男勝りなドラゴン娘②
「着いたな。煮干しから買いに行くか」
私とリーフとアッシュは馬車に乗り、屋敷から1番近い街に買い物をしに来たが…
「アッシュ… 待って… うっ!」
スタスタと街の中を進むアッシュに対し、リーフは馬車の揺れに酔ってしまったため、フラフラしている
「大丈夫? 向こうのベンチに座って待っててもいいよ?」
さすがに酔っている子を街の人混みの中に放り込めないよ…
仮に我慢している物が出たら…ねぇ?
「ううん。 行きたい…」
行きたいっていう気持ちは充分伝わってきてるけど…
顔色からしてアウトじゃん!
「分かった… じゃあ少し休憩しようか」
リーフを日陰の中にあるベンチに運び、座らせた後に私も隣に座った
…アッシュどこ行った?
「アッシュどこに行ったか分かる?」
煮干しを買いに行くと言って迷わず進んで行った所までは覚えているんだけれど…
あの人ここ来るの初めてって馬車の中で言ってたよね!?
「干物屋…? そういえばこの街に干物屋ってあるの?」
え、あるんじゃないの?
もしかして無かったりする!?
「分からない… とりあえず分かったことは…」
人混みでごった返している街、そこそこ気温が高く快晴で日差しが強い、どこに行ったか分からないアッシュ
この3つが揃った今、言えることは一つ
「ヤバいね」
自然と語彙力が低下した気がした
「ヤバい」しか言えない女子高生を馬鹿に出来ない事態にまで陥ってしまった…
「ごめんねカナデ、私が馬車に酔わなければ…」
リーフの長い耳が下に垂れる。 落ち込んでいる証拠だろう
「大丈夫、誰にでも苦手な物はあるよ!」
そうリーフを元気づけながら、解決策を練る
アッシュをどうやって捜索しよう…
迷子センター? 警察? 屋敷に電話? 肉で釣る?
「カナデ、私ここで待ってるからアッシュを探してきて良いよ…?」
…察されたか
でも完全に体調が治っていないリーフをここに置いていけない…
「あれ、カナデさん?」
目線をリーフから前に戻すと、片目を隠し黒いTシャツと白いズボンを身にまとった男性が立っていた
「涼佳さん?」
以前より会った時は着物を着ていたので一瞬では誰だか分からなかったが、顔を見たらすぐに分かった
「久しぶりだね、リーフちゃんも一緒なのか。 こんな場所で何をしているんだい?」
私は立ち上がり、涼佳さんに事の経緯を全て話した
「なるほど。 それは大変だねぇ…」
いやいや、「大変だねぇ」じゃ済まない状況に立たされてるんですけど…
かなり緊急事態だし、もはや事件ですよ!?
「ワシもそのアッシュさんの捜索に協力しよう。 その方が手っ取り早い」
涼佳さんは腰のお面を取り、顔にはめようとした
…ちょっと待たんかい!
「す、涼佳さん! もしかして烏天狗の姿に変身する気ですか!?」
涼佳さんは不思議そうな表情で私を見た
当たり前だろと言いたげだ…
「ワシが変身して何か不都合な事があるのかい?」
不都合どころじゃ無いです、大問題が発生しますって!
しかも涼佳さんに害が及ぶやつ!
「はい。もし街に来ている方々が涼佳さんが烏天狗の姿で飛んでいるところを目撃したら、涼佳さんが色々な方面から狙われます!」
下手したら解剖とかされちゃうかもしれない…
「かなりの人がいるけど、この人混みの中を空を見て進む人はいないと思うよ…?」
リーフは少しふらつきながら立ち上がった
だいぶ治ってきたみたいだ…
「そっか、そうだよね。 じゃあお願いしても良いですか?」
そう聞くと涼佳さんは二つ返事で承諾してくれたので私とリーフは陸から、涼佳さんは空からアッシュを探すことにした
「あれくらい余裕だろ…」
3人がアッシュの捜索を始めた頃、アッシュは煮干しの袋が敷き詰められているダンボールにを持ちながらストリートパフォーマンスを見ていた
「なぁ、これって凄いのか?」
近くで見ていた幼稚園児くらいの女の子に火を吐くパフォーマンスの凄さについて尋ねていた
「すごいよ! おにいちゃんはこういうの、みたことないの?」
見たことない事は事実だが、火は普通に吐けるからな… 人間は火を吐くだけで喜んでくれるのか
「無いって言うより、お兄ちゃんはやる練習をしてて火を吐くのはすぐ出来ちゃったんだよ。 見るかい?」
もちろん練習なんてした事は無い。 でもこの女の子が喜んでくれるならやってやるってだけだ
「いくよ…?」
空を見上げて小さくだが火を吐いた。少女は飛び跳ねながら喜んでくれている
「おにいちゃんすごい! もういっかいやって!」
本当はそんなに人前で見せちゃいけないんだけどな… 喜んでくれてるし、もう1回くらいなら…
「ねぇ君、私にも見せてくれるかい?」
気づくとストリートパフォーマンスをしていたピエロのおじさんも中断し、俺の所に来ていた
…これはまずいな、ドラゴン族ってバレちまうんじゃねぇか?
…でもここでやめたらガッカリされちまうよな
「じゃあ皆、少し離れててくれ」
俺を真ん中にし、今までパフォーマンスを見ていた人達が俺に集中している
…ここまで来たら楽しませてやらねぇとな!
俺は空中に炎を吐き、形を自由自在に変えて見ていた人を驚かせ、楽しませた
「素晴らしかったよ、お名前は?」
俺のパフォーマンスが終わると、ピエロのおじさんが一目散に俺に駆け寄った
…正直に答えるか
「アッシュです。 あの、さっきのは…」
するといきなり手を握られた
手はマメや皮が剥けている所が多く、ゴツゴツしている
「ああ。 君はドラゴン族の子だろう?」
…バレたか、ならとっとと逃げなきゃな
下手したら政府の研究所にでも連れて行かれるかもしれないしれねぇ
「どうだろう、このままパフォーマーになってみる気は無いかい?」
は?
何を言ってるんだこのおっさん…
「あの、俺のことドラゴン族って分かったんですよね、政府とかに連絡しなくて良いんすか?」
ドラゴン族は1度、人間に危害を及ぼした為に[危険種]に指定されて以降、それは緩和されていない
だからなるべく人目を避けたかったが…
「ああ、分かったさ。 でも君は人を喜ばせるために炎を吐いた。人を離れさせ、誰にも危害を加えないように、空に吐いた」
ホントに何なんだこのおっさん…
「君は良いドラゴンだ。君を見た人達がそれを証明してくれるさ、それに君が政府に捕まりそうになったら私が君を守ろう。いや、捕まらないように手助けしよう」
俺を手を握るおっさんの握力が少しずつ強くなってくる
「だから… どうだい?」
なんだコイツ、初めて会ったタイプだ…
変な人間もいるもんだな…
「答えは少し待ってくれ、今日中には返事をする」
俺はそう言い残しておじさんの手を除け、俺の炎を見るために集まっていた人々をかき分け、カナデとリーフを探し始めた




