小学生くらいのエルフの少女④
「ただいま!」
私はリーフを背負いながら屋敷の扉を開け、後ろから荷物を沢山抱えたジャックも入ってくる
「おかえりなさいま… お嬢様、その子は誰です? まさか誘拐なさったのでございますか!?」
アホ変態執事め、私が人を誘拐してくると思う!?
…悪役令嬢だからしそうかもしれない
「町で売られていたから引き取ったの。 この子を誘拐したのは変なおじさん。 ねぇ、空いてる部屋ってある?」
私の部屋は広いけれど、ベッドは一人用なのでリーフを寝かせる事が出来ない
「でしたらお嬢様の隣のお部屋はいかがでしょうか、確かあそこは空き部屋だったはずです」
隣か。 隣なら何かあってもすぐに駆けつけられるし、良いかもなぁ…
「いいね、じゃあ掃除よろしくねダンテ」
私はダンテにリーフの部屋の掃除を任せ、自分の部屋に向かう
「カナデ、ここはカナデのお家?」
部屋に着いてしばらくするとリーフがわたしのベッドの上で目覚めた。 眠いのだろうか、まだ目が半開きだ
「うん、そうだよ。 ようこそリーフ!」
私は寝ぼけているリーフの頭を撫でる
彼女の髪は光を受けて光り、触れるとフワフワしていた
「今リーフの部屋を掃除してもらっているから、もう少し待っててね」
…ゲームのメンテナンスみたいだなぁ
「ありがとう!」
リーフが笑うと、彼女のお腹が大きく鳴った
…あれほど煮干しを食べたのに!?
「ああ、お腹空いた? 料理長に食べたい物を伝えてくるけど、何が食べたい?」
「煮干し!」
リーフは即答した
…エルフの印象を悪くした気がする、エルフファンの皆様申し訳ございません!
「町で食べさせてもらった煮干しがとても美味しかったから、また食べたい!」
夕食に煮干しは…
…よし、私と同じ物を食べてもらうか
「煮干しは食後に食べよう。 だから夕食は私と同じ物を食べようか!」
彼女を煮干し好きにした私にも責任がある…
いや。 煮干し好きのエルフって夢を壊しそうだし、何とかしなければ…!
「うん。 同じご飯を食べたい!」
良かった… 煮干しから離れた!
「カナデ、ジャックの兄ちゃんから服を渡して来いって言われたから入るぞ」
彼はノックはしなかったけれど、きちんと来た理由を話してから部屋に入ってきてくれた
…ダンテも見習って欲しいところだ
「おお、その子が引き取ってきた子か。 なかなか可愛いな」
お前にリーフはやらん!
この狼め、この子を襲ったら容赦しないぞ!
「初めまして、俺はベルン」
ベルンは意外にも進んで自己紹介をし、握手まで求めている
彼は意外にも社交性があるんだな…
「リーフです、よろしくお願いします」
リーフはベルンの正体に気づいているのだろうか、少し震えて握手をした
「料理長がそろそろ飯だってよ。 今日はハンバーグだ! 肉だぜ!」
狼だからどんな形であれ肉は嬉しいんだろう…
エルフもお肉は食べるのかな…?
「ベルンさん、尻尾出てるよ?」
本当だ、すごい勢いで尻尾が振られている…
尻尾が出ているのに驚かないのは、やっぱり気づいているんだろう
「うぉっ、マジか! ありがとなリーフ!」
彼らが早くも仲良くしていて安心した
ゆっくりと人と触れ合える事が出来るようになって欲しい…
「じゃあ、早くダイニングに行こうぜ! 多分そろそろ出来てるだろ!」
ベルンはリーフの手を引いてダイニングへと向かい、私も後ろからついて行く
…あの狼すごいな
「美味そう! いただきます!」
この狼は一体どこでマナーを習ったんだ!?
ナイフとフォークを使いこなしている!
「リーフ様、このように切り分けるのです」
リーフの隣に座っていたメイドのカノンがフォークとナイフの使い方や、切り方を教えている。 微笑ましい絵だ
「上手だねぇリーフちゃん。 エルフもフォークとナイフを使うのかい?」
リーフの目の前に座っているジャックが彼女を褒める
確かにエルフの生活は気になるなぁ…
「いいえ、基本自分達で作ったスプーンよ」
へぇ、自分達で作るんだ…
「森の奥深い所の、エルフの森って呼ばれる場所で自給自足みたいな感じで暮らしているの」
そういえば片目を隠していた、全員のエルフを引き取った男の人も森の奥で…って言っていた気がする
「あと、このお家の近くの森はエルフの森に通じているかもしれない…」
…だとしたら、私達はリーフの為にも彼女をエルフの森に返した方が良いだろう
「じゃあ明日行ってみようよ!」
1度行って、エルフの森が無ければ別の森に探しに行こう。 彼女にとってはここよりもエルフの森で、仲間のエルフ達と暮らした方が良いはずだ
「カナデ、一緒に行ってくれるの?」
リーフは嬉しそうだった
やっぱり同じ種族の仲間達と一緒にいたいのだろう
「うん。 明日行こう!」
「「「「「「「ご馳走様でした!」」」」」」」
ハンバーグだった事もあり、ベルンはおかわりもしていたので動けないようだ
「ベルン、犬小屋に戻りなよ」
彼は満足そうに椅子に座ったまま動こうとしない
…ハンバーグを2つも食べたらそうなるよね
「俺、カナデの部屋で寝たい…」
またかお前は!
嫌だよ、部屋に入ってくるや否やベッドに押し倒すじゃん!
「はいはい、入って来ないでね」
私はベルンを置いて部屋に戻った
明日の準備をしなければ、森に入るのだから念入りにしておかないと…
「カナデ、お風呂が出来たって言われたから、入りに行こう?」
リーフはきちんとノックをしてくれた
…入りに行こう? 一緒に入りたいのかな?
「うん、分かった。 少し待ってて!」
私は手に持っていた虫除けやタオルをリュックサックの中に入れ、リーフと一緒にお風呂へ向かう
「あ、悪ぃ。 誰もいなかったから入ってた…」
お風呂場で服を脱いでいたら、お風呂から出たばかりのベルンが出てきた…
「きゃぁぁぁ!!!」
私は何てものを見てしまったんだ!
恋愛ゲームで描かれている様な身体を見てしまった…!
ベルン貴様… シックスパック!
「わ、悪ぃ! すぐに服着る!」
ベルンは指を鳴らし、自身の狼の毛で作ったであろう服を一瞬で着た
「カナデ、大丈夫?」
なぜリーフは平気なんだ…!?
それに彼女に心配されるとは、なかなか恥ずかしい…!
大変な目にあった… いや、大変だった?
リーフは湯船に潜り始めるし、潜ったと思ったら数十分出てこなかった…
個人的にはベルンの腹筋… いや、やめよう
リーフは隣の部屋に行き、そこで寝るので私は部屋に1人になった
明日はエルフの森が見つかると良いなぁ…
そう思い、私は部屋の電気を消してベッドの中に潜り込んだ
コンコン!
何時くらいだろうか、突然私の部屋のドアがノックされた
…誰だろう
「カナデ、一緒に寝てもいい? 怖い夢を見ちゃったの…」
リーフか。 怖い夢… 捕まってしまった時の事が夢に出てきたんだろうか
「うん、おいで」
私は毛布を持ち上げ、リーフを隣に寝かせる
「眠れるまで見ていてあげるね」
そう言うと、リーフは安心したのかすぐに眠りについた
…きっとあの出来事がトラウマとなり、心に深く傷を作ってしまったのだろう
私は眠ったリーフの頭を撫で、自分も眠りに着いた




