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主人公のお嬢様②

「ふふふ。 みんな集まってくれてありがとう!」


 ベルンやダンテ達の協力もあり、アイルお嬢様が帰ってから3時間程でアッシュを除いて全員集める事が出来た


「カナデちゃんに来てって言われたら来るしかないでしよう?」


 九尾の紅緑(こうりょく)さんは以前会った時と同じ赤い着物を身にまとっていた

 …右手のパイプをどうにかして!


「ああ。嫁に呼ばれちゃあ断れねぇよ」


 鬼の慎平(しんぺい)も(来て欲しく無かったけど)来てくれた

 …だから結婚するなんて言ってないし!


「カッカッカッ! カナデさんは人気者だねぇ、妬いてしまうよ」


 烏天狗の涼佳(すずか)さんはいつもの黒い着物を着て、壁に寄り掛かりながらお面をクルクル回している


「やっぱり人がいっぱいいると楽しいね!」


 今日森に帰るはずだったエルフのリーフに1日だけ帰るのを延期して欲しいと頼んだら、彼女は快諾してくれた


「あ、あの… カナデさん… あそこ、けっ、喧嘩が始まっちゃったみたいだけど…」


 ミイラ男のマティスさんは今日は客引きの仕事は休みだったらしく、無事に来てくれた

 余談だが包帯は身体の部位ごとに巻くようにし、一気に取れる事を防ぐ事に成功したらしい


 気づくと紅さんと慎平が口喧嘩を始めていた。 しかも慎平はどこかから取り出した金棒を今にも振りかざそうとしている


 犬猿の仲… いや、狐鬼の仲か…


「仕方ないな。 俺が止めてくる」


 狼男のベルンがやれやれといった顔で2人に近づく


「おいお前ら、屋敷の中で喧嘩するなよ! 壊れたらどうするんだ!」


 …そう簡単に壊れそうな作りじゃないと思うけど!


「あぁん? んな文句はコイツに言え。 コイツが俺様の嫁は俺様のモンだって言ってんのに聞かねぇんだよ」


 オマエのお嫁さんになった記憶は無い!

 やっぱり慎平は呼ぶべきじゃなかったか!


「カナデはモノじゃねぇぞ。 喧嘩を辞めないなら…」


 ベルンは空中で一回転し、狼の姿に変身する。 恐らく慎平に噛み付こうとしているんだろう


「ほらほら、カナデちゃんが困っているでしょう…?」


 紅さんは2人から少し離れた壁に寄り掛かってパイプを吸っている

 …貴方が慎平を怒らせたんだからね!?


「まったく… 私が行きましょう」


 後ろにいたマンドラゴラが私の右肩にポンと片手を置き、今にも戦闘を始めそうな2人に歩み寄る


「死ね!」


 ついに慎平が金棒を振り下ろした。 ベルンも交戦しようと牙がびっしりと生えた口を大きく広げた


「…お嬢様を困らせにいらっしゃったのならお帰りください」


 マンドラゴラは頭に金棒を振り下ろされ、ベルンに身体を噛みつかれているのに何事も無かったかのようにそう告げた

 …彼女はいつも無表情か


「ただい… 何があったんだい?」


 出張から帰ってきた庭師のジャック(元ヤクザの総長)はリビングに入ってくるや否や目の前で1人の女性(?)が金棒で殴られ、狼に噛まれている謎の状況に言葉が出ないようだ


「おかえりなさいませジャック様。 ご安心ください、戯れているだけでございます」


 集まった全員分の紅茶を持って執事のダンテ(暗殺者)がリビングにやってきた

 …戯れるレベルじゃないだろ!


「皆さん! 紅茶とパウンドケーキの準備が出来ましたので一緒に食べましょう!」


 ダンテから数歩遅れて料理長のハータム(ドワーフ)がダイニングから小分けされ、お皿に乗ったパウンドケーキを持ってきた


「喧嘩は中断させて下さい。 紅茶が冷めてしまいますよ」


 いつの間にかマンドラゴラの頭に振り下ろされた金棒を取り去っていたメイドのカノン(クノイチ)がそう告げた




「という訳で、明日の夜に皆でデスティネ公爵邸に暴れはしないけど殴り込んでやろうかと」


 全員にこうなった経緯を全て話し、特にどのような事をして欲しいのかも各々に説明した

 すると満場一致で承諾してくれた


「悪役令嬢っぽいよ。 良い意味でね」


 ソファーに座っている涼佳さんはニヤリとして私を見た

 そう。良い意味で悪役令嬢。 主人公のハッピーエンドへの進行を妨害する、それこそ私の仕事だ


「そうねぇ。 でも私は悪役だったとしてもカナデちゃんの味方よ?」


 壁に寄り掛かっている紅さんは目を細め、怪しげに微笑む


「カ、カナデさんは私達にや、優しくしてくれたから… 悪役だなんて事は… 思った事ないよ…?」


 マティスさんは左手の包帯を巻き直している


「おう。 お前はテンプレの主人公より面白い考え方してやがるからな」


 ダイニングテーブルとセットになっている椅子に脚を組み、腕を組んで座っている慎平がニヤリと笑う


「うん。 それにカナデは優しいし!」


 ソファーに座り、ティーカップを持ったままのリーフが微笑む


「お嬢ちゃんはこんなに異種族の人達に好かれて、誇りに思った方が良いよ?」


 ジャックはそう言い、パウンドケーキの最後のひとかけらを口に入れた


「お嬢様の誰とでも分け隔てなく接する所は素晴らしいと思いますよ!」


 ハータムがテーブルの上に残されたお皿を片付けながら嬉しそうに言う


「お嬢様、私はお嬢様の元に仕えさせて頂き光栄でございます」


 カノンはティーカップを集めながら小さく笑っている


「素晴らしいお嬢様に恥をかかせるわけにはいきません。 精一杯尽くさせて頂きます」


「ありがとう。 さぁ、準備を頑張りましょうか!」



「アイルお嬢様、明日の準備が完了致しました」


 執事に準備をさせたし、あとは明日の夜まで待つだけね


「ありがとう。 下がっていいわよ」


 カナデは悪役令嬢。 つまり主人公である私にバッドエンドを迎えさせたい敵キャラ

 …なら、早いうちに片付けておかないとね


 どんなお話も悪役令嬢がハッピーエンドを迎える事なんて無いのよ!

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