デリカシーのないメイド②
「どうぞ」
私は不機嫌そうに返事をして、カノンを部屋の中に入れた
「お嬢様、お食べになられなかったヨーグルトをお持ち致しました」
このメイド有能だ…!
私がヨーグルトを食べておけば良かったと後悔していたのを察したのか!?
「あ、ありがとう…」
さっきまで怒っていたから食べづらい…
でもヨーグルトにかけられている苺のソースが美味しそうな香りと色を…!
「不要でしたか…?」
いやいや、全然不要じゃないけど!
すっごく食べたいけどさ! ね? 怒っちゃったし!
「たっ、食べます!」
手のひらを返したように思われてしまうけれど、これはヨーグルトが美味しそうなせいだ!
「美味しい…!」
ここまで美味しいヨーグルトは食べたことが無い
程々な酸味と、ソースの甘さが丁度良い
市販の物とは比べ物にならない程だ… ショタ君が作ったんだろうか?
「そう言って頂き、とても嬉しい限りです」
カノンはお辞儀をした
…え?
「カノンが作ったの…?」
料理長はショタ君だったはず…
どうして彼女が?
「はい。 いつも朝食でお出しするヨーグルトは私の生まれ育った土地での名産品でしたから、いつも手作りしておりますが…」
カノンは酪農などを行う土地の出身なのかな…?
「記憶喪失になられたのでしたね。 申し訳ございませんでした」
…この際色々と聞いてみようかな?
カノンの事は性別くらいしか知らないわ…
「カノンはどこ出身だったかしら?」
私はヨーグルトを食べ終え、カノンが器を乗せてきたトレーに戻そうとすると…
「曲者!」
ヒュンっと私の顔の真横に何かが物凄いスピードで、風の音をさせながら通った
…何今の、見えなかったんだけど!
「失礼致しました。 虫がいたもので」
えっ…?
貴方何をしたの…?
「ふむ、偵察機などでは無いようですね。 安心しました」
ちょっ、ちょっと待ってよ…! 誰か詳しく状況を説明して!
カノンが壁からクナイを抜いてる…!
「待って! な、何をしたの…?」
状況が理解出来ず、声が震える
カノンは壁から抜いたクナイをメイド服のスカートの下にしまった
「お嬢様の部屋を飛んでいた虫が偵察機でないかを調べ…」
「そういう事じゃなくて! 」
朝食中といい、また声を荒らげてしまった
お嬢様っぽくしなくちゃ…
「その、さっき飛ばしたクナイ(?)は何?」
もしかしたらこの女、ヤバい人かもしれない…!
「お嬢様を護衛する為に持ち歩いているクナイでございます。 私の地元ではこれを持ち歩くことは普通の事でございますが…」
この人どんな場所に住んでいたのよ!
クナイ常備が普通ってどれだけ物騒な場所よ…
「少し細かく説明すると、私の本業はメイドでございます。 そこはご存知でございますよね?」
まあ、それは見てればわかるけど…
カノンにも副業が…?
「うん。 副業は何をしているの?」
ダンテは暗殺者だったはず。 カノンは何だ…?
「クノイチでございます。 忍びの里出身なもので、副業と言いますか… 風習のようなものですね」
…は?
え、待って… クノイチ? ということは忍者?
「ど、どんな事をするの…?」
え、 忍びの里ってヨーグルトが名産品なの?
魚とか野菜じゃないのかよ!
「敵の偵察だったり、情報を盗み出したり…ですかね」
えぇ… 元ヤクザの総長だったり、殺し屋だったり、この屋敷の使用人どうなってるのよ!
「他にご質問はございますか?」
聞きたいことがありすぎてどれから聞いたらいいのやら…
「どうしてメイドに?」
クノイチを本業にしたら良かったのでは?
いや、クノイチって儲かるのかな…?
「お嬢様のお父様に引き抜かれたのでございます。 私の下で働かないか、と」
えっ、お父さん?
まず引き抜いたって、知り合いかよ!
そもそもお父さんに会ったこと無いけど、どこで何してる人なのよ!
「それで来たのは分かったけど、メイドを本業にして大丈夫なの?」
裏切り者とか言われないのかな…?
忍びの里って事は、生まれながらにして忍者になれって言われてるような物よね…
「はい。 むしろ私の父親には[自慢の娘]と言われたり、村の人々から祝福されました」
忍者意外と軽いな…!
屋敷の使用人になって褒められるって… 普通の家家でも褒められるか、多分
「じゃあ、どうして私にデリカシーの無い発言をするの?」
この質問はカノン自身に自覚が無ければ答えられないはずだけれど…
「お嬢様が可愛いので、困っているお顔を見たいのです」
最低だなこのメイド!
主人の困ってる顔が見たいとかゲスい! 有り得ない! 意味わからない!
「そ、そう…」
すごく話しずらい空気になってしまった…!
どうしよう。もう質問したい事も思い浮かばないし、帰ってもらおうかな…
「質問は以上でございますか?」
カノンは持ってきたトレーを取り、帰る準備をしていた。 恐らく仕事があるのだろう…メイドの
「う、うん。 質問に答えてくれてありがとう…」
正直最後の質問には度肝を抜かれたけれど、まぁ… そういう人なんだろう!
「ではお嬢様」
カノンは私に何かお願い事があるのだろうか、そっと近づいてきた
「まずはお洋服をお脱ぎ下さい」
…おいおいおいっ!
「な、何を言い出すのよ!」
自分の顔が赤くなっていくのが分かり、隠すために右手で口元を隠した
服はちゃんと朝食前に着替えたし、ヨーグルトを洋服に落としてないし…
「ふふっ、そういう事でございます」
カノンはニヤリとしながらそう呟くと、何事も無かったように部屋から出ていってしまった
…やっぱり最低だこのメイド!!




