九尾のオトナなお姉さん②
「オラァ!」
慎平がどこかから持ってきた金棒を振り回しながら九尾に向かって行く!
…これがホントの鬼に金棒
「だから前も言ったでしょう?」
九尾は青い火を慎平に飛ばし、上着をを燃やした
…顔じゃ無いだけまだ優しいか?
「物理攻撃を仕掛ける前に私が遠距離攻撃で炎を飛ばすのだから、貴方の攻撃は当たらないのです」
…ごもっともだ!
あの鬼、馬鹿なのかな?
「あぁん!? やってみねぇと分かんねぇだろ!」
もう充分結果なら出てますけど…
慎平の上着は既に灰になっていて、その下に着ていたタンクトップもボロボロで、ズボンも焦げている
「もうやめようよ慎平!」
これ以上彼が戦えば彼の服は全て灰になり、消滅する!
「何だとガキ! 俺様を舐めてるのか!?」
…舐めてるとかじゃ無くて!
いや、もう察しろよ!
「貴方じゃ九尾には攻撃を与えられないの! そろそろ気づけバカ!」
すると慎平の動きが止まり、彼は金棒を落とした
…言いすぎたかな
「お嬢さん、中々頭が良いねぇ… 見直したよ」
頭を良いと言うか、見たら分かるでしょ普通…
まあ慎平に熱の耐性があれば勝っていたかもしれないけど…
「こっちにいらっしゃい?」
九尾が妖艶な雰囲気を醸し出しながら私を手招きしている
「お嬢様、行ってはいけません。 行ったら食べられますよ」
マンドラゴラが私を止める。 けれど行かなければ全滅させられる気もする…
「大丈夫、食べられそうになったら2人で助けてくれる?」
そう聞くとマンドラゴラはコクリと頷き、私に九尾への道を開けた
表情には出ていないけれど心配そうな目をしている…
「来ました。 何かご用でしょうか?」
九尾の目の前まで来ると彼女はニヤリと笑い、出続けていたパイプの煙を止めた
「お嬢さん、お名前は何と仰るの?」
…え?
そんな事? 心配して損した気がする
「カナデと申します。 失礼ながら、貴方様は?」
礼儀正しく。 そうしないとマンドラゴラの言う通り、本当に食べられてしまいそうだ
「紅緑、コウとでもお呼びなさいな」
紅緑… 彼女から出る雰囲気にピッタリな名前だ
「紅さん。もう一度お聞きしますが、私に何かご用でしょうか?」
「カナデちゃん、あの鬼と本当に結婚なさるの?」
…はい?
この人何を聞いてるの?
「ああ、ホントだ… だから近づくな九尾!」
慎平生きてたんだ…
固まったまま死んだかと思ってたよ
「いや、あれは嘘です! アイツが勝手に言ってるだけですから!」
そう、奴が絶対に来る事がない未来をほざいているだけだ。 悲しいけれど、私に婚約者なんていない!
「そうかい… なら話は速いねぇ…」
紅さんは1歩前に出て、私の頬に手を伸ばした
「カナデちゃん、九尾の里で暮らしましょう? お姉さんと一緒に、毎日楽しく…ね?」
またこういう系ですか!?
[一緒に暮らそう]とか[一緒に一夜を共にしよう]とか多過ぎない!?
「森の外に私の住む屋敷があり、そこで家族が待っているので… 申し訳ございません」
それに九尾の里ってキツネしかいないんじゃないの…?
あと皆パイプやらを吸っていて煙たそう…
「そう。 残念ねぇ、可愛いから連れて行きたかったのだけれど…」
紅さんは残念そうな顔をして、私の頬から手を離した
諦めてくれただろうか…
「じゃあ今度、九尾の里にいらして下さらない? ゆっくりとお話したいの」
まあ話すくらいなら…
私は迷うこと無く首を縦に振った
「うふふ。 嬉しいわ、じゃあ私は里に帰ろうかしらねぇ…」
え!?
帰るの!? じゃあ今までここに何しに…
「九尾、テメェこんな事しておいて何が目的だったんだ?」
慎平は金棒を拾い、紅さんの方に向けた
その質問ナイスだ!
「貴方を再び迎え撃って、この領地を得ようとしたのだけれど… カナデちゃんに会えたから帰ってあげるわ」
領地を奪うっていうのに随分と軽いなぁ…
「カナデちゃんのお屋敷はどちら?」
私がここまで来た方法を説明すると、途中まで方向が一緒らしいので一緒に帰ることにした
「じゃあね慎平!」
私達は慎平に別れを告げ、さそくさと鬼の集落を出た
彼の私達を送り出す言葉は
「おい、俺様の扱い酷くねぇか!?」
だった
「植物のお嬢さんはカナデちゃんのお友達?」
紅さんはマンドラゴラの事が気になるようで、前を黙々と歩いている彼女を私と話しながらチラチラと見ていた
「私が育てているマンドラゴラです。 緑色の水を与えるとこうして人間の体になって鉢植えから出てくるんです」
…よく考えれば変な話だ
育てている花に水をあげると人間の姿になるなんて
「面白いお話ねぇ、マンドラゴラのお嬢さん?」
そういえばあの緑色の成分は何なのだろう…
微生物?
「はい。 私もお嬢様のお屋敷に買われ、水を与えられ始めてから人間の姿になれるようになりました…」
マンドラゴラにも原理は分からないのか…
「そろそろ暗くなってきそうね、急ぎましょうか」
今日は木の上ではないので空の様子はよく分からないけれど、烏天狗の涼佳さんと一緒に森を歩いた時よりも空は赤くなっている
「そうですね、屋敷の皆も心配しますよね」
私がそう言うと紅さんはフフっと小さく、口元に手を近づけて笑った
「タメ口で結構よ、カナデちゃん」
何故だろう、紅さんはタメ口で良いと言うだけでも大人の雰囲気が溢れる…
将来は紅さんみたいな大人の女性になりたいな…




