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舞踏会~マティスさんと一緒に~

「さて、捜索といきますか」


 アイルお嬢様と別れてすぐ、私は同行者を探すべく屋敷の中を歩き回る事にした。


 ダンスホール、廊下、食事を取れる場所を転々としたけれど、驚くほど誰にも会わなかった。


 もう帰ってしまおうか。

 そう思った時--


「うわっ!」


 よく滑る床を踏んでしまい、思わず転んでしまった。

 ……ダンスの練習で何度も転んだけれど、転ぶのには慣れないな。


「なんなの……?」


 どうして突然滑る床になったのか調べてやろうと思い、足元を見ると--


「包帯?」


 包帯の端が落ちていた。

 ……舞踏会で包帯?


「アハハ、お嬢さんもやられましたか!」


 包帯を手に取ってまじまじと見つめていると、知らない男の人に声をかけられた。


 --知らない人について行ってはいけません!


「はい。 お見苦しい所を見せてしまい、申し訳ございません」


 これ以上無いというくらいの笑顔を浮かべている男に少し恐怖を覚えた。

 出来るなら早くこの男から離れたい!


「お手をどうぞ?」


 私の前に男の左手が出された。

 --掴まないと立ち上がれないけれど、掴まったらいけない気もする。


「いえ、結構です。」


 そう言い、自力で立ち上がろうとしたけれど--


「きゃっ!」


 自分のドレスを足で踏んでいたようで、床に尻もちを着いてしまった。


「ふふっ、可愛らしいお方ですね」


 今度はより近く、男は私の前に手を出した。

 --取るしかないか。


「お言葉に甘えて……」


 渋々手を取り、立ち上がらせてもらう。

 さて、逃げなきゃ。


「あの、離していただけませんか?」


 私は立ち上がれたのに、男は私の手を離そうとしない。 むしろより強く握り始めた。


「いえ、こうなったのも何かの縁です。 一緒に踊っていただけませんか?」


 笑顔を崩さないまま、ダンスホールに連れて行こうと男は強く私の手を引く。


「い、嫌です!」


 怖すぎるでしょこの男!

 こんな奴に恩もクソも無いわ!


「なぜです? 貴方様から私の手を取ったではありませんか」


 いや、手を取ったってそういう意味じゃねぇか

 ら!


「た、助け……」


「私の連れ人を見つけて頂き、ありがとうございます」


 助けを呼ぼうとすると、真後ろから男が私の腕を掴んできた。

 --手には包帯が巻かれている!


「どなたです?」


 男の目が変わった。

 邪魔が入った事が気に食わないんだろう。


「貴方が連れ去ろうとしている女性の付き人でございます。 先程、私が少し目を離した隙に見失ってしまったのです」


 包帯が巻かれている男は私と、私を連れて行こうとした男の手を離した。


「マ、マティスさん!」


 手を離された瞬間、マティスさんの後ろに隠れた。

 怖かった……!


「なんだ、お連れ様がいらっしゃったのですね?」


 男の笑顔が止み、真顔に…… いや、マティスさんを恨むように睨んでいる。


「はい。 探して頂き、感謝致します」


 マティスさんはそう言うと私を連れて別の場所へと移動した。




「こ、怖かったです……!」


 私の言葉だと思う? 残念、マティスさんの泣き声さ!


 マティスさんは私を連れて男から離れた後、人目のつかない場所まで移動したらヘタリ込み、情けない声を出した。


「マ、マティスさん泣かないで! カッコよかったですよ!?」


 むしろカッコよかった分、今がすごくダサく見える。

 男らしさが全てが残念に変わった。


「ほ、本当ですか……?」


 目が潤んでいる。

 いや、泣きたかったのは私の方なんですけど。


「はい、だから自信もって下さい!」


 今度は私が左手を差し伸べる。

 するとマティスさんの包帯が巻いてある右手が私の手を掴み、立ち上がる。


「はい。 カナデさんが困っていそうだったので、咄嗟に声をかけていました……」


 その咄嗟の出来事が無ければ、私は今どうなっていただろうか……


「本当にありがとうございました。 あ、そうだ!」


 繋がれたままのマティスさんの右手を強く握り直す。


「このまま、一緒に踊りませんか?」


 ダンスは男から誘う物だとダンテが言っていたけれど、まぁ例外もあるよね?


「えっ、えぇっ!?」


 マティスさんは半歩下がり、素っ頓狂な声を出した。


「わ、私なんかで良いんですか……?」


 ?

 何を言ってるんだろうこの人は……


「お礼も兼ねてです。 あと、マティスさんと色々話したい事があるので」


 私が手を引き、ダンスホールへと向かう。

 もちろん女性が手を引いてダンスをするなんて、例外だ。


「わ、私にっ!?」


 でも顔を真っ赤にしている彼にそうな事は出来なそうなので、私が連れていく。


「わ、私はダンスの練習なんてした事ないですよ!?」


 そう聞いて私は一度立ち止まり、マティスさんの方に振り返る。


「上手くても下手でも、私はマティスさんと踊りたいんです。 駄目ですか?」


 顔が赤く、夕日のようだ。

 そこまで照れなくてもいい気はするけれど……


「い、いや…… だ、駄目じゃないです……」




 マティスさんは練習したことが無いと言っておきながら、一回も転ぶようなことは無かった。


 私も転びませんでしたよ?

 転びまくったと思っていたらざんねんでしたね!


 私達は話しながら優雅に踊った。

 そして、私は一つある事に気づいた。


 マティスさんが包帯を落としていなかったら、あの男に会わなかったんじゃないないの?

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