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男勝りなドラゴン娘④

「ほら、これ飲んで落ち着け」


 俺はベンチまでカナデを運び、屋台でおばさんからオマケで貰ったミックスジュースを手渡した


「これどうしたの…?」


 俺がどこかから盗んできたとでも思ってるのか?

 さすがにそんな事はしねぇだろ…


「買い物したら貰った。 泣き疲れたろ? 飲めよ」


 そう言うものの、カナデは一向に飲もうとしない。 毒とかを疑っているんだろうか

 …チッ めんどくせぇ!


「貸せ。毒が入って無いことを証明してやる」


 俺はカナデの手からミックスジュースの入ったペットボトルを奪い、蓋を開けて2口飲んだ


「あっ、アッシュ! 大丈夫!?」


 …甘い。 でも人工的な果実の味じゃ無いな、普通に果汁を絞った物を混ぜただけっぽい


「大丈夫だ。 美味いから飲んでみな」


 ペットボトルをカナデに返すと、彼女は少し躊躇したあと1口飲んだ


「美味しい…! これ、お店で売ってるやつより美味しいかもしれない!」


 ほう、味覚はそこそこ優れているみてぇだな…


「だよな、俺もそう思った」


 俺はカナデの横に座った。 彼女にパフォーマーについての話をしたかったが、沈黙が続いて話を切り出すタイミングが分からなかった




「アッシュは人を楽しませたり、喜ばせたりするのって…好き?」


 先に口を開いたのはカナデだった

 多分、俺のパフォーマーについての質問だろう


「ああ。 そりゃあ俺の産まれ持った力で喜んでくれるのは嬉しいだろ」


 広場で女の子に火を吐いてみせた時の、彼女の笑顔が頭から離れねぇのは… 多分、俺自身が嬉しいと思ったからだ

 あの時、今まで味わった事の無かった感覚を味わった


「政府に捕まる危険があったかもしれないし、今後もあるかもしれないのに?」


 確かにな… でも、あの時の俺は…


「小さい女の子が俺の炎を見て喜んでくれて… それを見たら政府の事なんて忘れちまってたよ」


 他のドラゴン族の奴に見られてたら軽蔑されていただろうな…


「やっぱりアッシュは優しいよ。 女の子が喜んでくれて、もう少し…って続けたんでしょ?」


 俺の事見てたのかよコイツ…


「ああ。 今辞めたら悲しませちゃうなと思って」


 世界で恐れられている俺の能力を喜んでくれたのに、それを見せないで悲しませるなら見せた方が良い… そう思った


「そっか。 じゃあ話は早いんじゃない?」


 カナデはベンチから立ち上がり、俺の前に立った

 …何だ?


「良いと思うよ! あとはアッシュの意思と、勇気次第!」


 ハハ… 何だコイツ

 分かってやがったのかよ…


「カナデならそう言うと思った。 これやる」


 2000ゴールドで買ったペアブレスレットの片方をカナデの手元に投げた


「綺麗! あ、これを買ってミックスジュースがついてきたのか!」


 察しがいいな。 いちいち説明しなきゃいけない奴よりは全然いい


「おう。 ペアブレスレットだからな、絶対無くすなよ?」


 俺はそう言い、炎を吐いた広場に向かう事にした。 今日中に返事をすると言ったからピエロのおじさんはまだいるだろう…


「大切にする! 頑張ってね!」


 はぁ… あの女は本当に…!


「当たり前だ、生半可な気持ちで行こうと思ってねぇよ!」


 いちいち俺の心が揺らぐような発言ばっかしやがる!


「辞めたくなったり、辛くなったりしたら、いつでも帰ってきて良いからね!」


 それにいちいち面白い事ばっかり言いやがってよ!


「んな事しねぇよ! あ、それからよ!」


 これからカナデやリーフは勿論、仲間にも会えなくなるかもしれない。 多分、コイツがしばらく俺が話す最後の友人になるかもしれない


「帰ってきたらお前と一緒に暮らしてやるよ! お前は口うるさいし、癪に障る事ばっかり言うけど良い事言うし、優しいからな!」


 俺はカナデにそう伝え、広場へと足を進めた

 …1度も振り返りはしなかった




「返事をしに来ました」


 広場に着くとピエロのおじさんは次のパフォーマンスの準備をしていた

 声をかけると首だけが俺の方をすぐに向いた


「おお、もう来てくれたのかい?」


 今日中に返事をしに来ると伝えてから1時間も経ってないからな、驚くのも無理はない


「はい。友達に助言を貰って、心に決めました」


 おじさんは手に持っていたジャグリングの道具を地面に置き、体を俺の方を向けた


「最初は迷っていたんです。 俺はドラゴン族だし、下手したら人に危害を加えてしまうかもしれないって…」


 おじさんはニコニコしている。 だが営業スマイルでは無いと一瞬で分かった


「でも炎を吐いて、小さな女の子が喜んでくれたのを忘れられなくて… もっと沢山の人に喜んで欲しいと思ったんです」


 今日、俺は生まれて初めて[夢]を見つけた


「そしたら友達が、俺は人を楽しませたりする事が好きなんだって気づかせてくれたんです。 ほぼ誘導尋問みたいでしたけど」


 ドラゴン族に産まれて、人に極力近寄らせないようにしていた俺がようやく[目標]を見つけた


「だから俺は、貴方の下でパフォーマーになります」


 遠の昔に消えたと思っていた、[私]の存在意義をあの女は思い出させた


「世界で俺を知らない人はいないと断言出来るくらいのパフォーマーに!」


 おじさんは満面の笑みを浮かべていた。 ピエロの化粧が霞むくらいの、これ以上無いくらいの笑顔だ


「良い心意気だね。 でも君の夢を叶える為には何百、何千万の人を超え、何十億の人間を喜ばせなきゃいけない。 とてもキツイ道のりだよ?」


 何を今更… そんな事分かってるさ


「それでもやります。 貴方が死ぬまでにやり遂げてみせますよ」


 次にあの面白い女に会った時は、心の底から楽しませてやる…

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