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烏天狗の不思議なお兄さん③

「カナデさん、だいぶ落ち着いたかい?」


 私は涼佳さんに抱えられたまま屋敷へと帰っていた。 涙は治まりつつあった


「はい。 みっともないところを見せてすみませんでした」


 お嬢様が人に抱えられながら涙をボロボロと流してはいけないはず

 …今度から気をつけなくては


「みっともないなんて、そんなことないよ! リーフちゃんと別れて涙が出るなんて、カナデさんが優しい証拠さ」


 涼佳さんはいつも笑顔でいたり、兄貴肌だったりとジャックと似ているところがあるかもしれない。 違いがあるとしたら服装の種類や色、種族くらいだろう


「優しいですかね? 半ば無理やり森に返そうとしていたのにですか?」


 そう聞くと涼佳さんは立ち止まり、前に向けていた目線を私の目に合わせた


「うん。 君はずっと人間の家に留めておくよりも仲間の所に返してあげた方がいいと考えただろう?」


 涼佳さんの黒く澄んだ目に吸い込まれそうになりながらも、私は頷いた


「そんな素晴らしい考えを出来ない人の方が世界には多いんだよ。 ワシはそんな人を何人も見てきたから分かるのさ」


 烏天狗としての仕事の一貫なのだろうか?

 涼佳さんに言われると、謎の説得力があった


「だから君は優しいよ。本当に悪役か疑ってしまうほどにね」


 …え?


「…じゃあ、帰りは空から行こうか!」


 そう言うと涼佳さんは帯に付けていたお面を超能力(?)で浮かせ、顔にはめた

 すると完全な烏天狗に変身し、空高く舞い上がった


「きゃあっ!」


 空に浮上するスピードが早く、怖くて目を開けられない!

 おまけに掴まる所が無いので涼佳さんの身体に寄らないと振り落とされてしまいそうだ!




「カナデさん、目を開けてごらん」


 風が収まった。 恐らく完全に空に浮かび上がり切ったのだろう

 私はゆっくりと目を開けた


「綺麗…」


 涼佳さんは森の近くにあった木のてっぺんに立っていた

 目下の景色は木しか無いけれど、そのお陰か目の前の夕日が目立ってとても綺麗だ


「飛ぶのも悪くはないでしょ?」


 いつの間に夕日が出る時間になっていたんだろう、森の中にいたから気が付かなかった…


「このくらいの時間になると夕日が綺麗なんだよ、カナデさんにも見せたくてね」


「あの、ありがとうございます…」


 完全な烏天狗になった涼佳さんにはお面をつける前の面影橋ない。 あるとしたら着物くらいだ


「怖くないかい? この顔… 人間じゃ無いだろう? 魔物の顔だよ、怖いだろう?」


 大きなくちばし、人間よりも大きな鳥の様な目、顔はカラスの羽に覆われている

 それに着ていた着物が装飾が増え少し前が空き、人間の上半身は見えているものの、やはり人間には見えない


 でも不思議と怖くはない


「まったく怖くないです。 顔はカラスの様でも、中身は涼佳さんですから」


 私は恐れられる事に怯えている涼佳にほほ笑みかける


「良かった。 やっぱり君は優しいね」


 涼佳さんは自分の長いくちばしで私のおでこにそっとキスをした


 …過去に涼佳さんに何があったのかは分からない。 でも、今の私の言葉で彼を少しでも救えただろうか


「ねぇ、カナデさん」


 涼佳さんはお面を外し頭に乗せて、人間の顔に戻った。 羽根はまだ生えている


「このまま私の住む里に来てくれないだろうか… 貴方と、貴方の命が尽きるまで一緒にいさせて欲しい」


 プロポーズ…?


「えっと、涼佳さん…?」


 なんて返事すればいいんだろうこれ!

 プロポーズとか初めてされたんですけど…!


「ううん、何でもないよ。 飛ぶから掴まっていてね」


 涼佳さん… 掴まる場所が無いです!




「もう日が暮れてしまうね、完全に暗くなる前に帰って来れて良かった」


 屋敷がうっすらと見えてきた辺りで涼佳さんはゆっくり下降し始め、着地した


「ここからは真っ直ぐ歩いて行けば着く。 ここまで来れば大丈夫だろう?」


 涼佳さんは名残惜しそうな、悲しそうな表情をしている。 私も名残惜しい…


「1泊していきませんか? 部屋も空いてますし…」


 彼の寂しそうな表情に情が移ってしまったのだろうか、思わず引き止めてしまった


「ううん、君のご家族にご迷惑になってしまうだろう? それに夜は君に何をしてしまうか分からないよ?」


 …またそういう奴ですか

 でも涼佳さんはそんな事はしなそうだと思う。 でも帰ると言っているから…


「分かりました。 気をつけて帰って下さいね」


「うん、君もね。 か弱い女の子なんだから」


 涼佳さんはそう言うと羽根を大きく羽ばたかせ、空に浮く

 そして私に笑顔で手を振って帰ってしまった


 …また会えるだろうか




「「お帰りなさいませ、お嬢様」」


 屋敷まで歩くと執事のダンテとメイドのカノンが庭で私を迎えてくれた


「よく一日でお帰りになられましたね、てっきり2、3日はかかるかと思っておりました」


 やはりそのくらい遠いのだろう、ダンテもカノンも少し驚いているようだ


「烏天狗さんに助けてもらったの」


 私は庭から屋敷の中に入ろうと扉を開ける


「リーフ様はエルフの森に帰られたのですね…」


 カノンはリーフが居ない状況から森に返した事を察したんだろう


「うん、 リーフにはその方が良いかなと思って」


 私は扉から手を離し、カノンの方を向いた

 すると彼女は私に微笑みかけていた


「昨日に引き続き、本当に良い事をなさいましたね。 私はこれ程素晴らしいお嬢様の元に使えさせていただき、光栄でございます」


 カノンなりの励ましだろうか…


「悪役なのにね、私…」


 多分私は悪役令嬢らしくないと思う。涼佳さんに悪役か疑うと言われ、私も共感した


 本物の悪役令嬢ならきっと主人公を妨害したり、その周囲の人に嘘を吹き込んだりするだろう。 でも私はそんな事をする気は全くない


 私は自分の生き方・考え方で幸せになる!

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