オラオラ系の鬼③
「何ピリピリしてやがんだガキ、せっかくの良い顔が台無しだぜ?」
くそっ、カノンめ…!
「じゃあ俺様は寝るからな。 起こすんじゃねぇぞ? 起こしたら食っちまうからな!」
鬼はバタンと勢いよく部屋の扉を閉めた
…なんで私の隣の部屋を貸すかな!?
「騒がしい客人だな… あれじゃ扉壊れそうだ」
人間の姿のベルンが煮干しの袋を持って私の隣に来た。 またジャックに貰ったんだろう
「カナデ、食う? もう1袋あるけど」
ベルンはお腹の辺りに入れておいた煮干しの袋を取り出し、答えていないのに私に手渡した
…生暖かいんですけど
「悪い。 温まってた?」
ええ。 人肌くらいには…
でもせっかくくれたんだから厚意は受け取っておこう
「大丈夫。ありがとう、後で食べるね?」
そう答えるとベルンの体から狼の尻尾が出て、ブンブンと振りながら庭へ戻って行った
尻尾の毛落としてるぞー
さて、書斎にでも行って本でも読もうかな…
と思い、鬼が泊まる部屋の前を通ろうとすると…
「キャッ!」
扉が突然空き、隙間から手が出てきて私の腕を掴んで引っ張られた!
「おいガキ、その煮干しを寄こせ」
気付いたら何故か鬼に壁… 扉ドンされていた
こんな事しなくとも欲しいと言われたらあげるのに…
「は、はい… これ…」
何故か心臓が早くなっている気がする
オラオラ系の礼儀の[れ]の字もない鬼に扉ドンされて緊張するなんて…!
「なんだガキ、俺様に緊張してやがるのか?」
ホントに最低だなこの鬼…
緊張じゃなくて恐怖だから!
「そんなんじゃない! 早く解放してよ!」
今できる最大限の睨みを効かせる。 すると鬼はそれを見て震え始めた!
「ハッハッハ!俺様を威圧してるつもりか?」
してるつもりですけど!
「ハァ、おっかしい。 一丁前にこの慎平様を怖がらせようとしてるのかよ!」
…慎平?
この鬼は慎平という名を持っているのかな?
「えっと、慎平さん…?」
恐る恐る聞いてみる
すると鬼はニカッと笑った
「おう。 何だよガキ、俺様と結婚でもしてくれんのか?」
…なっ!?
突然何を言い出すんだこの鬼!
「鬼と人間の混血とかカッコイイな… よし、俺様と結婚しやがれ。 テメェは特別だ」
私は逃げ出そうと暴れるが慎平は何ともないようで、私の顎を右手で掴んだ
「暴れんなよ、嫁さん?」
慎平の顔が私の顔に近づいてくる
まずい、これは食べられる気がする…!
するとドンッと扉が部屋側に開かれ、その拍子に慎平が後ろに勢いよく倒れた!
…チャンス!
「おや、お嬢様もおりましたか。 丁度良かったです、本日の昼食は…」
ダンテが扉を開け、慎平が後ろに倒れた事で私は自室に戻り、鍵をかける事に成功した!
あの鬼… 許さん!
今日はご飯とお風呂の時間以外ここから出ないぞ!
「痛えな…!」
慎平は部屋の床に頭をぶつけたのか、後頭部をを撫でながら立ち上がった
「だ、大丈夫でございますか!?」
ダンテは客人に怪我をさせてしまったのではとオロオロしていた
「ああ、大丈夫だ。 鬼は丈夫だからな…」
あのガキ… 鬼に反発する人間… 女なんて初めて見たぞ!?
「面白ぇガキだな、お前らの所のお嬢様は」
あの反発的な目をいつか恍惚な眼差しに変えて、俺様の物にしてやるよ!
「お客様、そのガキというのは… もしやお嬢様の事でございますか?」
ダンテは暗殺者のオーラを醸し出している
眉間にシワが寄り、目はいつもより鋭く、大きく開かれている
「お嬢様の事をガキとお呼びになるのは我慢なりませんね。 続けるようなら屋敷から去って頂きますが?」
慎平は怒っているダンテを見てニヤリとした
鬼に怒りを露わにする人間も初めて見たからだ
「分かったよ、呼び方は変えてやるよ。 泊めさせてもらう屋敷の使用人を怒らせると面倒だからな」
あのガキ… 随分と面白ぇ所に住んでるじゃねえか!
「そうして頂ければ幸いです。 ところで、昼食に召し上がりたい物はございますか?」
昼食…? 肉…いや、それよりも…
「人間が、あのお嬢様が食う物と同じ物を食う。 そう料理を作る奴に伝えて欲しい」
ダンテは暗殺者のオーラを消し、慎平のオーダーをメモに書いて部屋を出ると、隣のカナデの部屋をノックして同じ事を聞き始めた
「おい鬼」
慎平が部屋から出てダンテの行動を見ていると、人間の姿のベルンに後ろから声をかけられた
「お前、カナデに何かしたら許さないからな。 また扉に押し付けたり、チューしようとしたら俺がお前を噛み砕く」
ベルンはそう伝えると庭師の仕事から帰ってきたジャックの元に駆け寄った
「あの獣臭い男… どこかから見てやがったのか?」
慎平はボソリと呟き、大人しく部屋の中に戻った




