静寂の糸 編み上げて【詩】【冬の詩企画】
この喉に絡まるのは何
白い糸 その冷たさ その清らかさ
馬鹿なことを言って穢してはいけない
この唾に交じるのは何
苦み いえ酸味 幾度もこみ上げてきた
夜半も過ぎたしじま 声を出してはいけない
この目を刺すのは何
雪明かり いえ 液晶のバックライト
青みを帯びた光が 消え入りそうに明滅している
一言も漏らさず その声にならない声を編み続ける
全て編み目に注がれるよう
この光る糸は何色か 本当に白なのか
白いまま 捧げられるだろうか
時折からだに当ててかたちを確かめる
手探りなのだ 何もかも
S/M/Lで決められるものではないのだ
本来 人生ってそういうものであって
型にぴたりとはまるものなんかじゃない
そう 見せたかった
編み目を落としたと気付いて そこまで立ち戻る
本来 人生ってそういうものであって
綺麗に積み上げられるものなんかじゃない
そう 伝えたかった
等間隔の文字があまりにも整然としすぎていて
それが彼の心のやわらかな部分を締め上げたのだろう
そっちへ行ってはだめ
言葉というのは 本来もっと違うベクトルに向かうはず
いや 向き合わなかったのは 私
見ないふりをしていたのは 私
この糸に絡めて引っぱりあげればよかった
せめて この死に装束のセーター
着せてあげたかった
本作は「冬の詩企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)
なお、本作は下記サイトに転載します。
http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)