小学生くらいのエルフの少女①
さて、ジャックに遊んでおいでと言われたものの、どこへ行こう?
この街は初めて来たから何があるか分からないし……
「お嬢ちゃん、ちょっと見ていかないかい?」
道を歩いていると突然知らないおじさんに腕を引かれ、薄暗い道を歩かされ始めた。
誰か助けて……!
「ほら、どうだい? 1つ買っていかないかい?」
怖くてつぶっていた目を開くと、目の前には沢山の…… 人……?
「エルフだよ、1つどうだい?」
これは…… 人身売買という奴では!?
檻の様なものに入れられた美しいエルフ達は皆、鉄の首輪を付けられている……
「ほら、コイツなんてどうだい?」
おじさんは目に光がない、希望を捨てた女性エルフを私の目の前に出した。
可哀想に、この人達は普通に生きていただけなのに……
「この人達、どうしたの……? どこで捕まえたの?」
私の声は恐怖と悲しみで震えていた。
でも本当に震えたいのは彼女達の方のはずだ……
「ああ、森で狩りをしたんだよ」
この人、何を平然と……!
狩りだって? エルフ達をなんだと思って!
「さぁ、どうする? 実験や欲望を満たしたり、何でも使えるよ?」
--このクソ野郎!
お前の方こそ狩られるべきだ!
「あの子にします」
私はエルフ達の中でも一際小さい、人間で6歳くらいの子を選んだ。
「あんなので良いのかい?」
--アンタよりはあの子を幸せに出来るさ。
出来れば全員引き取りたいところだけれど、お金が全然足りない。
「ほらよ、2万ゴールドだ」
この世界の値段の単位はゴールドなのか--
いや、今はそんな事を言っている時じゃない!
「はいこれ」
ジャックからもらったお札を全て払い、エルフの少女を引き取った。
エルフ1人で2万ゴールド、全員引き取るためにはいったいどれほどのお金が必要なんだろうか。
「これが首輪の鍵だよ」
私は私の目の前に出された鍵を奪い取り、即座に少女の首輪を外した。
「おいおい、逃げられちまうぞ?」
何の心配をしているんだコイツは、逃げられたら逃げられたで彼女は自由な生活を過ごせるんだ。 そんな事も分からないのか…?
「大丈夫です、ありがとうございました」
ジャックはこの子達を全員引き取る分のお金を持っているだろうか--
「おっさん、全員買うぜ」
……!?
いつの間にか目の前にいた片目を隠した長身のお兄さんが全員買うと言いだした!
「はいこれ、値段分持ってるか確認して」
お兄さんは右手で持っていたアタッシュケースをおじさんに放り投げた。
「ねぇお嬢さん、どうしてなけなしのお金を払ってその子を買ったの?」
このお兄さんは私が1番小さいエルフを買ったのか気になるんだろうか。
まあ女の人が女性のエルフを購入すること自体おかしな事だろう。
「私は買ったんじゃなくて、可哀想だったから引き取った。 本当は皆引き取ってあげたかったけど、お金が足りなかったから……」
私が引き取ったエルフの女の子は今の私の言葉によって、濁っていた目に少しだけ光がさした。
「お兄さんはどうして全員も?」
私にとってもお兄さんの行動は疑問だった。
大きなアタッシュケースを持って、あたかもこの子達を目的にこの街に来たみたいだ。
「お兄さんはここら辺で1番近い森の近くに住んでいるんだけど、森の奥に住んでいたエルフ達が突然いなくなってしまったと聞いてね。 売られていたら買い取って、森に返してあげようと思ってたんだ」
すごく心の優しい人だ。
こんな人が世界にまだいたんだなぁ……
「兄ちゃん、金は足りてるぞ。 持ってきな」
おじさんは檻を開け、エルフ達を解放した。
エルフ達はまだ人形のようだが、このお兄さんなら彼女達を幸せにしてくれるはずだ。
「おい、持ってきなって何だよ」
お兄さん……?
「エルフ達は生きてるんだよ、物みたいに扱うな。 お前もこういう風に扱われたらどうするんだ?」
お兄さんが怒るのも当たり前だ、私だってこのおじさんに腹が立って仕方がなかった。
「もう二度とこんな事するな、この子達の人生を滅茶苦茶にしやがって……」
そう言うとお兄さんはエルフ達を連れてどこかへ行ってしまった。
--彼女達を引き取ってくれたお礼を言うのを忘れてしまった
「じゃ、じゃあ行こうか?」
私がエルフに話しかけても、彼女は首を縦に振るだけだった。
…何とかしてあげなくちゃ、きっとまだ私の事を信頼していないんだろう。
「名前、ある? その…… 捕まる前の名前!」
彼女と仲良くなるには名前を知るところから始めないと!
--答えてくれるだろうか。
「リーフ、それが私の名前……」
リーフちゃんっていうのか! 可愛い名前だなぁ!
それに人間でいう所の6歳くらいの見た目なのにしっかりしていそうだ!
「よろしくねリーフちゃん、私はカナデ!」
彼女には優しく接してあげなきゃ。
きっとあのおじさんには酷い扱いを受けていただろうし--
「そうだ、煮干し食べる? 魚を乾燥させたやつなんだけど……」
私達は港町の中心部に植えてある大樹の周りに座り、ジャックの買った煮干しを開けた
許せジャック……!
「食べて良いの……?」
やっぱりまともな食事を取らせてもらえなかったのか……
もう一度言う、許せジャック!
「いいよ、好きなだけ食べて?」
私がリーフに煮干しの袋を手渡すとあっという間に平らげてしまった。
その食べるスピードはベルンよりも早かった!
「美味しかった…… ありがとう」
感情は表に出ていないけれど、喜んでくれたみたいで良かった。
「もうひと袋…… 食べたい……」




