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『無限収納』と『索敵』

かなり間が空いてしまいました。

すみません

「流石獣人だなぁ。肉が凄い」


オレは村の備蓄庫の扉を開いてすぐ、呆れや驚き、感心の混じった声でそう呟いた。

この村は狼人種という獣人の村だったらしいが、さすが狼、さぞかし狩が上手かったのだろう。…皮肉ではない。

備蓄庫には昨日のオレの考えが杞憂であった事をわからせるだけの食料があった。


昨日ミリアを1人にしないと言ったあと、オレ達はこれからのことを話し合った。

その結果、村を出ることにした。

ここに居てただ日常を過ごすのもいいかなとかちょっとだけ思ったが食料などの消耗品が不安だったのと、何より再び人攫いが来る事を恐れたためだ。

あの日はオレが人攫い共を抹殺出来たが、次はあれ以上かもしれないしオレが戦っている間にミリアだけ連れて行かれるかもしれない。

ミリアはそれが不安で仕方がなかったようだしオレも望むところではない。

しかし村を出れば一先ずは人攫いは回避可能だし街にでも着ければ街にいるだけでも十分手が出しにくい。

さらに、認識阻害とかがあれば買えばいいだろう。

魔法はあるようだし購入資金は請負人という冒険者的な存在もいるらしいからそれで儲ければ良い。

魔法は是非とも使ってみたい。


そうでなくとも村に金銭はあるようだし人攫い達も少しだが金銭は持っていたらしくミリアが見せてくれた。

ちなみにこの世界の通貨は国や地域によって違う。

この村はサンマルク王国という国にあるらく、サンマルク銭貨からサンマルク金貨ともう一つ上まで7種類。日本円で例えるなら1円から100万円で一桁ずつ変わる感じで10枚で1つ上の貨幣と交換出来るそうだ。世界で貨幣の種類は7種類で統一されて貨幣が違う地域では両替しなくてはいけないんだとか。


村では殆ど金銭を消費する機会がなかったらしく、結構な量の金銭を溜め込んでいるらしいがミリアの知識頼りであるため物価もわからず、実際にどれくらいもつかはわからない。


そのミリアの知識だが、まだ10歳ということもあってか知っていることはかなり幅が狭く、あまり役に立ちそうではない。

村の大人達は定期的に外へ毛皮などを売りに行っていたそうだが、街までの距離がどれぐらいのものかは知らず。

貨幣も一番高いものは知らないというし知っている国もサンマルク王国のみ。

そんな感じで情報面では前途多難だ。

本があれば少しは情報収集も出来ただろうが、やはり本は高価なのか、それとも不要だったのかは知らないが村には1冊も無かった。

ラノベとはいえ読書好きを超え読書中毒レベルだったオレからすると割と地獄だ。異世界にラノベは無いだろうが何か読みたい。いっそ書いて見るのもいいかもしれないが中学での国語の成績は3だったし文章力は貧弱だと思う。


オレは備蓄庫から保存食の詰まった箱を運び出す。STRが上がっていて良かった。以前のオレには文字通り荷が重かっただろう。

箱には殆ど干し肉が詰まっていた…栄養バランスについては杞憂ではなかったらしい。肉ばかり食べているとどう悪いんだったかな。


「これで最後かな…人口30人でこんなに集められるものなんだなぁ。さすが狼ってところかな」


最後の箱を運び出し、オレは積み上げた箱に背を任せ座り込み、無い汗を拭う動作を行う。

箱は大体一辺50cmぐらいで、その中にはみっちりと干し肉が詰まっている。それが十数個あり、今はまだ秋序盤だという。

栄養バランス…



ミリアはまだ寝ている。

昨日は話し合いで夜になるまで過ごした。

泣き疲れていたのか、ミリアは外が真っ暗になるとすぐに寝てしまった、オレと同じベッドで。

断じてやましい事はない。ミリアは話し合いが終わってからすぐテーブルに突っ伏して寝てしまい、オレはそんなミリアをベッドまで運び寝させ、別のベッドを探しに行こうとしたのだが、ミリアがオレの服の裾をちんまりと掴んでウルウルした目で訴えかけてきたため隣りで添い寝してやった。

ミリアからすればまだオレが何処かへ行ってしまわないか不安なのだろう。

ちなみにオレはすぐ寝てしまったらしく記憶はすぐに途切れている。もともと寝つきはいい方だし。


今朝オレは目を覚ますとまだ気持ち良さそうに寝ているミリアを何となく撫でてからベッドを出て備蓄庫を漁っている。

備蓄庫の場所は昨日のうちにミリアから聞いている。

備蓄庫の入り口はミリアのいる部屋から見えるし朝ごはんも兼ねて干し肉を矢印状に置いて来た。オレがいなくなったと勘違いすることはないだろう。


とりあえず、箱から干し肉を2つ取り出し、ミリアのところへと戻る。

貯水槽から桶に水を汲んで行くのを忘れない。これなしで干し肉は食えない。しょっぱいし硬いからな。


オレはミリアのところへと戻って来る。

先に言っておくがこの村にドアはない。

寒くなればその限りでもなさそうだが今はまだ秋の始めであり開放的だ。

要するに部屋を繋ぐ部分は無防備に晒されており隣の部屋は丸見えなわけで。


まぁ、なんだ。部屋に入ろうとしたらミリアが着替えててパンツしか穿いていなかったってわけだが。

『純白』と言われるだけあってかミリアの肌は何も混ざっていない美しい白に窓の穴から入る朝日が反射して幻想的だ。

痩せすぎと言うわけではないがその体は無駄な脂肪が少なく綺麗な体つきだ。

膨らみは昨日密着した時に感じた通り10歳にしては大きい。Cぐらいだろうか?実際のCを見たことはないが…

一番気になる尻尾の付け根はギリギリ見えない。ちなみに尻に興味は無い。


オレは幸いにしてこういう場面に出くわした時の対応策を考えたことがあった。

オレは何も見なかった事にして桶を置き、その淵に干し肉を置くとすぐに後ろを向いて歩き出した。


建物の入り口まで退却したところでミリアの悲鳴が聞こえた。

何というか、あれだ。悪い気分ではなかった。

ロリコンではない。





「ごめん、悪気はなかったんだ」


オレはミリアに頭を下げていた。

ミリアはベッドで掛け布団を被ってそっぽを向いている。

オレに見られた事がよっぽどショックだったのか、中々立ち直りそうにない。

ほっとけばいい気もするがこれが原因でこの先に支障が出るのも困るし街に着いてすぐに用済みなどと言われた日には帰る手段を全力で探し出す自信がある。

どうしたものか──

天の岩戸とか良いかもしれないが…いや、1人じゃどう騒げばいいんだか。

ここは、押してダメなら引いてみろの精神で行こうか。


「…さてとー?1人で街まで「お、置いてっちゃ駄目!」…冗談だよ、ごめん。だから機嫌直してくれないかな?」


ここまで食い気味に縋られると悪いことをしている気分だ。

ベッドから飛び出し腰に抱き着くミリアを撫でてやると仕方ないと言わんばかりの視線をこちらに向けながら膝に甘噛みしてきた。

可愛いし痛みはないがなんとなく犯罪臭がするからやめて欲しい。


「それじゃぁ、旅立ちの準備をしよう」


オレはミリアが離れて顔を赤くしているのに笑みを零しつつ、そう言って外へと足を向けた。






「これぐらいあれば大丈夫かな?…無限収納が手に入ってよかった。こんなに2人じゃ運べそうにないからな」


この世界にもちゃんとあった太陽が、既に天頂より傾き始めた時間帯、オレ達は旅立ちの準備を粗方終えていた。

オレは旅なんてしたことはないし、ミリアも同様らしく不備はありそうだが思いつく限り揃えたつもりだ。あとは持ち運ぶ手段なのだが、実は途中でいいものが手に入った。


<ラックスキル『無限収納』を手に入れた>


準備中、今までのスキルと違い、入手通知が直接頭の中に響いて来た。

その音声がまた不思議なもので…男とも女ともつかない中性的な若い、楽しげな声だった。

ラックスキルという分類も謎だ。

もしかすると何かしらの抽選で大当たりでも引いたから手に入れたのかもしれないが抽選を申込んだ覚えはないし神でもいるのかもしれないが、まぁ名前の通りラッキーだと受け取っておこう。いるかもしれない神様に感謝。

内容は名前の通り無限収納だった。多分チートじゃないかな。

おそらく人に明かせば騒ぎになる。見せびらかしていいものでは無いだろうがミリアには明かしておいた。

面白いぐらいびっくりしてた。


オレはこの『無限収納』へと用意した干し肉、毛布、着替え、桶、ロープ、テント的な物、ロウソク的な物、水入り桶複数、金銭etcetcをしまってゆく。

触れて意識しなければ収納は出来ず、指先だけ触れているとかも無理だった。求め過ぎな気もするが触れないでも収納出来れば便利なのに、とは思った。

非常識なレベルで便利だ。ラノベの主人公達はこんなに楽をしていたのか。


ちなみにミリアは寝てしまっている。10年間隠されていたのなら、あまり外には出して貰えなかっただろうし、おそらく動き慣れていないのだろう。

これからどれくらいの期間になるかはわからないが、旅になるためミリアの体力の無さは不安ではあるが、幸い人攫い達の乗ってきたであろう馬が一匹残っていたためそいつを使うことにした。2人のりだ。

乗馬なぞしたことは無かったが、ミリアが頼めばオレも乗せてくれるぐらいは従順だったしオレもスキルの影響でレベル3まで上げられた。


オレの武器は双剣だ。

STR値が上がったことによる補正である程度重量のある剣も持てるようになった為、人攫いのボスが持っていた剣と村で1番いいらしい剣を両の腰に携えている。

スキルレベルも武器系では最も高い為、これが1番戦えるだろう。戦う機会はないといいが…


ミリアの武器は今のところ短剣を持たせて見た。オレが守ればいい。

その際判明したことなのだが、このミリアは『ステータス』のコマンドを知らなかった。

教えれば使えたため知識に無かったというだけだろうが、ミリアは『無限収納』の比では無いぐらい驚いていた。ミリアだけが知らないのかそれともこの世界の住民誰もが知らないのかはわからないが常識とばかり思い込んでいた身からすると意外だ。


「さて、明日に備えてオレも寝るか…いや、変な予感がする…」


ミリアも寝てしまっていることだしオレも寝てしまおうかと考えていたのだが、オレの本能は何かを感じ取って警鐘を鳴らして危険を伝えようとしている気がする。

昨日と同じだ。違うのは昨日よりもかなり危険を強く感じるところだろうか。

そういえば、『生存者』には『索敵』をレベル10にする効果があった記憶がある。

もしそれがオレの本能に働きかけているとすれば──


「また…人攫いが来るのかなぁ…ミリアの横で見張っているか…」


オレは気を引き締め、『無限収納』から双剣を取り出し腰に固定してミリアの眠る部屋へと向かう。


オレの寝れない夜が始まった。

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