怖がりなミイラ男②
「あ、あれは… 何です…?」
ミイラ男は私の背中にしがみついてビクビクと怯えている。 いや、怯え続けている
「あれは綿あめっていう砂糖で作るお菓子ですよ、フワフワしていて美味しいんです」
世間知らず…過ぎるなこれ
先程から屋台の食べ物を見ては怯え、私に質問をしてくる
「あ、甘い… んですか?」
綿あめって怖いか!?
まぁ砂糖がアレになるって考えると少し驚くかもしれないけど、危険だとかは思わなくない!?
綿あめを1度でも怖いと思った方いらっしゃいます!?
「はい。 甘くて美味しいですよ… 食べてみますか?」
百聞は一見にしかずって言うし、とりあえず食べてもらえば怖くないって分かるかな?
「は、はい…!」
…動けんっ!
ミイラ男の肩のホールドが急に強くなって動けない…!
「あ、あの! 少し手の力を抜いてもらってもいいですか?」
ここにリーフと涼佳さんがいたら助けてくれるんだろうけど…
「カナデさん、この人はワシ達を恐れているみたいだから別行動しよう」
…え!?
ちょ、ちょっと待って!
「うん。 私もそうした方が良いと思う!」
えぇ…
「じゃあ…買い物を頼んでも良いですか? 私達は回れそうに無いので」
私達は… と言うより、この人が回れなさそう…
今こうしている間にも震えてるし…
「分かった。じゃあカナデさん達はこの辺りで待っててくれるかい?」
「はい。 …なるべく早くお願いします」
「お、置いて行かないで下さい…」
置いて行くも何も、動けないんですけど…
それにガッチリ掴まれちゃってて痛いです!
「置いて行きませんから! じゃあ一緒に行きましょう!ね?」
一体どう調教すればこんな怖がりに育つんですかね!?
アレか、常にお化け屋敷に入っている感じか!?
「は、はい…」
とりあえず信じてくれたみたいだけど、ここまで来ると見世物小屋の調教師を見てみたいよ…
「すみません、綿あめを2つ頂けませんか?」
屋台のおじさんは驚いている。 当たり前だ、女子高生が包帯だらけの長身の男にホールドされてるんだから…
「は、はい! 600ゴールドです」
1個300ゴールドか、安いな…
…身体が地面に沈んでいきそうなほど手の力が強いな!
「あの、私コンクリートを突き破って地中に沈んで行きそうなんですけど…」
私の肩だけ重力の大きさが違う気がする…
「あぁっ! すみません!」
ミイラ男はようやく肩から手を離してくれた
開放感が凄い! 肩が軽い!
「ありがとうございます。 えっと…」
そういえば名前を聞いていなかった…
ミイラさんなんて呼べないし…
「マティス… です」
マティス… 偏見だけど銃とか扱ってそう
「私はカナデです。よろしくお願いします」
私がぺこりとお辞儀をマティスさんもオドオドしながらお辞儀をした
…産まれたての小鹿みたいな人だなぁ
「はいどうぞ」
屋台のおじさんは私に綿あめを2つ手渡した。 夏祭りで見る物と比べると、格段に大きい…
「ありがとうございます!」
「甘くて美味しいですね… あ、でもあまり食べてる気がしないと言うか… その…」
うん。 伝わって来ない…
とりあえず美味しいと思ってくれたみたいだけど…
「口に入れたら溶けて… 初めての感覚です… あ、でも手がベタベタしますね」
やっぱり綿あめは初めてだったか…
あぁ、手でガッツリ掴んでて溶けてるよ…
「これ使ってください! えっと… 水分を含んでるティッシュなので安全ですよ!」
まさかウエットティッシュの安全性を説明する日が来るなんて思ってもいなかったよ…
「あ、ありがとうございます…」
すると私とマティスさんの手が触れた
あっヤバイ、これ警戒心とか強めちゃうんじゃ…
「っ…! すっ、すみません!」
あれ、顔が赤くなった?
そういうフラグ今までありましたっけ!?
「あ、あの… カナデさん!」
顔どころか耳まで赤い…
今まで恋愛フラグ立ってたかな…
「包帯が… やられました!」
その包帯って防水じゃ無いんですね…!
その前に私の謎の緊張返して下さいよ!
「換えの包帯持ってますか!?」
目をうるうるさせている… 持ってないのか
包帯か… この辺に薬局無いから困ったなぁ…
「じゃあ、最終手段を取りましょうか」
この最終手段ならマティスさんを見世物小屋の人からも守れるし、人目も少なくなるはず!
…と、思っていた私が馬鹿でした
「カ、カナデさん… すごく目立ってますよね… すみません…」
私達は路地裏へ行き、私はマティスさんが嫌がったが無理やり包帯を取った
どうやら包帯は1枚だったようで、手の包帯を取ったら全身の包帯が取れた
包帯が取れたマティスさんは腕や脚は傷だらけだったものの、顔は鼻の頭と顎から口元にかけての2本しか傷が無かった
しかも鼻が高く、タレ目で、目を見ただけで優しそうな性格をしていそうだと思わせる瞳だった
想定外だった…
まさかマティスさんがこれほど顔が整っている人だなんて思ってもいなかった!




