舞踏会~ダンテと一緒に~
アイルお嬢様と別れて皆を探そうと思ったけれど、どこにも見当たらない
…帰ってないよね!?
まぁ1人は嫌でも目立っていて見つけやすかったけど、あんなに人がいるところに突っ込んでもみくちゃにされるのも嫌だなぁ…
ダンスホールのやや奥まった所に1人の男性が女性に囲まれている。いや、[まだ]囲まれている
「すみません。 あそこっていつからあんなに人だかりが?」
お酒だろうか。 シャンパングラスが乗ったトレーを持ったウェイターにダンテの安否確認も兼ねて聞いてみた
「真ん中にいらっしゃるお客様がダンスホールにいらしてからずっとあの様子ですよ。 それより、どうです?」
ウェイターはトレーを私に近づけたけれど未成年だし、遠慮しておいた
未成年飲酒、ダメ、絶対!
「…帰りたい」
舞踏会でまさか私たちの屋敷よりおおきな場所がこんなに人でいっぱいになるなんて思ってなかったので人に酔い、疲れてしまった
「キャッ!」
食事が置いてある場所に行こうと思っていたら突然右手首を引かれ、連れていかれる
…こんな場所で堂々と誘拐!?
「ちょっと、どなたですか!?」
まさかアイルお嬢様が誘拐までさせる人だったなんて…!
あの女ヤバいな!
「何を馬鹿な事をおっしゃっているのですか? まさか、また記憶喪失になられましたか?」
いや記憶喪失だったらしいけどなって無いです!
いや、その前にこの声は…
「ダンテ…?」
私の手首を引く誰かは人気の少ない場所まで私を連れていき、そっと手を離した
「はい。 どうしましたか?」
腕を引いた誰かは先程まで女性に囲まれていたダンテで、私の方に振り向いてから名前を口にした時の返事を微笑みながらした
「どうやってあの人混みから…?」
だってあの人だかりはまだあるし、替え玉でも使った…?
「ああいうのは慣れていますから。 隙を見て抜け出しましたよ」
自分がモテてるのを自覚しているのかコイツは!
世のモテない男性達に謝罪しやがれ!
…いや、お前に言い寄ってた女性陣かわいそうだわ!
「かわいそう。 せっかくダンスホールに踊りの誘いをしていたのに…」
コイツの悪びれもしない顔がなんかムカつく… 少しは女心を分からないと売れ残るぞ!
「全く… お嬢様は男心を理解なさっていませんね…」
分からないよ! 男になった事ないし!
恋愛ゲームの選択肢みたいなのが出れば別だけどね!
「ええ分かりませんよ。 じゃあ教えて下さる?」
どうせ鬱陶しいからとか、面倒臭いからとかでしょ? だてにゲームの男を落としまくってませんよ!
「私、お嬢様以外とは踊りたく無いので」
…ん?
ダンテはそう私の耳元で囁くと右膝を床に付き、私の右手を取るとそっと口付けをした
「私と一緒に踊って頂けないでしょうか。 もちろん、リードは任せて下さい」
ダンテの行動と真っ直ぐな目線は私の判断を鈍らせた
…女性陣が私を睨む視線も
「はい…」
他の女性がダンテと踊りたがり、彼を狙っているのが視線からジリジリと伝わってくる
でも何故か彼を譲りたくない。そう思ってしまった
決して彼の綺麗な顔立ちに釣られてとか、女性陣の視線が怖いからとか、そういうことでは無い
…彼の真っ直ぐな姿勢に答えなければいけない。そう思った
「良かった…」
ダンテが珍しく心の声を口にした
カッコ悪いからとかではないけれど、何故か口元が緩んでしまった
「笑ってる場合ではありませんよ。 お嬢様の踊りは下手なのですから」
やっぱりドタキャンしてやろうかな…!
いい雰囲気だったのにぶち壊しやがったな!?
「まぁ、私が3時間も指導してあの出来というのも奇跡ですよ。 いや、あれは私が必要だと示すためにわざと…?」
んな訳あるかバカ!
確かに3時間練習してずっと転んでた記憶しか無いけど、初めてやったにしては頑張ったよ!?
「うるさい。 そんなわけ無いでしょ?」
いや、でも自分の身体能力の低さには驚いたわ
ドレスの裾は踏みまくったし、ヒールで足をくじきまくったし…
「でも産まれたての子鹿みたいで可愛らしかったですよ? あわよくば、そのまま寝室まで行ってベッドに押し倒したいくらいに」
…この変態が!
イケメン執事だから良かったもの、これで今日初めて会ったブスとかだったらセクハラだったわ!
「うるさいわね変態。 黙ってエスコートして!」
そう言うとダンテはすました笑顔を浮かべて立ち上がり、ダンスホールの真ん中へと私の手を引いて移動した
「Shall we dance?」
ダンスホールで1番大きなシャンデリアの真下で、私をこんな所まで連れてきた変態は答えがわかりきっている質問をしてきた
顔が良いのがなんかムカつくな…!
えっと、確か…
「Sure, l’d love to」
そう応えるとダンテは右手を私の腰に回し、左手を私の左手と繋いでステップを踏み始めた
「よく言えましたね。 お教えしておいて良かったです」
ダンテは私を見つめながら余裕な表情を浮かべている。 これが大人の余裕ってやつか…!
「使う相手がダンテだなんて最悪だよ」
…っ! 裾踏んじゃった、倒れる!
「全くもう…」
ダンテは動じることなく別のステップを踏み、何事も無かったかのように私に踊り続けさせた
「お嬢様は下手なんですから、話す暇があるなら足元に気を配って下さい」
分かってるってば…
「もし次同じような事をしたら、今晩は眠らせませんからね」
ハァ!?
ニヤッとしやがってこの変態め! 絶対寝てやる!
「ふんっ! 今日は思う存分寝てやるわよ!」
…たった1晩、たった1度踊っただけで私のダンスは見違えるほど成長した
…夜? もちろん熟睡してやったわよ




