九尾のオトナなお姉さん①
「行ってきます。 今日中には帰ってくるね!」
私は慎平とマンドラゴラと一緒に鬼の集落に向かい、九尾の女の人を倒すために森へと出かけた
「お嬢様、何かあれば申し上げてください」
マンドラゴラは今日も無表情で、沐浴しに森に来た時と同様に淡々と歩いている
「おいガキ、遅いと置いていくからな!」
貴方のせいで森の中を歩かされているんですけどね…!
「何なら俺様が運んでやろうか? 旦那様としてなぁ?」
何を言っているんだこの男…
まだ嫁になるなんて言ってませんけど!
「お嬢様は私がお運び致しますので、ご心配いりませんから」
2人の間に火花がバチバチとしている!…気がする!
よく言ったマンドラゴラ!
「あぁん? 何だと無表情女! 俺様がやるって言ってやってるんだよ、テメェは黙ってろよ!」
やめて、私の為に争わないで!
の、状況にいるな…
「はいはい。 行きますよー」
私はバチバチしている2人を置いて先に進んだ
「慎平、鬼の集落ってこの辺り?」
エルフの森の近くと言っていたから、同じくらい歩いたつもりだけれど…
「流石は俺様の嫁。 そうだ、あそこの草で出来たデカい暖簾みたいな奴があるだろ? その中さ」
おお、分かりやすい説明だ…!
「将来ここで暮らすんだから覚えておかねぇとな?」
だから嫁になるなんて言ってません!
そろそろしつこい!
「行きましょうか、お嬢様」
マンドラゴラに左手を引かれ、私は鬼の集落に入ってきた
ナイスだマンドラゴラ!
「こりゃ随分と雰囲気が変えられたもんだな…」
鬼の集落の中は煙たくて咳き込みそうなほどだった。しかもこの煙は…
「この臭いは煙草やパイプから排出される物でしょう。お嬢様は未成年者なのでお気をつけ下さい」
マンドラゴラ解析と助言ありがとう。 じゃあマスクみたいな物ないかな!?
「ほらよガキ、テメェの為に持ってきてやったぜ? ありがたく思えよ」
慎平は屋敷にあったハンカチを私に投げた
…煙たくなってるって分かってたのなら最初に言ってよ!
「ありがとう慎平、この臭い無理っぽい…」
大人の臭いというか、表現が難しいけれど、とりあえず私にはキツイ…!
「じゃあ俺様がおぶってやろう」
「でしたら私がおぶって行きましょう」
マンドラゴラと慎平が同時に同じ提案をしてきた!
恋愛ゲームだったら選択肢が出ているだろう!
「自分で歩くから大丈夫です。 慎平、案内してくれる?」
出来ればマンドラゴラにお願いしたかったけれど、そうすると慎平に申し訳ないし…
残念だ!
「案内するも何も、お前らここ知らねぇだろ?」
私とマンドラゴラは同時に首を縦に振った
知らないと言うより、存在を昨日知りました!
「じゃあちょっくら市場の方から行かせてくれねぇか? どうなってるか心配でよ」
おお、意外としっかりしてる…!
仲間を優先するとは中々良い奴なのでは!?
「うん、じゃあ市場から行こうか!」
「煙が濃くなりましたね。お嬢様、大丈夫でございますか?」
確かに煙が濃くなった気がする。 入ってすぐの場所よりも煙で視界が悪くなった…
「うん。 先が見えずらいから気をつけようね」
私達は市場の散策を始めるも、視界が悪くて中々進められない…
「人っ子一人いねぇ、避難してりゃ良いけどな…」
しばらく散策したけれど、鬼は1人も見つけられなかった…
「避難していて欲しいですが、避難所でもあるんですか?」
マンドラゴラは店の1つから出てきた
…確かに、鬼は人間と違って強いから避難なんて考えなさそうだ
「ねぇよ。隠れたりする必要無いって、今まで思い込んでたんだよ」
やっぱり… 避難する側より避難する状況にさせる側だもんね
「でしょうなぁ…」
入ってきた方と反対側から鈴がなる音と一緒に誰かが下駄で歩いてくる音がする!
「ヘッ、ボスのお出ましかよ!」
ボス…? 今歩いてきている人が慎平が言っていた九尾の女?
「まぁ、人間と… 植物のお友達もお連れになったの?」
煙の中から紅い着物に身を包んだ、色白で大人の雰囲気を醸し出した女性… 芸者さんの様な美しさの女の人が姿を現した
「素敵…」
思わず声が出てしまった。 茶っぽい尻尾が9本見えるものの、とても素敵な顔立ち・服装の女性だ。
同性といえど見とれてしまう…
「嬉しい事を言って下さるねぇ、お嬢さん。お名前は?」
ふわりと笑いかけられ、動けなくなってしまう…
「カ、カナデです!」
彼女の右手にはパイプが握られている。 恐らく集落に充満している煙はそこから…?
「良い名前ねぇ、その鬼さんとこんな所まで何をしに?」
魅惑的な声にうっとりしてしまう…
「貴方からここを奪還しに参りました。 あと、お嬢様を誘惑するのをやめて頂けませんか?」
マンドラゴラが私の前に立ち、私に九尾を直視させないようにした
…誘惑?
「おや、植物のお嬢さんには効かないみたいねぇ… お嬢様と呼ぶという事は、後ろのお嬢さんは良いお家柄の子なのねぇ」
マンドラゴラが私の前に立ったことによって先程までの吸い込まれそうな感覚が消えた
…さっきの一言で私の家柄まで分かったの!?
「はい。ですので、貴方にお嬢様を連れ去られる訳にはいきません」
普段は無表情で、感情を表に出さないマンドラゴラが九尾に睨みを効かせている
「そう。ならまた鬼を倒したら連れ去ってしまいましょうか…」
九尾は空いている左手を口元に持っていき、小さく息を吹くと青い火の玉が出た!
「望むところだこの野郎、俺様の嫁を連れ去りなんてさせねぇよ!」
…嫁になるなんて言って無いです!




