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無感情のマンドラゴラ娘②

 部屋の鉢植えにジャックから渡された緑色に濁った水をやると鉢植えから女の子が出てきた!


「お嬢様、何をそんなに驚いているんです?」


 無表情で淡々と話す所が怖いが、鉢植えに植えてあった花が女の子になったのも充分に怖い……!


「えっと、記憶喪失になっちゃって……」


 転生してきましたなんて言えるはずもない、ここは記憶喪失設定を貫こうじゃないの!


「大変ですね……」


 リアクション薄っ! 自分をお世話してくれてる人が記憶喪失になったら普通もっと焦るんじゃないの!?


「ああ、私の名前覚えてますか?」


 人の話聞いてた?この子……

 記憶無いんだってば! いや、あるけど!

 ここでの記憶なんて物はこれっぽっちも無いんだって!


「ご、ごめんなさい……」


 どうして私が自分で育てている植物に謝っているんだろう……


「私はマンドラゴラです、よろしくお願い致します」


 マンドラゴラ……!?

 マンドラゴラって引き抜くと大声で鳴く奴でしょ?

 見たところ美少女だし、最近のマンドラゴラって品種改良でもされたの?


「私はお嬢様の飼育によって引き抜かれても鳴かなくなりましたので、ご安心を」


 ……飼育?

 マンドラゴラを飼育していたの?


「ご質問はございますか?」


 質問どころか聞きたいことばかりなんですけど……

 あ、今は顔と手足だけ出てるけど完全に出てこれるのかな……?


「全身って外に出せる?」


 さすがに頭と四肢を外に出せるんだから体を完全に出せるでしょ。


「少々お待ちを」


 出来るみたいだ。

 ……男の娘っていう可能性も無きにしも非ずだし、一応確認をね?


「出来ました」


 おお、ずいぶんと土をぶちまけたなぁ… 掃除が大変だこりゃ。

 ……これは誰がなんと言おうと女の子。 いや、女の人だな。


「えーっと、とりあえず体を拭いて服着ようか……」


 まさか全裸で出てくるとは思ってなかった……

 土である程度は隠れていたとはいえ、さすがにあの格好はまずいよね…?


「それでしたら」


 マンドラゴラは目をつぶると体が少女向けアニメのような光で包まれ、光が消えるとツタや葉っぱで出来た服を着ていた。


「これでよろしいでしょうか?」


 魔法少女とかその類の子かと思った……

 今のは魔法だろうか、これがあったら便利だろうなぁ……


「うん、バッチリ!」


 そう答えると突然マンドラゴラが私をベッドに押し倒した、何だ! 何をする気だ!?


「お嬢様、最近ダンテに何かされましたか?」


 ダンテって誰だよ……

 記憶喪失だってさっき言ったじゃん!


「ダンテって……?」


 本当に誰だか分からない。 いや、出てくるけど恋愛ゲームのキャラクターしか出てこない……!


「お嬢様の殺し屋執事です」


 ああ、ダンテっていうんだあの人……

 一昨日あんな事やこんな事を…いや、やめておこう。 私は何も知らない。


「特には何も…… どうして?」


 意味もなく何かされたかなんて聞かないだろう、部屋にあの男の私物でもあったんだろうか……


「お嬢様からダンテの匂いがします」


 お、おう、随分と直球で言うな……

 匂いって…… あれしたって言ってたの3日前でしょ? 鼻いいんだなぁ……


「さっき会ったからかなぁ…… あははっ!」


 マンドラゴラ娘…… 侮れないな!

 というより燕尾服男が一昨日の夜にした事とと同じ事をされるかと思ったよ……!


「失礼しました」


 ……失礼しましたと言ったのに何故どかないんだろうこの子は。

 いや、でも退いてって言うのも何か悪い気がするし……


「ではお嬢様、私と一緒にこのまま……」


 まっ……!


「待って! さすがにそれは駄目だよ!」


 言ってしまった…… でも今言っていなかったら確実に…… だよ、うん!


「……? 森の湖へ沐浴しに行くのは嫌でしたか?」


 あ、もっ……沐浴?

 恥ずかしいパターンだよこれ……


「ううん、ちょっと気分が優れなくて……」


 正直少し気が引けた、マンドラゴラと沐浴するなんてした事も無いし、聞いた事も無い。


「分かりました、では後日行きましょうか」


 マンドラゴラは楽しみにしていたように見えた、何だか悪い事をしてしまったかもしれない……


「1週間以内には必ず行けるようにする! だから今日はごめんなさい!」


 私は素直に謝った。

 マンドラゴラとの約束をドタキャンしてしまったからだ。


「いえ、具合が悪いのでしたら強要できませんよ」


 優しいなこの子は……

 普通ドタキャンされたらもっと怒るはずだよね……


「では私は鉢植えに戻ります、お休みなさい」


 マンドラゴラはそう言うと鉢植えの中に脚がや腕を突っ込み始めた。 魔法を使えるのに着方と帰り方は原始的なんだな……


 マンドラゴラは先程までの普通の花に戻った。

 明日からも毎日水…… あの緑色に濁っている水を与えなくては。


 号に入っては郷に従えとはこの事だろう……

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