オラオラ系の鬼②
「なんだ、鬼を見るのは初めてか」
菜園に野菜を収穫しに来ただけなのに鬼と遭遇するなんて考えてもみなかった…!
どうしよう、何か撃退する方法無いかな…!
「ポ、ポマード!」
私は目をつぶり、少し後ろに下がって聞いた事のあるような無いような呪文を唱える
ポマードって何だっけ?
「んなモン効かねぇよ、鬼舐めんなよ?」
いきなり右手首を掴まれ、鬼に引き寄せられる…!
目をつぶっているから詳しくは分からないけど、多分そう!
「た、食べないで下さい!」
死因が[鬼に食べられて死亡]とかシャレにならない!
「安心しろ、お前みてぇなガキは食わねぇよ」
ガ…!
助けてもらっておいてガキですって!?
「あの! そのガキって辞めてもらえませんか!? 一応貴方のこと助けましたけど!」
掴まれていた右手首を振りほどき、1本前に左足を踏み出して、思い切って言ってやった
「あぁん? 人間風情がいつの間に偉くなったんだ? あ!?」
ひぃっ…!
さすが鬼、気迫がすごい…!
「に、煮干しあげたじゃないですか…?」
恩を仇で返された気分だよ!
それに逆ギレ多くない? オラオラ系?
「ああ、アレは美味かった。 もっとねぇのか?」
…まずい、今度はこっちがキレそうだ
「じゃあ、どうしてここに来たのか答えてくれたらもう1袋あげますよ! さぁ、答えて下さい!」
少しキレ気味で言ってしまったけれど、この人が礼儀がなって無いからだ
「なんだぁ? ガキのクセに調子乗ってんじゃねぇぞ!?」
鬼の手が私へと向けられ、近づいてくる
まずい、ホントに食べられる…っ!
「お嬢様!」
カノン…?
私の名前を呼ばれると目の前を目にも止まらぬ速さでクナイが通る
「ハァ… 今度は人間のババアかよ、めんどくせぇなぁ…」
カノンはババアって年齢じゃないと思うんだけどな…
「鬼めこんな所で何をしている!? ここは鬼が来るような場所では無いぞ!」
カノンがピリピリとした空気を醸し出している!
珍しい! いや、副業か!
「うるせぇ! 文句があるなら九尾の女に言えってんだよ!」
九尾の女…?
私はとりあえずカノンの後ろに隠れた
「何を馬鹿なことを。 鬼の集落と九尾の住処は離れているはずだ」
鬼にも集落なんてあるんだ…
烏天狗にも里があるんだからあるか…
「何も分かってねぇんだな人間は! いいか!? よく聞けよ!?」
おお、何なんだこの状況。鬼とクノイチと人間が菜園の中で話し合ってるよ…
「んで、エルフがいなくなったのが原因で九尾の女が領地を拡大しようとやって来たけど、間違って俺達の集落に来て制圧を始めたんだよ」
…よく分からなかったけど、とりあえずエルフを売っていた港町のおじさんが元凶な事は分かった
「エルフと鬼は協定を結んでいたから間違って来てしまったんでしょうね。 エルフの森と鬼の集落は隣接していますし」
カノンの言ってる事も分からないけれど、とりあえず九尾が方向音痴で、強い事は分かった
「それで、体力を回復させるために食料を探して回っていたらここにたどり着いたと。そういう事ですね?」
今のはすごく分かりやすかった
やっと分かりやすく説明してくれたよ…
「その通りだ。 ここは温度も最適だったからな、立ち寄ったらつい寝ちまってよぉ?」
コイツもコイツで色々とヤバい奴だな!
開き直りやがった!
「それで、どうするんです? 私達は貴方をいつまでもここに匿っている訳にはいきませんよ?」
そうだそうだ!
むしろ今すぐ外にポイしよう!
「九尾の女と戦う。そして里を取り返す」
ほう。頑張ってとしか言えないな、異種族も領地やら何やらで大変なんだなぁ…
「頑張って下さい。 さぁ、お引き取り下さい」
正直オラオラ系、ましてや鬼なんて苦手だ
出来れば今すぐ帰って欲しいくらいだ!
「そうはいかねぇ、1晩泊まらせてもらうぜ?」
…はい?
「もう1晩、テメェらの屋敷で休ませてもらうぜ。 安心しろ、休ませてくれたら礼はまとめて返してやるよ」
鬼って皆こんな感じなの!?
さすがに不法侵入して煮干しを1袋平らげた人を泊める訳には…
「大丈夫だと思いますよ。 私が部屋の準備を致しましょう」
いいのかい! 少しは悩もうよ!
「ふん。 聞き分けのいい人間は好きだぜ? 今日1日よろしくな、ガキ?」
鬼は右手を顎に当てニヤニヤと悪い顔をしている
コイツと一緒とか嫌なんですけど…!
「ではお嬢様、お屋敷に戻りましょうか。 プチトマトは収穫しておきました」
今日は私がここで一夜を明かしたい…!
「はぁ、鬼を泊めるのですか?」
屋敷に戻って事情を説明すると、さすがのダンテでさえ困惑してしまった
そのまま無理だと伝えて追い出してしまえ!
「私は構いませんよ、しかし鬼の口に合うものを料理長が作れると良いのですが…」
普通構うでしょ!?
鬼だよ!? なんでそう易々と泊めちゃうかな!?
「うーん、俺が感じたのはコイツの臭いだな」
そうだ人間の姿のベルン! その臭いの話をして追い出して!
「これが鬼の匂いか、思ったより悪くないな」
ベルン新たな発見をした事に満足してどこかに行ってしまった…!
「ふぅん、鬼ねぇ… ホントにいたんだ」
ジャック… 頼む…
「鬼を屋敷に泊めるなんて面白いねぇ、お嬢ちゃん?」
おう… もうどうにでもなれ…
「そうだね…」
そう答えると鬼は私を見てニヤリとしやがった
あの野郎…!




