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少女とユニークスキル


目を開いて最初に見えたのは白く美しいもふもふだった。

寝起きではっきりしない意識のまま、そのもふもふに手を伸ばし、触れて、もふった。


「ひゃっ!?」


もふもふの上から短い悲鳴が聞こえたが気にせずにもふりつつ二度寝を決め込もうと──待て待て、寝てる場合じゃない。

オレは気絶する前の事を思い出し、もふもふから手を引っ込め上半身を一気に起こし周囲を見渡す。

まずは、ここが自宅のベッドじゃなくて見覚えのないベッドということは転移は夢で無いのは確定だろう。個人的には嬉しいのだが、客観的には良いのか悪いのか。


「お、おはようございます」

「あ…お、おはようございます」


困惑気味の声が真横から聞こえ、そちらを向くと、純白の少女だった。改めて近くで見るとと凄く可愛い。心臓が早鐘を打ち、顔が熱くなるのを感じる。ヒロインに出会う時の主人公の気分を身をもって体験できた気がする。純白の少女と言ったように狼耳や尻尾、瞳も白く肌色も足跡の付いてない雪原のように綺麗だ。年齢は10歳ぐらいだろうか。少女はベッドに腰掛けているが頭の位置が頭一つ分ぐらいオレより低い。美しい狼耳がピクピクと動きそしてさっきのもふもふが左右に揺れている…尻尾って勝手に触って良かったのだろうか。


「目を覚ましてくれてよかった…一昨日はその、助けてくれてありがとう、起きないから凄く心配した…」

「あ…えっと…それは…どうもです」


一昨日の事とは…正直よく覚えていないが、目の前の少女を助けるべく戦ったあれの事だろう。少女も無事だしオレも無事…勝ったのだろうがただ、他の人がどうなのかはわかっていないが。

ただ、あまり普段から感謝され慣れていないオレとしてはありがとうでもとても、照れる。


「私はミリアっていいます。あなたは?」

「オレは神代 莉久。莉久が名前だからリクって呼んでくれると嬉しいかな」

「はい。リクさん。私もミリアと気軽に呼んで下さい」

「うん、ミリアさ「ミリアです」わ、わかったよ。ミリア」


異世界だと名字と名前が逆なことが多いというテンプレを先読みする。

純白の少女改めミリアはオレが言われた通りにすると嬉しそうに微笑んだ。これは惚れられたのだろうか。多分違うけど。

言ってないだけかもしれないが名字がないという事は貴族以外は名字がないと考えるべきだろうか。

そこで空気の読めないオレの腹が情けなく虚しい音を鳴らす。


「2日も寝てればお腹もすくよね。何か持ってくるね」


ミリアが嬉しそうに微笑みどこかへと走ってゆく。

飯が出てくるのだろう。それまでに一昨日の事を思い出しておこう。


まず、集落に入った時の事を思い出して悲しくなった。


その後小ぶりな片手剣を拾って、襲われてるミリアを見つけて、自棄になって飛び出して行ったところまではしっかりと覚えている。

そのあと、ミリアを襲っていた男の腕を落として無力化した事を思い出し小首を傾げる。


「剣何て初めて持ったのになんで勝てたんだ…いやそもそも振れた事自体変だな…もしかして…いや、まさか…『ステータス』」


オレはありえないと思いつつも仮説を立証すべくステータスを開きスクリーンを眺める。



【名前】神代 莉久(Kamishiro Riku)

【性別】男

【年齢】15

【レベル】35

【ステータス】

HP210/210

スタミナ145/145

MP210/210

STR179

VIT140

AGI188

DEX315

INT318



「なんじゃこりゃ…レベル35?ステータスも何か凄く上がってるし…あっもしかしてユニークスキルでも手に入れた!?」


一昨日とは比べ物にならない、一桁増えたステータスに驚き、喜び、戸惑いつつスキル欄へとスライド。通知欄とやらが増えているが後回しだ。



【スキル】

[ユニークスキル]

抵抗者…自身が理不尽な状態に置かれている時ステータスが2倍になり、スキルの補助が+2レベル相当になる。ステータスにレベル+10相当の補正。

救援者…他人が理不尽な状態に置かれ、尚且つそれを救おうとする時ステータスが2倍になりスキルの補助が+2レベル相当になる。ステータスにレベル+10相当の補正。

生存者…餓え、病気、毒、斬撃、打撃、刺突、魔法etcに対する耐性極大を得る(90%軽減)。HPとスタミナ、傷の自動回復小。スキル<索敵><隠形>にレベル+10。スキルの取得とレベル上昇が通常よりかなり容易になる。ステータスにレベル+10相当の補正。

[通常スキル]

片手剣3…片手剣の取り扱い補助

跳躍1…跳躍高度補助

疾走1…走る速度補助

回避3…回避補助

槍1…槍の取り扱い補助

索敵10…索敵補助

隠形10…隠形補助

双剣6…双剣の取り扱い補助



「オレにも…チートが…。なるほど、だからあれだけでレベルがこんなに上がったんだ。戦闘中にレベル上がったんだ」


力を持たなかった拳を強く握り異世界系の醍醐味に喜びを噛みしめる。喜びに浸りながら説明文に目を通す。


「ステータス補正が3つと成長補正に各耐性しかも90%、自動回復にピンチの時にステータス2倍が2つにスキル補正…凄い、凄く強い」


語彙力。だが、そんな言葉しか出ないほどこの3つのユニークスキルは強力である。最初の2つはまさに英雄願望を成就させるものであり最後の1つも成長チート。素晴らしい。

いつ手に入れたのかは知らないが…と、通知欄の存在を思い出しスクリーンを変える。普通のスキルは後回しだ。



<ユニークスキル『救援者』『抵抗者』『生存者」を手に入れた>

<スキル『片手剣』を手に入れた>

<スキル『片手剣』のレベルが2になった>

<スキル『跳躍』を手に入れた>

<スキル『双剣』のレベルが6になった>



「スキル取得とかはここに出るのか…既読マーク押しちゃっていいかな。先にこっちみればよかったなぁ」


スキル欄を先に見たため感動が薄い。通知は合計15個あり全てスキル取得やレベルアップで称号などはない。


「これが勝てた理由かー…これなら確かに勝てるな。ステータス4倍ってことは力とか40だしレベル50だけ強化されてるから実際はもっと高かっただろうし…」


それでも戦いが一方的ではなかったのは彼らのレベルが高かったのか、戦闘経験の差か。入口付近だけではあるが獣人以外の死体が見当たらなかったあたり彼らは其れなりに強い集団だったのかもしれない。今考えると怖い。勝てなかったら殺されていただろうかとか考えると体が震えて来そうだ。


「リク大丈夫?」

「うわっ!?ご、ごめん。大丈夫だよ」


後ろからミリアが心配そうに肩に手を置きしなだれかかって来る。

突然で驚いてしまったがミリアの方に顔を向けて謝る。

美少女の顔が近いとなんだか心臓が騒がしい。というよりか体躯の割には立派な膨らみをお持ちで。体躯の割には、だが。

安心したように笑って見せたミリアが背中から離れ皿を差し出して来る。どこから出した。


「はいっ、これ食べてっ。おいしいよ!」

「あ、ありが…と…う?」


形だけの皿に乗せられたのは拳ぐらいある干し肉だった。何肉かは知らないがやばい肉では無いと信じたい。

というかまさか2日も寝込んでいた人間に干し肉渡すとはマジで思わなかった。

そこはお粥とかじゃないのだろうか。この世界に米があるかは知らないが。

だが、文句を言うのは失礼だろう。彼女なりの気遣いなのだろうし。

戸惑いながらも干し肉を手に取り、噛み付いた。


「…お水もらえるかな?」


オレは苦笑いしながらミリアに水を求めた。





ミリアから貰った干し肉を食べ終え、血塗れのジャージとパーカーから集落にあった服の中から着れる物を探して着替えた。靴ももらった。

どれも尻尾の穴が空いていたため同じ色の服から少し切り取り塗って塞いだ。不慣れな事をしたためミスって指に針を刺してしまった。HPは減らなかったが傷はすぐに塞がってわからなくなった。自動回復は優秀そうだ。

途中、何故か僅かに危険を感じたが、すぐにおさまった。気のせいだろうか。


<スキル『裁縫』を手に入れた>


「どうしようかな…言うべきか言わないべきか…言ったら悲しい気分にさせるかもしれないし…いや、でもいつまでも無視できることじゃ無いし…」


オレは建物の入口の階段に座り悩んでいた。ちなみにここの建物は全て高床式だ。こっちの世界に来たばかりの時に川が見えたし氾濫でもするのだろうか。

悩んでいるのは、何故集落が襲われていたのか、についてミリアに聞くかどうかだ。

生き残りはどうもミリアだけらしくミリア以外誰にも会っていない。

それ程の事があったのにその真相を知らずにこの先を行くのは危険に思える、知っておきたい。


あれだけあった死体は全てどうにかしたようで何処にも見当たらない。

引き摺った跡が集落の外へと幾つも続いている事から外へほおったのだろうか。

オレが殺されかけた時も投石で助けてくれたし、ミリアは存外強いのかもしれない。

悩んでいる事はもう1つある。

これからどうしようか、である。

ここでお世話になろうにもミリアとオレしかいないのではそのうちいろいろ厳しくなるのではないか。

今は保存食に干し肉があるようだが、冬の備えな気がするし、ミリアが狩を出来るかにもよるが、消費し続ければばいつか無くなる。栄養バランスも悪いしな。


「…聞かないことには何も進まない気がするなぁ…ここを出るにも置いて行くわけにもいかないし残るにしても気まずい気がするし…

聞こう…か」


あまり気は進まないが仕方ないものは仕方ない。

オレはミリアに真相を尋ねるべく、ミリアのいる屋内へと足を進めた。


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