ステータスと始まりの判断
「そもそもよく考えたら異世界って決まった訳でもないしなぁ…」
ただ単に外国の森に転移──それでも結構ファンタジーだが──しただけかもしれないし、新手の詐欺の可能性だって捨て切れ──いや、何か図鑑でもテレビでも教科書でも見たことが無い小動物がいるしやっぱ異世界だわ。
「とりあえず…どんな異世界かとか…調べてみようか」
オレは異世界系ラノベの世界には大まかに二種類あると思っている。
ゲーム風の世界と現実的な世界だ。
それぞれデス◯と無◯転生と言えばわかるだろうか。
まずここの違いを確認しようとオレは視界にコマンド的なものが無いか見渡すが、特にそういうものはないようだ。
次に「ステータス」とよくあるコマンドを唱えて見ると──
「おお!ゲーム風の異世界なんだ!チートスキルとかないかな!?」
目の前にはレベルやSTR、HPといったステータスが書かれた半透明のスクリーンが出ている。
オレは興奮しながら「スキル」と書かれた部分に指でタッチするが反応は無い。今度は意識してみると画面が切り替わった。
「…スキルは何も無いのかー…スキルチートは無しっと」
何も表示されないスキル画面から元のステータス画面に戻し、ステータスやレベルに目を通す。
【名前】神代 莉久(Kamishiro Riku)
【性別】男
【年齢】15
【レベル】1
【ステータス】
HP15/15
スタミナ10/10
MP15/15
STR10
VIT10
AGI10
DEX15
INT25
「ステータスも貧弱だしレベルも1か~…スキルも無いし現代知識も自信ないなぁ。…あれ?どうやって生きてこう」
ステータスの値が強いのかどうかは基準がないためわからないが、何となく低いと確信できる。INTが他と比べて2倍程高いのはこの世界の人々は日本より教育機関等が整っていないからだろうか。
にしても、このままでは目立った特徴も何もないただのレベル1のモブである。
レベルを上げたいが倒す相手もいないし、よしんば居たとしても素手にパーカーとジャージでは瞬殺がオチだろう。勿論オレは瞬殺される方だ。
「とりあえず…誰かに会わないと…でも森の中に人なんているかなぁ…冒険者とかが運良く見つけてくれたりしないかな。昼飯からそんなに経ってなくてよかった」
食糧に関しては昼食後1時間程度に転移したためしばらくは気にしなくても良いだろう。
その間に何処かの庇護下に入れれば暫くそこでお世話になる、場合によってはそこに定住してもいいかもしれない。
ただし、受け入れられるかも、受け入れられても自分に何が出来るかは分からない。
それでも誰かに会わない事には何も進まないだろう。
「よし!とりあえずこっからなら見晴らしもいいし何か無いか探して──」
爆発音が俺の言葉を遮る。
村でも街でも冒険者のキャンプでもいいから見つけ出そう、そう決めたオレは幸いにも見晴らしのいい下り坂の上にいる。
村っぽい物でも無いかと見渡そうとした時だった。
ちょうど目の前、1km程先だろうか。
爆発音に驚いて振り向き音源に視線を向けると数カ所から火の手があがっている。そこから尋常ではない煙が上がり、わずかだが騒ぎ声も聞こえてくる。
「な、なんだなんだ!爆発ってことは事故?ってことは誰かいるのかな?行ってみよう!」
大方、村でもあって誰かが何かミスでもしでかしたのだろう。
オレは楽観的にそう判断して爆発の起こった方向へと靴も履いていないのに駆け出した。
──オレのこの時の判断が正しかったのか、間違っていたのかは分からない。
ただ、一つだけ断言出来ることがある。
オレの異世界生活はここから始まったのだ。