料理長のショタ①
「「頂きます!」」
紅さんと別れて屋敷に戻り、私はジャックと夕食を食べる事になった
「ジャックはどうして皆と食べなかったの?」
テーブルには2人分のフランスパン、ポトフの入った器、チーズの入ったオムレツなどが乗ったプレートが置かれている
何10人も同時に使うことが出来る大きなテーブルを2人で使うとどこか寂しく感じる…
「お兄さんはお嬢ちゃんと食べたかったからね。 他に理由はいるかい?」
…イケメンだ!
見た目は既にイケメンだが、中身もイケメンだとは!
「フフッ、顔が赤いよ? もしかして照れてくれたのかい?」
当たり前じゃないですか!
こんな完璧なアニキにそんな嬉しい事言ってもらえて照れない女はいないですって!
「いや、まあ… うん…」
何て答えればいいんだ…!
恋愛ゲームの選択肢みたいなの出て下さい!
「お食事中失礼します!」
料理長のハータムが小さいプレートが2つ乗った白いトレーを持って入ってきた
「食後にこちらのマドレーヌを召し上がってください! よいしょっと…」
身長が足りなくて背伸びをしている… 可愛い!
「ありがとうハータム」
私が彼に微笑むと彼は照れくさそうにコック帽を被ったまま頭を掻いた
「こちらこそありがとうございます、お嬢様。 おかげで久しぶりに紅緑さんに会えて嬉しかったです」
…紅さんを知っているのか
あの人の人脈は広そうだけど、ハータムが知っているのは驚いた
「紅さんとは知り合いなの?」
私は切られたフランスパンを1つ手に取り、ハータムに聞いた
「はい。 ここに雇われる前に川で溺れかけていたところを助けてもらったんです!」
…!?
紅さん、まさかの命の恩人…!?
「それは運命的な出会いをしたね、大切にしないとだね」
流石ジャック、良いこと言う…
でも紅さんがその時近くにいなかったら、ハータムは今ここにいない事になるのか…
「そうですね! 今となっては川に溺れかけたのも良い思い出です!」
いや、結果オーライだったかもしれないけどさ!
普通は良い思い出にしちゃ駄目だけどね!?
「溺れたって…何をしてたの?」
流石に遊んでて…, とかは無いよね?
あと台風の日に川の様子を見に行くって言って家から飛び出したとか…
「魚を取ってたんです!」
…手掴みで!?
意外と野生児だったのね!?
「うん。 外で自然に触れるのは良い事だよね、気持ちいいし」
いやいやジャックよ、言ってる事は分かるけど溺れかけたんですよ!?
「懐かしいなぁ…」
まあトラウマになっていないだけ良い方…なのかな?
そのせいで水が苦手とかじゃなければ良いんだろうけど…
「ハータムは溺れかけてから水が苦手とか、似たような症状にはならなかった?」
念の為聞いておいたほうか後便利かもしれないし…
「はい。 全然大丈夫ですよ、ドワーフですから」
何か最後に聞き慣れない言葉が聞こえた気がする… え、ドワーフ?
「ド、ドワーフ…?」
ここに来てハータムが人間じゃなかった説… いや、事実が浮上した!
「はい。 あれ、言ってませんでしたっけ?」
うん。 衝撃過ぎてポトフの味がしなくなったよ!?
「き、聞いてないよ! ジャックは!?」
ジャックは黙々とポトフを飲み終えて、デザートのマドレーヌを口にし始めている
あの様子なら知っていそうだ
「え。ごめんよお嬢ちゃん、ポトフに夢中になっていたよ… もう一度言ってもらえるかい?」
ただ聞いてなかっただけかい!
「ハータムがドワーフだったって… 知ってた?」
私は真剣に聞いたのにジャックはそう聞いて笑い始めた
「お嬢ちゃん、今更そんなおはなしかい? 知っていると思っていたよ」
…馬鹿にされてる!?
私、今馬鹿にされたよね!?
「じゃ、じゃあ僕のお話をしましょうか…?」
ハータムは白いトレーを持ったまま私の隣の椅子にチョコンと座った
「何をお聞きしたいですか?」
何を…か
紅さんとの話や、どこから来たのか… が無難かな
「じゃあ、ハータムはどこで生まれて、どこで育ったの?」
そう尋ねたがハータムは自分が座った椅子をテーブルに近付けられないからか、座ったまま椅子を両手で掴み、跳ねている
…恐らく椅子ごと跳ねてテーブルに近づきたのんだろう
「…手伝うよ」
私は彼の可愛らしい姿にこぼれそうな笑みを表に出さないようにして椅子を前に押してやった
「あ、ありがとうございます…」
ハータムが照れている!
可愛い、写真を撮って保存したい!
「えっと… 僕の出身や育った環境についてでしたっけ?」
おお、跳ねながら聞いていたのか…!
ジャックはポトフを飲みながら聞いていなかったのに…!
「じゃあお兄さんは食器を洗ってこよう。 ごゆっくり」
ジャックは空気を読んでか空いたプレートを全て持ち、キッチンに向かった
面倒見の鬼か!
いや、待て。あの人全部のお皿を持って行ったけど…
…マドレーヌ返せ!




