舞踏会~ベルンと一緒に~
あ、いた…
アイルお嬢様と別れてからものの数分で同行者の1人を発見した。 発見したけど…
「ベルン様! 私と一緒に踊って頂けませんか!?」
あの中に入っていく勇気がない!
と言うよりアイルお嬢様の取り巻き達はどこ行った!
よし、ベルンは諦めよう。 さて、他に誰か…
「カナデ! 助けてくれ!」
…あの馬鹿! 今は呼ばないでよ!
えっちょ、尻尾出てる!!
「カナデ?」
アイルお嬢様が私の方を向く。 いや、そんな事より早く尻尾しまえ!
「あっ、ベルン!」
そう。 私はたった今ベルンに気づいた。それに尻尾なんて知らない!
「なんだ、カナデと踊るつもりでしたのね?」
アイルお嬢様は気に食わなそうな表情をした
…ざまぁ!
「ええ。 申しわけございませんが…」
申し訳ございませんがベルンさんよ、尻尾が出っぱなしですけど…
「でしたら私とカナデの2人と踊ってみて、楽しかった方と踊り続けるのはどうでしょう?」
…負け戦じゃないですか!
何? あの女は私がダンス下手な事知ってるの!?
「俺は別に構いませんけど… 」
おいベルンよ、お前何を言ってるんだよ
お前が構わなくても私が困るんだよ!
「なら決まりね! カナデ、こっちよ!」
アイルお嬢様が私を大きく手招きする
いやぁ、すごく行きたくない!
「じゃあ私が先にお願いしても良いかしら?」
渋々2人に近づくや否や、アイルお嬢様は先に踊りたいと申し出た
…先でも後でも結果は変わりませんよ! 安心しやがれ!
「構いません。 カナデ、ちょっと待っててくれ」
待って… ベルンってダンスの練習してたっけ!?
アイツ私が転び続けてたの見て笑ってただけだよね!?
「大丈夫。 俺は優秀なオオカミ男だから、カナデみたいにすっ転んだりしないよ」
…あの野郎! すれ違いざまにディスってきやがった!
…なんでだ? なんでベルンはあんなに上手いんだ? アイツただ見てただけじゃん!
「お上手ですねベルン様。 とても踊りやすいです」
アイルお嬢様も私と比べるなんて厚かましいと思えてくるくらい上手かった
…いや、私が壊滅的なのか
「いえ、私は普通に踊っているだけですよ」
ベルンもベルンでなんだよアイツ! なに調子こいて、しかも褒められて鼻の下伸ばしてるんだよ!
…帰ろ
そう思い、私が踵を返して歩き始めようとした瞬間
「待って!」
ベルンがアイルお嬢様とのダンスをいきなり中断し、手を離すと私の元に駆け寄ってきた
「どこ行くんだよ。 まだカナデと踊ってない」
ベルンに両手を握られ、逃げられなくなった
…あ、いつの間に尻尾しまったんだ。 じゃなくて!
「負け戦を、しかもアイルとの勝負で負けるなんて嫌よ。 だから帰る」
…ああ、まるで面倒臭い女の典型だ!
でも露骨に敵対心を剥き出しにしてくるアイルお嬢様にだけはどうしても負けを認めたくなかった
「馬鹿か」
なっ…!
飼い主に向かって馬鹿だと!?
「この勝負の勝敗は俺が決めるんだ。 だからさ…」
ベルンは私と繋いでいた手を移動させ、私をリードする姿勢を取った
「俺を楽しませてみろよ、カナデお嬢様」
ニヤリと笑うとステップを取り始めた
アイルお嬢様の言う通り、確かに上手い。 ダンテより遥かに…
「初めて会った時は人のベッドで泣いてたのに、随分言うようになったね」
「俺を楽しませてみろ」なんて言われたからには本気でやる。 そのためにまずは煽ってやった
「うるせぇ。 あの頃は不安だったんだよ、狼族の事とか色々と」
…最近ただの馬鹿じゃなくなったよね?
優秀だとか自分で言ってたけど、まさかここまでの紳士に成長するなんて思ってなかった
「最初はなんだこのガキ程度にしか思ってなかったけど、最近は優しいよね。 どうしたの?」
よし、この調子で上げて落とす作戦を取り続けるぞ…
「カナデの屋敷に置いてもらってる以上、追い出されないように頑張ってるだけ」
なるほど。 頭いいな…
いや、元から頭は良かったか。 箸とかナイフとか見ただけで使えてたし
「そう。 …話変わるんだけどさ、ダンスの練習ってしてたっけ?」
ベルンのリードによってかは分からないけれど、数分踊っていても未だ一度も転んでいない
「いや? カナデとダンテの練習、特にダンテのステップ見てただけ。 そしたらこう」
…ただの天才かよ!
しかも私が転んでばっかりで練習どころじゃなかったけど!?
「凄いね… カッコイイよ!」
私がそう言った途端、ベルンがステップを間違えて2人で転倒してしまった
…私もドレスの裾を踏んでしまい、支えきれなかった
「ごめん、大丈夫!?」
私がベルンに馬乗りになる形で倒れたが、ベルンは私の手から離していた右手の甲で口元を押さえていた
「大丈夫… だから降りてくれ…」
私はすかさずベルンの上から降って起き上がらせようと手を貸すも、払いのけられてしまった
「顔赤いよ? もしかしてアイルお嬢様に何か…」
いや、面食い女がイケメンを攻撃するなんて事は… ヤンデレなら有り得るな
「大丈夫だって!」
そう言うとベルンはどこかへ走り去ってしまった
…勝負はどうなったの!?
「お嬢様、ベルンが何やら『お前の勝ち』とお伝えして欲しいと仰っていましたが、何のことでしょうか?」
数分後、ダンテが私に勝敗を伝えに来た
…あれで勝ちだったの!? 判定ガバガバじゃない!?
「もしかして、どちらが先に声をださせ…」
「違うから!」




