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正規ルートの王子①

「あれ、俺は……」


 ベルンは結局翌朝まで目覚めることはなく、1晩私のベッドで眠った。


「泣き疲れて一晩中寝てたんだよ、疲れ取れた?」


 私はベルンの横に座り、頭を撫でた。

 しかし彼はそれが心地よくて再び寝ようとしたので思い切りチョップをしてやった。


「あれ…… 魚は?」


 この男は寝ぼけているんだろうか、それともアホなのだろうか……

 一晩中寝てたと言われて昨晩の夕食の心配を始めたぞ?


「料理長は今日の朝に出すって言ってたよ」


 どうやら昨日のメインの魚は鮭だったようなので、明日の朝食に焼いて出すと言われた。

 ショタ君の臨機応変さが素晴らしかった……


「そうか…… お前も魚か?」


 この男はなんの心配をしているんだ?


「うん、だからダイニングに行こう?」


 私はまだ寝ぼけ気味のベルンの腕を引っ張り、ダイニングへ連れていく。

 彼の身体は175cmくらいのそこそこの高身長にしては軽かった。 なので引っ張っても楽だった。



「おはようございます、お嬢様」


 ダイニングの扉を開けるとダンテが私の席の前で立ち、私が席まで行くのを待っていた。


「おはようダンテ、カノンも」


 メイドのカノンがキッチンから皿を運んできた。 恐らくあれが朝食だろう、湯気が出ている。


「おはようございます、お嬢様。 昨夜はおた…」


「楽しんでないです!」


 カノンはデリカシーが無い。

 何でも思った事を言えるのはいい事だと思うが、そういう訳にもいかないだろう


「おはようございますお嬢様! 鮭を焼いたものと、目玉焼きにおひたし。 あとはご飯とお味噌汁でございます」


 朝からショタ君は可愛いなぁ…… 癒される……

 それにしても料理はどれも美味しそうで、プロが作ったように見える。


「おはようお嬢ちゃん、それと狼君」


 庭師のジャックもダイニングにやって来て、全員で食事を始める。

 転生する前は家でも1人で食事をしていたから、多くの人と食事をするのは新鮮な感じだ。


「お嬢様、本日は隣国のハール王子がいらっしゃいます。 記憶喪失で大変だとは思いますが、ご無礼のないようにお願い致します」


 ダンテはフォークとナイフで綺麗に鮭を切り分けながら今日の予定を話した。

 王子か、イケメンだと良いなぁ--


「安心しろカナデ、何かされたら俺を呼ぶか殴れ」


 ベルンは箸で鮭を切り分けながらそう言ったが、多分王子はお前みたいに突然ベッドに押し倒したりしないから大丈夫だよ。

 --と思った。


「分かった。ところでベルン、箸使うの初めて?」


 狼は箸を使うはず無いので、オオカミ男のベルンが使いこなしているのを見て驚いた。


「ああ、初めて箸という物の存在を知ったぞ」


 なら使い方をすぐに覚え、使いこなしているのか。 狼は頭が良いんだなぁ--



「「「「「「ご馳走でした」」」」」」


 全員で食事をし終え、私は部屋に向かって王子を迎える準備を始めようとしたが……


「お嬢様、こちらはいかがでしょう」


 カノンのコーディネートが色々とおかしい!

 彼女は何故か上が黄色、下がピンクなど上下で色の異なる組み合わせを提案してくる。


「こ、これにするね……?」


 私はクローゼットの中から黄色ベースに青や赤の花柄の模様が描かれている長袖のワンピースを見つけ、それを着ることにした。


「でしたら上からこちらを羽織って下さいませ」


 何故かカノンは黒いロングカーディガンを取り出したが、合わないことは無いので着ることにした。


「素敵でございます、お嬢様」


 素敵というか、ワンピースだから……

 これから着替える時はカノンは呼ばないようにしよう。


「お嬢ちゃん、着替え終わったかい? おお、なかなか良いじゃねぇか」


 ジャックが今日の分のマンドラゴラ用の水を持ってきたようだ。 流石アニキ系、見る目があるな。


「王子さんとの用事が終わったら俺とデートして欲しいねぇ……」


 良いよアニキ、行ってあげようじゃないの!

 むしろついて行きますよアニキ!


「お嬢様、王子がお目見えになられました。 応接室までいらして下さい」


 ダンテめ、私のこのワンピース姿を見て腰を抜かすがいいさ!


「はーい!」


 さて、ハール王子ってどんな人なんだろう--

 私お嬢様だから、もしかしてゲームの表紙で1番前とかになる王子かな?

 ということは正規ルートの王子……?



「失礼します」


 私が応接室の扉を開け中に入ると、机を挟んで奥のソファーに王子か座っていた。


「久しぶりですね、カナデ様」


 これは間違いない、今のセリフからして正規ルートの王子だ!

 久しぶりに再開したら……っていうゲームのやつだ!


「カナデ様、少々お話が……」


 ハール王子がそう言い顔を上げると、彼の顔は私がトラックに引かれたきっかけを作った--


 推しキャラの顔に瓜二つだった。


 これは恐らく運命だろう。


 --そう思ったが、これは『ある意味』運命と言えるだろう私の数奇な日々の始まりに過ぎなかった。

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