにするんだから」


「わかってる」


 まったくわかってない返事だよ……。


 まあいい。蜂はいっぱいいそうだし、冬まで時間はある。今日はこれで帰るとしよう。


「ねーちゃん。食べてないで帰るよ」


「もう帰るのか? まだ陽は高いぞ」


「ねーちゃんみたいな体力オバケと一緒にしないで。四歳児は貧弱なの」


 まだお昼寝が大事なお年頃。お昼に寝ないと夜まで体力が持たないのだ。


「いっぱい食わないからだぞ」


 無茶言わんとって。四歳児の胃はそんなにデカくないんだからさ。


 マジックバッグに入らないのはシルバーに背負わせ、空いてるところに乗って家へと帰った。


 その日は帰ったらバタンキュー。次の日まで眠ってしまった。


 クソ。魔力を無駄にした。四歳児の体力ナメてたわ。想像以上に貧弱だわ。


「魔力だけじゃなく体力も鍛えないとな」


 畑仕事が終わったらシルバーをサンドバッグにしてパンチにキック。四歳児の体を考えて五分三セット。午前と午後にすることに決めた。


 ぽふぽふとシルバーにパンチを食らわす日々を送っていると、グルメじーちゃんがやって来た。


 今回は護衛のねーちゃんが二人と増えている。


 ……今さらながらにしてこのじーちゃんは何者なんだろうな……?


 隠居した領主で、賢いオレを養子にしようとかなら嬉しいのだが、それらしいことはなにも言わず、オレが創る料理を食べながら世間話をするだけ。


 いや、グルメじーちゃんが一方的にしゃべり、オレは聞いてるだけなんだがな。


「酒」


 食事が終わり、なんかキセルを吹かすグルメじーちゃんに蜂蜜酒が入った甕を出す。


「ほぉう。酒まで作るのか。どれ」

 

 蓋を固定した紐を手持ちのナイフで切り、蓋を取って中を見る。


「綺麗な色じゃの。なんの酒じゃ?」


「蜂蜜」


「蜂蜜? リュード酒か!」


 へー。蜂蜜酒ってあるんだ。それなりに文化は発展してるようだ。


「よく作れた、いや、蜂蜜をよく集められたものだ。どうやったのじゃ?」


「ねーが採って来た」


 そのねーちゃんは蜂蜜を採りに山へでかけてます。蜂蜜の消費が激しいので。


「リュード酒はいくつあるんじゃ?」


 三つと指で示した。


「では、三つ買おうではないか」


 ありやとうございやーす! シルバー、グルメおじい様にお持ちして!


 甕一つ銀貨二枚。三つで六枚。蜂蜜酒って高価なんやね。ねーちゃんとシルバーに割くのを減らして蜂蜜酒を創っちゃいましょう。異論は認めぬ!


「また来るので作っておいてくれ」


 ハーイ、喜んでー! 


 ってか、これだけ才能見せてんだから引き抜けや、グルメじーちゃんよ。奥手か!


 クソ。権力者に取り入ってのし上がる計画してたのに。もうちょっとアピールしたほうがよかったか?


 はぁ~。この際だらかーちゃんを妾に、って男でもいいや。オレが幸せになるための礎出て来いや!


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